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理想の卵巣刺激法を追い求めて

何故卵巣刺激を行うか?・・・卵巣刺激の目的

体外受精における卵巣刺激の目的は、排卵誘発剤を使用して複数の卵子を得ることです。1つの卵胞を発育させることを主たる目的とした一般不妊治療(タイミング法、人工授精)の排卵誘発剤の使い方とは、そもそもの目的が大きく異なります。卵巣刺激は大きく”調節卵巣刺激法=高刺激”と”低刺激法”の2つに分類され、その他に自然周期法などがあります。

以下のグラフは日本産科婦人科学会のART統計(2007年〜2011年)です。上段が治療周期あたり(採卵あたり)妊娠率、下段が胚移植あたり妊娠率を示しています。治療周期あたり(採卵あたり)妊娠率は調節卵巣刺激(アゴニスト法、アンタゴニスト法)>低刺激法(クロミフェン)>自然周期の結果となっており、特に年齢が高い群ではこの傾向が顕著であることがわかります。刺激を加える→複数の卵子が取れる→良好胚を確保できる可能性が高まるという具合に、1回の採卵で妊娠の可能性の高い受精卵が確保できる可能性が高いためと考えられます。

資料1

一方、胚移植あたり妊娠率を比較すると、自然周期の妊娠率が突出して高い傾向にあり、一方その他の卵巣刺激法(クロミフェン、アゴニスト、アンタゴニスト)は同じ年齢層で比較すると比較的同率であることがわかります。移植に適した良好胚が確保さえできれば、排卵誘発剤やその他の薬剤による影響をほとんど受けていない自然な状態が妊娠にとっては最も理想的であることが言え、またその他の刺激法に関しては良好胚が確保さえ出来れば刺激法による差は少ないということが言えます。

資料2

上記2つのグラフから読み取れることは、

1、刺激周期の方が複数の卵子を獲得できる分、移植に供する良好胚をより確保しやすく、治療周期あたり妊娠率は高くなる。つまり少ない採卵回数で妊娠にたどり着きやすい。

2、自然周期法の場合は治療周期あたりの効率は悪い(卵子が確保できない、1周期に1つの卵子しかとれないのでその胚が発育しなければ移植までたどり着けない)が、仮に良好胚が確保できれば、他の刺激法に比べて移植あたりの妊娠率は高い傾向になる。

3、クロミフェンなどの低刺激法は、調節卵巣刺激と自然周期法の中間的な位置づけ。

ということになろうかと思います。

薬を全く使わない、またはほとんど使わない自然周期法や低刺激法と、毎日のように注射をする調節卵巣刺激のどちらがいい受精卵が得られるのか?どちらが妊娠しやすいのか?については、今まで多く議論されていますが、その結論は実はまだ出ておりません。実際どちらにもそれぞれ、メリット、デメリットがあります。

患者さんの数だけ卵巣刺激法があってもよいだろう

これまで、当院では、自然周期法や低刺激法を是としてやってきました。自然周期法や低刺激法は身体的、経済的な負担が少なく、OHSSなどの副作用の心配もほとんどなく、採卵に麻酔も不要、などこれまでの主流とされた調節卵巣刺激法(高刺激法)と比べて画期的で素晴らしい方法だという信念に基づいてやっておりました。(私自身が自然周期、低刺激を中心にやっていた施設で研鑽を積んだというところも理由の一つです)。しかし、実際には自然周期や低刺激が向かない患者さんは確かにおられ徐々に限界も感じるようになりました。このような患者さんでは採卵回数も多くなります。自然周期や低刺激ではほぼ毎月採卵が可能なため、回数を多く行うことはできますが、1回の採卵あたりに獲得できる卵子数が少ないため、なかなか良好胚が確保できないという患者さんにも遭遇してきました。そのうち、卵巣刺激は患者さんごとの背景、年齢、ホルモン値、AMH値、エコー所見等よりうまく使い分けることが重要だろうという考えに至りました。今は、卵巣予備能がかなり正確に評価できる時代であり、卵巣予備能が悪い人にたくさん注射を打つことは全くナンセンスですが、卵巣予備能がよく刺激をすればそれなりに卵が取れる人に刺激をしないのは逆にもったいない話です。

私自身の結論として、患者さんの数だけ卵巣刺激法があってもよいだろう・・・と思うようになりました。

不妊治療のその後を考えて・・・治療にかける時間はなるべく短く

当院では(私は)不妊治療において最も重要なことはできるだけ早く妊娠することだと考えています。不妊治療の最終目標は単に妊娠すること・・・ではなく、その後に続く出産、育児のことも考え、生まれて来た子供とどのような歴史を刻んでいくか?考えるとことだろう・・・と(私は)考えています。もし仮に5年かければ親になれる人がいたとして、もしその人が2年で親になることが出来たなら、残りの3年は子供と過ごす時間に充てられます。治療にかける時間はなるべく短く、これから生まれてくる子供と残された時間を長く有意義に過ごしていただきたい・・・というのが当院の(私の)治療スタンスです。

なるべく早く結果を出すために、卵巣刺激法は患者さんの状態に応じて、使い分ける必要性を感じています。患者さんごとに異なる最適な卵巣刺激法を駆使して、不妊治療のその後も見据えて妊娠までの道のりがなるべく短くなるようにサポートしていきたいと考えています。

 

 

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