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仕事と不妊治療の両立について考える

仕事と不妊治療の両立について

仕事と不妊治療は、治療のクオリティーを極限まで追求するとしたら両立はおそらく難しく、相反するものです。わたくしも以前までは治療中は自分都合ではなくて、卵都合で予定を立てて下さいということを常日頃お伝えしていました。しかし最近思うのは、不妊治療をやり遂げるためには、高額の治療費を賄うための軍資金が必要であり、そのためには何と言っても仕事をしていないと無理なのだということ。恥ずかしながらこれまで、医療者側の視点でしか考えていなかった(医療者は兎にも角にも患者さんが妊娠することしか考えません)のですが、医療者側の視点だけでは治療が上手くいかない人たちが必ず出てくる、患者側の視点に立って初めて見えてくるものがあるということに気づいたわけです。(患者側の視点、つまり、治療の質を高めるためには仕事を犠牲にしなければならない・・・と、そんなことは百も承知で分かっている。問題は仕事を犠牲にしたところで、じゃあ治療費はどうやって捻出するの??という、たぶんそんなところではないかと思います)

患者様より時々、仕事と治療の両立で悩んでおられる旨の相談をいただくことがあります。不妊治療における仕事と治療の両立はやはり究極の難題だと思います。どちらかを立てるとどちらかが立たなくなる・・・そのバランスの中で上手く立ち回っていくしかないと思います。

そうは言っても、質問を受けた以上はやはり何らかの解決策を示さなければプロとは言えませんので、概ね以下のような回答をさせていただいています。

タイミング法の場合はそんなに通院のペースにこだわる必要はないと思います。むしろクリニックに来るのがどうしても難しい方は、無理して来る必要はないので、とにかくタイミングだけはしっかりとるようにして下さいという点をお伝えしています。排卵が順調な方は、極論すれば自宅でタイミングをとるのと病院で排卵を確認するのとではそこまで大きな違いはないと思います。排卵が順調でない(排卵誘発剤の適応)方は、月経中の診察(排卵誘発剤の処方)、途中経過の卵胞確認の最低1周期2回ぐらいの通院は必要になりますでしょうか。月経中の診察はD1〜5ぐらいの来院でもOKですと幅をもたせています。排卵確認については、排卵誘発剤の初回周期はどのくらいで排卵するか読めませんが、2周期目以降になってくると大体このぐらいで排卵かなというのが読めますので、何時何時タイミングをとって来てくださいのような指示をしています。最悪排卵日付近で来院できない場合は、自己タイミングに切り替えて、少なくともタイミングだけはとるようにしてくださいと指示しています。当院では多胎妊娠のリスクを考慮して一般不妊治療での過排卵(HMGーHCG療法)は一切行いません。排卵障害に対しては原則レトロゾール(フェマーラ)内服による単一卵胞発育を目指したマイルドな排卵誘発を心がけています。たくさんの卵が育ちすぎてキャンセルということはまずありません。不妊治療と仕事の両立という点で、不妊治療の優先度をそこまで上げられないという方はこういう方法が考えられます。

体外受精になると少し話が変わります。体外受精の場合は、卵胞径とホルモン値(E2、LH、P4)によって適切な採卵時期を決めています。たった1日ずれるだけでもMⅡ卵子(成熟卵子)がとれないことが多く、成熟卵子が取れない=受精しない原因となります。特に自然周期を行う場合は1日の違いでOV(排卵)済みとなってしまったり、卵子回収できなかったりと採卵までの診察が非常に重要になってきます。体外受精を検討される場合は仕事の調整が必要にはなってきます。もちろん100%の治療を目指さなくても80%ぐらいの治療でもよいという考え方もあります。しかし費用がかかる治療なのでできれば短期間に集中的に取り組んで短い時間で最大限の結果を出すことを考えていただいた方がよいと思います。当院では体外受精希望の患者様に対しては仕事との両立やスケジュールが立てやすい刺激法の工夫をしています。また、自己注射法を指導して注射の通院を極力減らす、移植法をホルモン補充周期とすることで胚移植の際もスケジュールの調節性を重視するなど、治療を受けられる患者様が仕事をしながら治療をやり遂げられるよう工夫をしています。なにはともあれ、最初からまず私には仕事が忙しいから体外受精は無理だ(ステップアップしたくても無理だ)という考えはやめて、とにかく相談していただけたらと思います。少ない頭をフルに回転させて、なにかしらの答えをひねり出すように努力いたします。だから治療費をしっかりまかなえるように仕事だけはやめないでしっかり頑張ってください。(このようなことをお伝えしています)

仕事の流儀

女性が妊娠できる期間は、一生のうちのごく限られた時間だけです。(妊娠適齢期はだいたい20台前半〜30台前半の約10年間と考えた方がよいと思います。一般の方は、昨今の有名人の高齢出産の話題などの影響もあってか、もっと歳が行っても大丈夫だと思っている方も多いように見受けられますが、我々専門家の認識と一般の方の認識には相当のずれがあります。しかしこれは致し方ないことかもしれません) 一方、仕事を生きがいとするある人にとっては、まさに今しかこの仕事はできないという方もおられると思います。仕事は人生にハリを、そして生活にゆとりをもたらしてくれます。治療か、仕事か、などというのは本来どちらを優先すべきか選べるものではなく、自分が悔いのない人生を送る上で両方が必要であったら何としてでも両方頑張るしかないものだと思います。そのような患者様の思いに一つでも多く答えを提示できるかどうかが、我々プロフェッショナルに求めらるこれもまた仕事なのだと思います。(これはあくまでもわたくしの考え方であって、すべてのドクターが同じ考え方ではないと思います。そんな中途半端なことやってたら治療なんか上手くいくわけないよという厳しい意見もあると思います。その考え方は決して間違いではありません。人にはそれぞれ仕事に対する考え方があります。それが流儀というものではないかと思います。)

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