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2018.02.13
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ブームは過ぎましたが・・・ヒアルロン酸含有胚移植用培養液について
しばらく前にブームが過ぎた感はありますが、ヒアルロン酸入り移植用培養液の話題です。(ブームが過ぎたというよりは世に出てそこそこ時間が経ち、一般使用としてある程度浸透した、特に珍しい話題でもなくなった、と言うことだと思います)
胚移植の際に妊娠率を上げるための様々な工夫が行われています。その中で、胚移植に用いる移植用メディウム(培養液)中にヒアルロン酸を含むものについて、ヒアルロン酸を含まないものと比較して着床率、臨床妊娠率が高くなる可能性がある・・というのがしばらく前に盛んに話題になり、ブームとなりました。
ヒアルロン酸入り移植用メディウムの中で、メジャーなものがエンブリオ・グルー(Embryo Glue)です。エンブリオ・グルーはVitroLife社によって開発されたヒアルロン酸を豊富に含む胚移植用の培養液です。(グルーというのは糊という意味です)。もともとヒアルロン酸は、卵胞液、卵管分泌液、子宮腔内に自然に存在していて、糊のようにベタベタとひっつく性質があり、この性質が胚の子宮内膜への接着を促進させ結果として着床を促すのではないかと考えられています。また、これ以外にも、ヒアルロン酸自体に胚の物理的な保護作用(ヒアルロン酸に包み込まれることで胚が外界からの様々なストレスを受けるのを防止する)があるのではないか?とも言われています。
実際に胚移植をエンブリオ・グルーで行うとETカテーテル(胚移植に用いるカテーテル)の内筒と外筒がベタベタとくっつく感覚があり、内筒を子宮腔内に進ませるのにややコツがいる感覚はあります。(もちろんだからと言って移植がやりにくいということは全くないですが)
エンブリオ・グルー自体はFDA(米国食品医薬品局)に認可されており、胚や人体に悪影響がないことが確認されていますので安心して使用出来ます。
以下、胚移植にエンブリオ・グルーを用いて妊娠率を比較した論文を紹介します。↓↓ 2014年のFertility&Sterilityです。(こちらの論文は福岡の某有名クリニックから発表されたものです)
Effect of embryo glue transfer medium during fresh and frozen-thawed embryo transfer
この論文ではD2新鮮胚移植と、D3凍結胚移植で、それぞれにエンブリオ・グルー使用群と非使用群で着床率(implantation rate)、臨床妊娠率(clinical pregnancy rate)を比較しています。結果はD2新鮮胚、D3凍結胚いずれの移植法においてもエンブリオ・グルー使用群で着床率、臨床妊娠率が高かったとしています。
当院でも2015年1月以降、凍結胚盤胞の融解胚移植でエンブリオ・グルーを使用しています。もともと凍結胚盤胞の妊娠率はそれなりに高いというのもありますが、ここにエンブリオ・グルーを組み合わせるとことでさらに妊娠率向上を目指しています。(当院の2017年の凍結胚盤胞の融解胚移植では、移植あたり妊娠率が約40%です。2016年は約38%でした。)
このように、非常に優秀な培養液ですが、唯一の欠点は値段が高いこと・・・ですかね・・・仕方ないと思いますが。
ヒアルロン酸については、以下の当院関連ブログも参照下さい↓↓
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