顕微授精実施時の紡錘体観察について|クリニックブログ
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2017.02.19
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顕微授精実施時の紡錘体観察について
紡錘体可視化装置(spindle view)
先日より紡錘体可視化装置(spindle view)を導入しました。紡錘体(spindle)とは、細胞分裂の際に染色体を娘細胞に分離する構造体であり、細胞分裂の際に重要な役割を担っています。(wikipediaより)。以下、紡錘体の模式図。 紡錘体可視化装置により、これまでの顕微授精に比べてより安全に、確実な手技を行うことが可能になり、治療成績の向上につながることが期待されます。
通常の顕微受精はこうして行う
通常、顕微授精を行う際、第1極体とよばれる卵子に見られるヘソのような部分を目印として行います。この第1極体が出現した卵子はMⅡ(エム.ツー)卵子と呼ばれ、いわゆる成熟卵子と呼ばれるものであり、成熟卵子とは受精の準備が整った状態であり、この第1極体が出現した卵子に対して精子を注入します。この際通常は右図のように卵子の12時方向に第1極体が来るようにホールディングピペット(卵子を保持するピペット)を調整し、卵子の3時方向からインジェクションピペット(精子を注入する先端が針状になったピペット)で精子を注入します。
spindleと第1極体の関係
一般的には、第1極体(polar body)に対して、紡錘体(spindle)はその直下の細胞質内に出現していることが多いとされています。(下図) そのため、一般的な顕微授精では、第1極体の直下に紡錘体があるものという前提のもとに、インジェクションピペットを穿刺し精子を注入する作業を行っています。つまり、12時方向の第1極体に対して3時方向からのインジェクションでは、精子注入位置と紡錘体が90°離れているため、紡錘体を損傷することがほとんどないと考えられて来ました。しかし、一部の卵子では、第1極体に対して紡錘体の位置がずれているものが存在することが知られており、第1極体と紡錘体の角度が30°以上ずれているものも存在することが分かってきました。このような卵子では、通常の3時方向からのインジェクションを行った場合に紡錘体を穿刺する可能性があり、紡錘体損傷につながる可能性が指摘されています。
spindle view(紡錘体可視化)による安全で効果的なICSI
紡錘体を確認して行う顕微授精では、上記のように第1極体と紡錘体がずれている卵子の場合に、これまでの盲目的な手技に比べてより安全にICSIを施行することが可能です。紡錘体は細胞分裂の際に重要な役割を持つ構造体であり、損傷すると細胞分裂の停止(ICSI後の発育停止や変性)につながります。当院ではこの紡錘体可視化の導入により、より安全で効果的なICSIが可能になるものと考えています。特に、採卵時少数卵子症例(卵巣予備能が低く回収卵子数が少ない症例)では、手技の確実性が高まることによって、さらなる治療成績の向上につながるものと期待しています。当院では引き続き、新技術の導入やスタッフのスキルアップを通じて一人一人の患者様の治療期間の短縮を目指しています。(一人でも多くの患者様に出来るだけ早く結果を出すことが当院の最大の目標です)
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