Blogクリニックブログ

諸刃の剣 DHEA

諸刃の剣 DHEA

DHEA(Dehydroepiandrosterone=デヒドロエピアンドロステロン)は「若返りホルモン」として知られており、海外ではいわゆるDHEAサプリメントが、気分を快活にし、活力の増強、体のパフォーマンスを20代並の状態に引き上げ、若さが戻り、性欲アップに貢献するとして「若返りの健康食品」として販売されています。日本ではDHEAを含む製品は法律上医薬品とみなされるため、店頭での購入は出来ませんが、海外からの個人輸入として入手可能です。DHEAは体内でも合成されており、主に副腎皮質で分泌されています。分泌量は思春期に急激に高まり20代でピークを迎えますが、その後急激に分泌量が低下し、40代では約半分、80代ではほとんど分泌されなくなってしまうとされます。つまり加齢に伴い体内のDHEA合成能は低下するのです。

hy-14650.jpg

このDHEAですが、多くの方がすでにご存知かもしれませんが、不妊治療の世界でも注目されています。DHEAは弱い男性ホルモン作用を持ち、卵胞の細胞内でテストステロン(男性ホルモン)やエストラジオール(女性ホルモン)の元になります。実は男性ホルモンは排卵誘発剤に反応する前の小さな卵胞の発育に重要である事などが報告されています。またDHEAはミトコンドリアでのエネルギー産生を制御しているタンパク質の働きを強める作用を持つと言われています。これらの事からDHEAが卵胞内のホルモンやエネルギーの産生に重要であると考えられてきました。DHEAは加齢に伴い分泌量が低下してしまうため、逆にDHEAを補充すれば卵胞の発育能が上がるのではないかという考え方が出てきました。およそ3ヶ月程度のDHEAの摂取により、血中AMH量の増加、採卵数、胚の質や妊娠率が有意に増加するという報告もあります。

DHEAの有害作用

不妊治療におけるDHEAの使用ですが、良い事ばかりではなく有害作用もあります。DHEAはそもそもが男性ホルモン様作用を持つことから、PCOS(PCOS=多嚢胞性卵巣症候群の特徴は男性ホルモン過剰などに特徴づけられます。男性ホルモン過剰に伴う種々の症状が現れます)の病態に近くなります。(身体的変化として多毛、ニキビ、男性化兆候) 一般にPCOS患者では卵子の質の低下(=低受精率、胚盤胞到達率の低下等)、子宮内膜受容能の低下(=流産率が高い)、などが知られています。DHEAの使用がかえって逆効果になるケースもあるのです。

適応をよく見極めた使用

不妊治療で特にDHEAの使用が推奨される方は以下のようなケースです。

・加齢(概ね40歳以上)に伴い卵巣予備能が低下していると考えられる方

・40歳未満でもFSHが高く、卵巣予備能が低下している可能性の考えられるような方

・体外受精の高刺激法でも卵巣予備能が低くてなかなか卵胞が育たないケース(いわゆるpoor responderと呼ばれるようなケース)

DHEAの適応を判断する指標として、血中DHEA-S(DHEAの代謝産物)を測定します。DHEAは闇雲に投与するのではなく、DHEA-Sの低いケースや上記に該当するようなケースで選択的に使用するべきと言えます。そういう点ではまさに諸刃の剣と言えます。スッポンやマカと違って、DHEAの使用は専門家の助言と指導に基づいて行われるべきです。

 

PageTop