悪党はとことん悪党・・胃だけではないピロリ菌の影響|クリニックブログ
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2016.08.25
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悪党はとことん悪党・・胃だけではないピロリ菌の影響
ピロリ菌と不妊症の関係
ピロリ菌=ヘリコバクター・ピロリとは?
ピロリ菌は、胃の粘膜に生息している螺旋(らせん)状の菌で、主に胃や十二指腸などの病気の原因になります。多くは幼児期に感染し、一度感染すると多くの場合、除菌しない限り胃の中に棲みつづけます。ピロリ菌に感染すると炎症が起こりますが、この時点では症状のない人がほとんどです。大人になってから感染すると激しい胃の症状をみることがあります。さらにピロリ菌の感染が続くと慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)がすすみます。この慢性胃炎をさらに放置すると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃がん、さらには全身的な病気などを引き起こすおそれがあることが明らかになってきました。
胃の病気だけではないピロリ菌の影響
実はこのピロリ菌ですが、胃の病気だけではなく、近年さまざまな全身疾患の原因となることが分かってきました。(以下ピロリ菌が関係するとされる胃以外の病気)
ITP(特発性血小板減少性紫斑病)、鉄欠乏性貧血(難治性)、糖尿病・・・
そして不妊症!
胃以外のピロリ菌による疾患として、血液系の疾患が多いように感じられる方もおられるかもしれません。そして我々が専門とする不妊症も、実はピロリ菌との関係が指摘されるようになってきたものの一つです。こちらは、ヘリコバクター・ピロリと不妊症の関係について書かれた論文のabstract(要約)です。Pub-Medからの引用になります↓↓
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24914316
これによりますと、ピロリ感染した女性の頸管粘液は精子の運動性を阻害する、ピロリ感染女性では抗ヘリコバクターピロリ抗体の影響で卵子と精子の結合が阻害される(受精障害を起こす)、ピロリ感染男性の精子運動率が低く精子形態異常が多い(男性因子の原因)、ヘリコバクターピロリ陽性妊婦では妊娠高血圧腎症の発症が高い(ハイリスク妊婦)・・・などの記載がみられます。
不妊治療世代に多いピロリ菌感染
ピロリ菌は、幼少期に何らかの理由で口から入った菌がそのまま胃に住み着いて感染すると考えられています。かつての日本では下水道の未整備地域なども多く、中高年以降の世代ではピロリ菌の保有率が高い状態がみられています。現在主に不妊治療を行っているいわゆる不妊治療世代の多くは30台後半〜40台前半の方が多いと思われますが、ピロリ菌の抗体保有率が高くなる世代ともおよそ一致すると思われます。(以下グラフ参照。2010年時点では40歳の20%がピロリ保菌者と言われている ピロリ菌のお話.jpより抜粋)
当院でのケース
当院でも、最近よく、不妊治療中に受けた健康診断、人間ドック等でピロリ菌の指摘を受けたとの相談をいただきます。そのような場合には、除菌を勧められた場合には上記のような理由から、まずは除菌をしていただくことをお勧めしています。除菌療法中は、抗生物質や胃薬などを服用することになるかと思われますため、不妊治療についてはお休みしていただくことを勧めています。上記論文を根拠とすると、除菌後の方が不妊治療の成功率も高くなるのではなかと推察されます。
これから妊娠を希望される皆様へ
不妊治療中の患者様、これから妊娠を希望されておられる患者様におかれましては、ぜひとも人間ドック等でピロリ菌を含めた全身の検査を受けていただくことをお勧めしたいと思っています。そして、もしピロリ菌が見つかったらまずは除菌をしてからの不妊治療をお勧めします。妊娠はそもそも自身の健康が最低限保証された状態でなければできるものではなく、自身が不健康な状態では子孫を残すという生殖活動は本来抑制されるものなのです。
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