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子育ては妊娠する前からすでに始まっているという話

生活習慣病胎児期発症説

妊娠前〜妊娠中の母体の栄養状態が、胎児の発育状態だけでなく、その子が生まれてからの健康や成人後の体質まで決めると言われています。過度のダイエットで栄養不良のまま妊娠したり、食生活の乱れなどで妊娠中に栄養が偏ったりすると、胎児の発育に影響を及ぼすだけでなく、遺伝子の働き自体が変化して、その子が生まれてから成人後に生活習慣病(肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症など)にかかりやすくなることが指摘されています。

これを生活習慣病胎児期発症説といいます。

つまり、母親となる女性の食生活がこれから生まれてくる子どもの一生の体質、ひいてはその子の人生を決めてしまうのです。これから妊娠・出産を目指す女性の皆様にとりましては、これからの食生活に気をつけていただく必要があります。母親の食べたものがその後に生まれる子供の一生を変えてしまうのです。

生活習慣病胎児期発症説 そのメカニズム

母体の栄養状態が不良の場合、胎児は栄養不良の状態でも何とか生き延びようとして、体の機能が栄養が足りない環境でも生きていけるようにプログラミングされます。その際、低栄養下の胎児はDNAの塩基配列(遺伝情報)は変えずに、DNAの発現の仕方を調節することによって低栄養状態でも生きていけるように対応するのです。つまり母体が低栄養状態になると、胎児は遺伝子の働き方を変えることによって、低栄養環境下でも生命を維持しようと頑張るのです。このような遺伝子の働きを調節する仕組みをエピジェネティックス(epigenetics)といいます。エピジェネティクス(epigenetics)とは、DNA塩基配列の変化を伴わない細胞分裂後も継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化と訳されます。

エピジェネティクス変化を受けた胎児(栄養が少ない状態でも何とか生きていけるように適応した胎児ということができます)は、生まれてからは胎内とは異なり、飽食の時代に放り出されることになります。その子が成人して大人になるころには世の中にはありとあらゆる食べ物があふれており、胎児期に少ない栄養でも生きていけるようにプログラミングされた体では、すぐに生活習慣病になってしまうことが想像できます。

エピジェネティクスの変化は、受精に近いタイミング(生命誕生の瞬間)で起きるほど、生じた変化は後々修正されにくく、この変化は世代を超えて引き継がれると言われています。(孫の孫の代まで続く)。つまり、妊娠したばかりのころに発生したエピジェネティクス変化がその後の受精卵→胎児→赤ちゃん→成人となるに従い引き継がれて、さらにこの変化はその子の子供、孫の世代までも引き継がれていく可能性があるのです。

エピジェネティクスに変化をもたらすメカニズムには、葉酸、ビタミンB群(B1、B2、B6、B12など)、アミノ酸などの栄養素が関係するDNAメチル化という現象が関係しています。(DNAメチル化(methylation)とは、DNA中の炭素原子にメチル基(-CH3)が付加する化学反応です。葉酸やビタミンB群などは生体内でのメチル基の転移に関係すると言われており、エピジェネティクスに深く関わっています。このメチル化という反応は、複雑な生物の体を正確に形づくるために必須の仕組みであると考えられていますが、一方ではガンの発生などとも関係しているとされています。以下シトシンのメチル化の模式図)

DNA_methylation

そのため、葉酸、ビタミンB群 、ある種のアミノ酸等が不足した環境下(栄養不良状態下)ではDNAメチル化によって遺伝子発現の度合いに変化が生じるのです。これが栄養不足状態の母体の体内で胎児に起こる身体的変化の正体です。

難しい話はさておいて・・・

要は、これから妊娠を予定している女性、妊活中の女性にとっての栄養は未来の赤ちゃんとさらにその子の子や孫の世代にとっても、非常に重要な要素であるということが言えるのです。つまり、妊活女性の子供だけでなく、孫、ひ孫の世代までも関係してくるという話です。妊娠してから何を食べたらいいか?を考える方も多いと思いますが、妊娠する前から何を食べたらいいか?について考えていただく必要があるということです。

子育ては妊娠する前からすでに始まっています。未来の赤ちゃんのためにできることを今から始めてみましょう。

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