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体外受精後の子宮外妊娠について

過排卵刺激と子宮外妊娠

体外受精後の子宮外妊娠を経験された方もおられるのではないかと思います。体外受精の合併症の一つに子宮外妊娠が含まれています。(ちなみに一般不妊治療での子宮外妊娠のリスクは1.5%程度と言われています。新鮮初期胚移植では2.3%、凍結胚盤胞では0.8%程度とされています。胚移植の方法で結果に違いが見られます)。患者様で過去に子宮外妊娠を経験された方から、”体外受精を考えたいが子宮外妊娠が心配です”という趣旨の相談をいただくこともあります。

今回は体外受精と子宮外妊娠についての論文を紹介します↓↓

Fertility & Sterility Volume 104, Issue 1, Pages 110–118

この論文によると、体外受精に関連した子宮外妊娠のリスクは凍結胚移植の方が新鮮胚移植よりも低いとされています。また、日本では一般的ではありませんが、ドナー卵子による体外受精の場合も子宮外妊娠のリスクは下がるとされています。これらの要因として、今回の論文では、hyperstimulation(過排卵卵巣刺激)が関係しているとしています。過排卵周期による高エストロゲン環境が正常子宮内膜における着床不全(implantation failure)を引き起こし、結果として異所性着床(子宮外妊娠)の引き金になるとしています。過排卵周期の新鮮胚移植では高エストロゲン状態によって胚の着床環境が悪化すると考えられます。一方、凍結胚移植やドナー卵子の移殖の際には通常過排卵刺激は行いません。また今回の論文ではドナー卵子を使った体外受精では新鮮胚移植でも凍結胚移植でも子宮外妊娠の発生に差がなかったとしています。これらの事実から、凍結の有無というよりは過排卵刺激の有無が子宮外妊娠のリスク因子として重要と考えられるとの結論です。

当院では、過排卵刺激周期の体外受精において、発育卵胞数と採卵決定時の血中E2を参考に新鮮胚移植の可否を判断しています。一般的には発育卵胞数が増えれば血中E2は上昇します。血中E2の高い採卵周期では今回のように子宮外妊娠の予防目的、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の予防の観点からも全胚凍結を勧めます。もちろん、新鮮胚移植のメリット(凍結費用がかからない、人為的操作をなるべく減らし胚にかかるストレスを減らせる、)もありますので、胚移植の方法はケースバイケースで判断いたします。凍結胚移植のメリットは特に過排卵周期で多数の卵胞が発育した(多くの卵子が獲得できた)際に発揮されると思われます。多数の卵胞発育した周期ではE2だけでなくP4(プロゲステロン)も上昇します(卵胞数が増えることで1卵胞あたりP4が合算され結果的に血中P4が上昇する)。WOI(いわゆる着床の窓)も結果的に早めに開く可能性があり、着床率の低下に繋がる可能性も考えられます。刺激法と胚移植法は各々独立に考えるべきでなく、個々の患者様の状態に応じて刺激法を選択し、その結果として最適な胚移植法を選ぶべきと言えます。

焦らず欲張らず

採卵周期は如何に良好卵子を獲得するかに主眼を置いた適切な卵巣刺激を行い、良好胚が確保できたら焦らず欲張らず一度仕切り直して体を立て直してから(子宮内環境を整えてから)移殖に臨む方が結果的に妊娠に早く近づけるのではないかと考えます。

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