高原のラボ|クリニックブログ
クリニックブログ
Clinic Blog
2017.02.11
体外受精
治療
高原のラボ
生殖医療専門クリニックは日本全国津々浦々にあり、現在全国におよそ560の体外受精認定施設(ART実施施設)があると言われています。さて、その中で、当院を含め長野県内にあるART実施施設はおそらく全国の施設の中でも最も高地(標高が高い地域)にある施設ではないかと思われます。(調べたわけではないので正確ではないかもしれませんが、その際はご容赦下さい)。今回ご紹介するのは、ラボの標高が胚培養に及ぼす影響についてのvitrolife社のブログです。
培養液=秘伝のレシピ
一般的に胚培養には胚の発育段階に応じた専用の培養液を使います(最近、1種類で全ての胚の発育段階に対応したsingle step mediumというものもありますが)。この培養液の中にはアミノ酸、ブドウ糖、各種電解質など様々な物質が含まれており(培養液の詳細なレシピは各メーカーのトップシークレットに相当するため含有される成分およびその正確な組成までは一切公開されていません)、メーカー各社が凌ぎを削り、限りなく人体(特に受精卵発育の場である卵管内)に近い環境を再現しています。各メーカーは培養液に添加する各種成分の組成や濃度を頻繁に変え、マイナーチェンジを繰り返し、日々これでもかというぐらいの高性能な培養液が開発され続けています。さて、これら多くの培養液では、ある規定のCO2濃度、N2濃度、O2濃度下で、pH(ペーハー)が弱酸性〜中性(7.3〜7.4前後=卵管内と同一)となるように設計されています。実はこのpHを人体と同じ弱酸性〜中性に維持することは、胚の発育にとって大変重要であり、胚は培養液のpHの微細な変化にダイレクトに影響を受けます。受精卵を体外培養する際、培養液中の環境が限りなく人体内(特に卵管内)に近い方が胚にとってはストレスが少なく最適な環境と言えますが、おそらく、今の現在においても人体内と100%同一環境を実現するには至っておりません。(つまり、母体内と全てにおいて全く同じ条件という体外培養系は未だ存在しないのです。人体の神秘は神の成せる技であり、我々人間の科学技術はそのレベルには到底及んでいないのです)
胚培養に標高が及ぼす影響
当院が採用している、vitrolife社の培養液は、6%CO2濃度下で平衡化した場合、pH=7.31を維持できるように設計されており、これは卵管内環境に近いpHです。しかし、この設計は培養液を海抜0m地点に設置したインキュベーター内で使用することが前提となっています。(勝手な想像ですが、vitrolife社の本社はSweden Gothenburg(イェーテボリ)、海に面した港湾都市、市の中心部の標高はさほど高くないと思われます)。 標高が上がると大気圧が下がり、結果として大気中のCO2分圧は下がります。海抜0m地点で培養液を平衡化するために必要なインキュベーター内のCO2濃度は6%ですが、標高が高い地点に設置したインキュベーターで培養液を平衡化するためにはインキュベータ内のCO2分圧が低下するために6%よりさらに多くのCO2が必要となります。つまり、標高が高い地域に所在する不妊クリニックでは、より最適な培養環境を実現するためには、培養液メーカー推奨のセッティングに、所在地の標高を考慮したアレンジを加えなければならない場合もある・・ということです。
その辺りのことが、以下のvitrolife社のブログに記載されております。興味のある方はご覧ください。
Considerations for embryo culture at high altitude
海抜0m地点の6%CO2と同一条件を実現するために必要なCO2濃度と標高の関係
当院は、浅間山麓に広がる高原都市長野県佐久市にある、日本一標高が高く空気の澄んだ高原ラボの一つです(たぶん)
(佐久市の標高はおよそ700m)
豊かな自然環境に恵まれた高原のクリニックとしてこれからもお子様を望まれる多くの患者様の期待に応えたいと思います。
私たちのまち佐久市は、長野県下4つの平の一つ、佐久平の中央に位置し、市の中央を詩情豊かな千曲川が流れ、浅間山、八ヶ岳、蓼科山、荒船山など雄大な山並みに抱かれた美しい高原都市です。 北陸新幹線、上信越自動車道が東西に走り、 首都圏等へのアクセスに優れています。高速交通ネットワークの拡充に伴い、日本のほぼ中央に位置する佐久市は、高速交通の結節点、交流圏の拠点として、飛躍的な発展が期待されるところであります。 (佐久市政ガイドより抜粋)
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