妊活と消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)|クリニックブログ
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2017.02.07
不妊症
検査
治療
妊活と消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)
胃潰瘍の薬が不妊症の原因になる!?
近年、男女ともに不妊治療の患者様の高年齢化が進んでいます。高年齢化に伴い、基礎疾患と呼ばれる、不妊治療で対象とする不妊症以外の病気(高血圧、高脂血症、糖尿病など)を男女ともに合併しているケースが増えてきました。今回はその中で、消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)と不妊症の関係についての考察です。
この度、オランダのグループが消化性潰瘍治療薬(プロトンポンプインヒビター=PPI)と、男性の精子の質に関する報告を医学誌Fertility&Sterilityに報告しました。↓↓
妊活時は要注意! 胃潰瘍薬が精子に悪影響? オランダからの研究報告
プロトンポンプインヒビター(PPI)とは
オメプラール, オメプラゾン、タケプロン、パリエット、ネキシウム、タケキャブ などの商品名で国内で数種類が流通しております。
PPIは胃内において胃酸分泌を抑え、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などを治療し逆流性食道炎に伴う痛みや胸やけなどを和らげる薬です。胃内において胃酸分泌の最終段階にプロトンポンプというものがあり、PPIは胃内のプロトンポンプを阻害することで胃酸を抑える作用を発現します。PPIはピロリ菌の除菌治療にも使用される薬です。同じ胃酸分泌抑制剤であるH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー ガスターなど)との比較では通常はPPIの方がH2受容体拮抗薬より胃酸分泌抑制作用が強いとされており、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎の患者様では大変有効な治療薬となっています。
不妊症とPPIの関係
Fertility&Sterilityに報告された内容では、精液検査の前にPPIを6ヶ月〜12ヶ月使用していた男性では、非使用の男性に比べて、総精子数<100万以下の乏精子症の割合が2.96倍高かったというものです。妊活中の男性における使用薬剤の影響について今後も考察する必要があると結んでいます。
ヘリコバクター・ピロリと不妊症
ピロリ菌が不妊症に関係するという報告があります。女性がピロリ菌に感染すると、ピロリ菌に対する抗体がつくられ、この抗体が精子と反応して精子の運動性を低下させて、受精を妨げるとされています。また、ピロリ菌陽性妊婦では胎児の死因ともなる妊娠高血圧腎症のリスクが高まるという報告もあります。男性では、ピロリ菌に感染していると、精子の運動性、生存率、正常な形状の精子数が低下する可能性が指摘されています。また精子の損傷を引き起こす炎症性サイトカインの増加やアポトーシスの増加と関連することなども指摘されています。以下、ピロリ菌感染が生殖に影響を与えるかについての論文です。↓↓
Can Helicobacter pylori infection influence human reproduction?
また、当院の過去ブログ記事になりますが、こちらもぜひご参照ください。
不妊治療とピロリ除菌どちらを優先するべきか??
当院では、まず有無を言わさずピロリの除菌を勧めます。ピロリ菌は胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんやその他の多くの疾患の原因になりますし、不妊症の原因にもなるからです。また、ピロリ菌保菌者では、十二指腸潰瘍、胃潰瘍の再発率が高く、病気が遷延する可能性が高いこと、そうなるとおそらくPPIなどの消化性潰瘍治療薬を長期にわたって使用する可能性が高まること、そうなると男性では精子所見が悪化するなどが考えられます。30代後半〜40代前半の不妊治療世代にピロリ菌の陽性者が多いのも特徴です。自身が健康でなければ、子孫を残すという生殖は本来抑制されるべきものです。これから妊活を希望される皆様、そして妊活中の皆様も、ぜひ一度健康診断で自身の健康状態を確認してみてはいかがでしょうか?(特にピロリ菌の検査を勧めます)。長期にわたって胃の不調を訴えられる方、PPIを長く服用しておられる方、その中々治らない胃の不調はピロリ菌が原因である可能性も考えられます。妊活の前にぜひ健康診断、そしてピロリ菌の検査をお願いします!!
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