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トマトのようにはいかない卵子の収穫(採卵)

採卵の決め時(採卵決定のタイミング)について

体外受精の成否を決める要因の一つに採卵決定のタイミングというものがあります。体外受精を経験された患者様はどなたも経験しておられるかもしれませんが、採卵は急に決まることが結構よくあります。大抵の場合は採卵を決定した日の2日後が採卵日になることが多いですが、ごく稀に翌日採卵(イレギュラーケース)のような場合もあります。この採卵決定の根拠となるのが卵胞径(卵の袋の大きさ)、E2(エストラジオール)、LH(黄体化ホルモン)、P4(プロゲステロン)です。

卵胞成熟の判断はE2と超音波所見による

卵巣刺激を開始すると、卵胞が育ち始めます。超音波検査で育ってきた卵胞の大きさ、数を計測します。しかし卵胞の中にある卵子までは超音波では見ることができないので、実際に卵胞内の卵子が十分成熟しているかどうかの判断ができません。そこでE2を測定します。E2は卵子を取り囲む顆粒膜細胞から分泌されるので、E2の数値をみることで卵子の成熟具合がわかります。成熟卵胞1個あたりのE2値=200〜300pg/mlがおよその目安と言われています。これは自然排卵の状態で卵胞後期〜排卵期のE2値がこのぐらいになることと一致しています。例えば、卵巣刺激によって5個の卵胞が育ってきた場合、300×5=1500pg/ml、10個の卵胞が育ってきた場合、300×10=3000pg/mlを目安にします。卵子成熟度を予想するためには超音波所見とE2値を組み合わせることが重要である言えます。

採卵決定におけるLHの関係

LHは卵子成熟にとって重要なホルモンです。自然の卵子成熟の過程ではLHサージによって第1減数分裂前期で停止していた卵子成熟過程が再開し、そして第2減数分裂中期(M2期)で再び停止します。体外受精の場合、LHサージに変わるものがHCG注射です。場合によってはGnRHアゴニスト点鼻薬で自然のLHサージと同じ作用を起こす場合もあります。体外受精ではHCG注射や点鼻薬の作用によって卵子成熟を促進させM2期卵子(成熟卵子)を採卵できるかどうかが成否のカギとなります。体外受精の卵巣刺激法では早発LHサージ(卵胞成熟前にLHサージが始まり排卵してしまう現象)や早期黄体化(早発LHサージの結果卵胞成熟前に黄体化してしまう現象)を防ぐ方法としてGnRHアゴニストを用いる方法(ロング法)とGnRHアンタゴニストを用いる方法(アンタゴニスト法)があります。これらに共通しているのは薬物によって下垂体に抑制をかけている(LHは下垂体から分泌されるホルモンです)点です。一方、下垂体抑制をかけない方法(自然周期法、低刺激法)もあります。この方法では下垂体抑制をかけないため、自己のLHが常に分泌された状態になるため、採卵の決めどきがLHサージの発現によって左右されます。一般的には下垂体抑制をかけるロング法、アンタゴニスト法では採卵決定のタイミングが自己のLH分泌に左右されず、卵胞が十分育つまで待つことができる、スケジュール調節性に富むなどの特徴があり、下垂体抑制をかけない自然周期法、クロミフェン刺激では自己のLH分泌によって採卵決定が左右される、卵胞成熟前に早発LHサージが起こる場合はよい状態の卵子が取れないことがある(特に高齢患者の場合など)という特徴があります。

P4の活用=早期黄体化の予測

早期黄体化とは卵胞が十分に発育して成熟する前に血中P4(プロゲステロン)の分泌が始まる現象です。通常は卵胞成熟が十分となりE2が十分上がってからLHサージが開始、そして排卵によってP4が上昇するという過程をとりますが、LHのベースが高い高齢患者やPCOS患者では常に高い状態のLHによって卵胞が十分成熟する前に黄体化が始まりP4が上昇します。インプランテーションウィンドウ(着床の窓)というものがあり、胚と子宮内膜のステージが同期しないと着床しないとされていますが、早期黄体化(早期P4上昇)の生じた周期では胚と子宮内膜のステージがずれてしまうため、採卵と同一周期での移植(新鮮胚移植)では妊娠率は低下すると考えられています。早期黄体化の生じた周期では新鮮胚移植を避け凍結して周期を変えることで胚と子宮内膜をシンクロ(同期)させて戻すことが検討されます。

トマトのようにはいかない卵子の収穫(採卵)

トマトの場合は、見た目の色付き具合、場合によっては香り?をもって収穫時期を決めればよい?のではないかと思います(そんな生易しいものではないとトマト農家の方に怒られるかもしれませんが・・・)。卵子の収穫(=採卵)では、トマトのように外見の色や匂いによって卵の成熟具合や最適な取り時を判断することはできないため、ホルモンを測定します。この時参考になるホルモンがE2(エストラジール)、LH(黄体化ホルモン)、P4(プロゲステロン)になります。これらのホルモンの動向と超音波所見を組み合わせて最も適した採卵決定のタイミングを探ります。現代の体外受精においてはホルモン迅速測定は欠かすことのできない必須アイテムと言えます。

(このような理由から当院の体外受精では毎回ホルモン測定を実施しています)

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