神はサイコロを振らない??|クリニックブログ

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2017.03.25

不妊症

治療

神はサイコロを振らない??

不妊治療を始めるにあたり知っておきたい確率の話

不妊でない夫婦の1周期あたりの妊娠率は約20%

最近流行かどうか知りませんが、世の中には出来ちゃった結婚(出来婚)というのがあります。出来婚するカップルはおそらく別に特に狙ってた訳ではなく、適当にやってたら(雑な言葉で申し訳ありませんが)出来たという方がほとんどだと思います。

人工妊娠中絶の年次推移を示します。厚労省統計「衛生行政報告例」というところから持ってきました。これによると、H23年度からの5年間で人工妊娠中絶の総数は減少傾向にはありますが、それでもH27年では年間に17万件の人工妊娠中絶が行われたということになります。(人工妊娠中絶を選択される方にはその方なりの事情がありますので、ここはその点を話題にするつもりはありません)。

予定しない妊娠が実はこんなにたくさんある

ということをお伝えしたいのです。

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ここまでの話だと、”ヒトって結構簡単に妊娠するものなの??”と考えるかもしれません。

しかし、その一方で

実際には、ヒトはそもそも生殖能力が低いと表現されることもあります。

不妊症でない方の1排卵あたり妊娠率=20%とされています。

動物と比較してよいかどうか知りませんが、1排卵あたりのネズミの妊娠率はほぼ100%(これはすごい!!)、チンパンジーは70%ぐらい、らしいです。これらの動物と比べると人間は元来妊娠しにくい生物といわれるのもうなずけます。(高度な知能と文明によって食物連鎖の頂点に位置する人間は、他の動物と比べて1排卵あたりの妊娠率は低く、1回の出産で生まれる子供の数も少ないと言えます。種の遺伝子を後世に残すため、そして生物どうしがバランスをとるため弱い動物ほど多子多産に、強い動物ほど少子少産になります)

妊娠はいつでもできて、SEXをすれば必ず妊娠すると思っている方も少なくないかもしれません。また、生理があるうちは子供ができると思っている方もいるかもしれません。(先ほどの人工妊娠中絶の表でも数は少ないながら40歳以上、50歳以上の中絶例がある=その歳で妊娠した人がいる ので、世の中わからないものです)

しかし、はっきり言いますが一般的にはその考えは間違いです。

毎月妊娠を希望して適当にSEXをしていれば不妊でない夫婦では1年でおおよそ90%以上が妊娠に至ると考えられます。この90%という数値は「累積妊娠率」というものです。(1回の排卵あたり妊娠率が最大で20%と考えれば、20%×5回=100%となるので、理論上は最低5回の排卵で妊娠することになります。つまり不妊でない夫婦は避妊をやめてから最短半年以内に妊娠するということになります)

しかし、実際はそんな単純な話ではないんです。

日本産科婦人科学会の不妊症の定義は1年となっています。不妊でない夫婦の1年間の累積妊娠率が90%以上というところを根拠としています。つまり避妊をやめて適当にSEXをして、1年経っても妊娠しない残りの10%が不妊症ということになります。

避妊をやめて1年で妊娠しない場合=不妊症です。

そしてこの

累積妊娠率は年齢とともに大きく低下し40歳で約5%

となります。つまり、40歳で何も治療をしないで自然妊娠できる可能性は1年間続けて約5%と言うことになります。この数値は年々下がりますので、1年経って妊娠しないで41歳になったら、5%以下、2年経って42歳になったらさらにもっと下がりますので、

40歳の方の自然妊娠の期待値はおよそ5〜6%程度に収束する

のではないかと考えられています。不妊症=加齢症の側面が強いとされるのは女性の妊娠率が年齢による影響を多大に受けてしまうからです。つまり、

年齢が若ければ不妊で悩むはずなんてなかったのに・・・

といえる方があまりにも多いのが実情なのです。

神はサイコロを振ることもある?→あると思います。

アインシュタインの有名な言葉に”神はサイコロを振らない”というのがあります。(”神はサイコロを振らない”は、生物や人間も含めた宇宙の中のあらゆる現象はサイコロを振るような曖昧不確かなものではなく全ては決まった物理法則の中で動いているというような意味らしいです。(解釈に間違いがあるかもしれませんがその際はご容赦ください) この理論に従いますと、大変な拡大解釈かもしれませんが、我々のこの宇宙の全ての出来事は規定事項であり、全て最初から決まっているということになります。しかし、実際には、

不妊症に関する多くの現象が”神がサイコロを振る”ようなものである

ように思われます。排卵にしろ、受精にしろ、精子の状態にしろ、着床にしろ、人間の体の中で行われる妊娠にまつわるあらゆる現象は必ずしも確実性の下に動いているものではないからです。(先月D14排卵だったから今月もD14とは限らないし、先月排卵した卵子の質がよいから今月のものもよいとは限らないし、先月受精したから今月も受精するとは限らないし、夫の精子の状態がいつでも良好とは限らないし、そもそも着床の過程などは目に見えて確認できるものではないので、先月と今月が同じ状態で進むのかどうかなんてさっぱり分かりません。また、現代の科学技術ではまだ解明されていない人体の神秘のようなものもあると思われます。)

つまり、

不妊治療とはこのような不確実性の高いもの、正体の分からないものに果敢に挑んでいくようなものなのです。

(と、いうふうに私は認識しています)なので、一つだけ言えることは、

a5d8fe32不確実性の高い状態を1日でも早く、少しでも確実性の高い状態に持っていくためには、少しでも早く、より確実性の高い治療(体外受精)に移行することだと確信しています。(体外受精が100%確実性のある治療という意味ではないです。ただし、一般不妊治療と比べるとその確実性が高いことは確かです)。特に高齢の患者様、残された時間の少ない患者様では、不確実な治療(=タイミング指導)に無駄な時間を費やすことが果たして得策なのかどうか・・・? そもそも不妊でなければ5回の排卵のうちには累積妊娠率がほぼ90%以上に達するのだから、この段階で妊娠していない患者様(=真の不妊症と言える状態の患者様)に対してはそれ以上のタイミング法は果たして意味のある治療と言えるのかどうなのか?・・・という思いを抱きながら日々の診療を行っています。(アインシュタインを否定するつもりは毛頭ありません)

妊娠を希望される不妊症の患者様に対して行う治療が不妊治療ですが、他の多くの医療行為と同じかそれ以上に不確実性の高い医療と言えます。結果が約束されている訳ではないからです。しかし、そのような中でも、やはり一人でも多くの患者様にご自身のお子様を抱いていただきたいと考えています。そして、これから先の人生を考えれば、できるだけ早い方がよいと思います。少なくともお子様が成人されるまでは存命でいただきたいという思いがあります。(子の養育は親としての責任と考えます)

不確実性の中にあっても、できるだけ神様にサイコロを振らせない医療(確実性の高い医療)を目指して行きたいと考えています。

関連記事として以下の記事もご参照ください↓↓

排卵日以外のSEXが妊娠の可能性を高める

 

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