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卵管水腫に関する話題

卵管水腫と体外受精成績の関係

卵管水腫とは卵管の一部が炎症(クラミジアなど)や子宮内膜症による癒着などで通過性が悪くなった結果、卵管の中に水が溜まる状態をいいます。水が溜まった卵管は膨れ上がり、よく”ソーセージ状”などと表現される場合もありますが、必ずしもソーセージ状に膨れ上がっていない場合もあります。卵管水腫は卵管液の産生が亢進する卵胞期〜排卵期にかけて特に顕著に見られる場合があります。これは卵管液の分泌がエストロゲン依存性に増えるためです。一般不妊治療を行っている際はほとんど見られなかった方が、体外受精の卵巣刺激を行ってエストロゲンが増えることで卵管液の産生が増え、初めて認識される場合もあります。卵管水腫は不妊症の原因として重要です。(卵管因子の一つと考えることができます)。卵管水腫が不妊症に関連する要因として、排卵した卵子が上手くキャッチされないピックアップ障害の原因になります。(つまり、タイミング法や人工授精で妊娠しない原因になります)また、仮に体外受精を行った場合でも、卵管水腫がある方の体外受精の成績は不良であるという報告があります。この理由として、

  • 貯留した卵管液が胚に対して毒性を持っているという説(受精卵へのダメージ)
  • 子宮内膜の環境を悪化させるという説(着床環境悪化説)
  • 内容液が胚を子宮外へ押し流してしまうという説(物理的要因)

などが考えられており、無治療の卵管水腫があった場合は、卵管水腫のない場合に比べて、胚移植あたりの妊娠率が半分ぐらいまで低下すると報告されています(さらに両側にある場合は1/3以下とも言われます)。また、妊娠反応が陽性になっても、卵管水腫があると卵管水腫がない場合に比べて流産率、子宮外妊娠率が高いことが報告されています。つまり、卵管水腫がある場合には、仮に妊娠できても胚移植あたりの生産率(実際に赤ちゃんが生まれるまでの割合)は、卵管水腫がない場合の1/4以下になるという意見もあります。

卵管水腫がある場合の対処法

まず、一般不妊治療(タイミング法、人工授精)でなかなか妊娠に至らない場合は体外受精の適応になりますが、卵管水腫がある場合は体外受精→胚移植をやみくもに行ってもなかなか上手くいかない可能性があります。そこで、以下のような方法で卵管に水が溜まる状態を改善させます。

(1) 卵管開口術  卵管采に切開を加えて卵管を開口して排水させる

(2) 卵管切除術  水が溜まる卵管自体を摘出

(3) 卵管クリッピング術  卵管をクリップで留めて、卵管内容液の子宮への流入を防止

(4) 卵管内容液穿刺吸引術  卵管水腫を針で刺し内容液を吸引除去

(1)〜(3)の方法は腹腔鏡と呼ばれる手術を原則とします。ただし、クラミジア感染や内膜症が酷くて卵管周囲の癒着が激しい場合は腹腔鏡での処置が難しい場合もあります。(4)は採卵と同様の方法で卵管液を穿刺して抜き取る方法です。

卵管水腫合併不妊症に対する当院での戦略

クラミジア感染や子宮内膜症をベースとして、明らかに卵管水腫が疑われるケースでは、一般不妊治療に拘らず早めのARTへのステップアップを促します(卵管因子自体でARTの適応と考えてもよいかと思います)。体外受精ではほぼ必ず胚盤胞培養により胚盤胞凍結を行います。胚盤胞を目指す理由として、移植から着床までの時間が短いことが挙げられます。特にハッチングしているような胚は子宮内に入れると間もなく着床しますので、特に卵管水腫があるケースでは胚が卵管逆流液に触れる時間を最小限に抑えることが可能と考えられます。そうすると、少なくとも胚に対する毒性、受精卵が卵管液で押し流される可能性を減らすことができます。(分割期胚移植の場合は、胚が着床するまでに胚盤胞に育たないといけないが、それまでの間子宮内でしばらく漂うことになるので、卵管水腫の貯留液に胚が触れる時間が長くなります。また、子宮の中を漂っている間に卵管液で押し流されてしまう場合も考えられます)。また必ず胚移植直前に卵管液を穿刺吸引して移植に臨むようにしています(卵管内容液穿刺吸引術)。卵管水腫合併不妊で反復着床不全に陥っているケースでは腹腔鏡手術による卵管切除も考慮します(が、胚盤胞移植+卵管内容液穿刺吸引術の組み合わせで良好な成績を挙げており、これまでのところ卵管切除まで要したケースは皆無です)。

卵管水腫の症状など

卵管水腫の症状として排卵期近くの帯下の異常な増加、さらさらした水様帯下が増えるなどが挙げられます。頸管粘液と勘違いされる場合もあります。排卵期付近で膨れ上がる場合が多い為、排卵期付近でのエコーによる観察が重要です。ただし発育卵胞と区別がつきにくい場合もあります。その場合は卵胞発育する前の月経時期にエコー検査を行い、排卵期のエコーと比較をすることで分かる場合もあります。卵胞の場合は通常左右がランダム(時々片方からしか排卵しない方もいますが)であることが多いですが、卵管水腫の場合は卵管の通りが悪いことが原因なので毎回決まった側に出現することが多いです。

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