月経周期の把握は治療方針決定の重要な一歩です。|クリニックブログ

クリニックブログ

Clinic Blog

2017.09.07

不妊症

検査

治療

月経周期の把握は治療方針決定の重要な一歩です。

正常月経周期とは?

正常月経周期は25日〜38日の間隔と定義します。24日以下の周期で月経が来る場合は頻発月経(ひんぱつ)、39日以上の周期で来る場合は稀発月経(きはつ)と定義されます。多くの方では28日前後の周期で月経が定期的に来ますが、その月々の体調の変化、ストレス、環境の変化等による排卵時期のずれなどにより必ずしも毎月全く同じ周期で次の月経が来るとは限りません。(2、3日程度早まったり、遅れたりは通常よくありますし、上記の周期間隔を逸脱しない限りは必ずしも異常ではありません。)最近、月経予測のスマホアプリなどを頻用されている患者様を多く見かけます。あれはあくまでもこれまでと同じ周期で月経が来ると仮定した場合の予測であって、必ずアプリ通りに次の月経が来ると保証されているものではないです。アプリを元に予測した月経発来日とずれたことでかなり不安になられる方がいますが、周期が2、3日程度ずれることはよくあることとご理解下さい。また、アプリサイトを元にした排卵日予測を信じている方も多いのですが、排卵日が保証されているというものでもありません。(時々患者様から、”私はこの日に排卵するので、この日にヒューナー検査を予約したい”とリクエストをいただくことがあります。それがピッタリ当たっている方がたまにいたりするので、驚かされます。どちらかというとハズレの方の方が多いですが・・)

月経周期で何が分かるか?

頻発月経とは24日以下の周期で月経が来る方です。卵巣機能が低下しているという証でもあります。卵巣機能が低下するとなぜ月経周期が短くなるのかと言うと、下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)の分泌が亢進するためです。卵巣機能が低下(=卵胞ホルモン=エストロゲンが低下)→フィードバックが働き、下垂体が卵巣に対してより卵胞を育てよという命令を出し続ける(=FSH、LHの上昇)→卵巣にまだ反応する胞状卵胞が存在すれば、これらが高FSH、高LHの影響で発育する→卵胞発育が早まり、排卵が早まる→月経周期が短くなる・・・という理屈です。排卵が早まると、子宮内膜の状態が妊娠に適した安定した状況になる前に排卵してしまうため、着床がうまく行かなくなります。(月経がまだ完全に終わりきらず、出血が続いているぐらいの時期にもうすでに排卵してしまうというようなこともあります。こういう方では、タイミングや人工授精をやってもうまくいかないということになります)

一方、稀発月経とは39日以上の周期で月経が来る方です。排卵障害や無排卵周期の可能性が考えられます。排卵が遅れたり、排卵自体がうまくいかないと次の月経が遅れる原因になります。これは、月経がエストロゲンとプロゲステロンという2つのホルモンによって調節されるためです。卵胞が育つとエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が盛んとなり、子宮内膜が厚くなります。そして、ある程度卵胞が発育して排卵をすると、今度は排卵後の黄体からプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。黄体ホルモンは子宮内膜の維持、妊娠の維持に働きますが、排卵後の黄体の持続期間はおよそ2週間程度とされています。排卵して黄体ホルモンが出始めると、およそ2週間の間、それまで厚くなった子宮内膜が維持されますが、妊娠しなかった場合は黄体の退縮とともに黄体ホルモンが減少、維持できなくなった子宮内膜が剥がれて月経が起こります。つまり、排卵していつ黄体ホルモンが出始めるかが、次の月経開始時期を規定するということです。なので、月経が遅れる、月経が来ない(妊娠を除く)理由は、排卵が遅れたり、排卵自体がうまくいかずに十分な量の黄体ホルモンが分泌されないということに起因します。

このように、月経周期を見ることである程度の卵巣機能の状態や排卵の有無、排卵がうまくいっているかどうかなどが予測できます。

月経周期と妊娠との関係

頻発月経の方は、卵巣機能が低下しているということなので、当然妊娠には不利です。AMH(高ミュラー管ホルモン)を測定すると低値になることも多く、AMHと合わせることでより正確な卵巣の状態が把握できます。このような方では先ほども述べましたが、子宮内膜が十分準備できる前に排卵してしまう(月経がまだ終わりきらないぐらいで排卵する人もいる)ので、なかなか妊娠しません。一つの対策としては、排卵誘発剤のclomiphene(クロミッド)を使うことで排卵を遅らせる(より適正な時期に排卵させる)ことが可能です。(clomipheneは排卵誘発剤なのに、なぜ排卵が遅れるのか不思議に思う方もいるかもしれませんが、clomipheneには抗エストロゲン作用があります。排卵を引き起こすLHが分泌されるためのポジティブフィードバックがかからないので、卵胞発育を促すと同時に排卵抑制効果もあります。余談ですが、体外受精でマイルド法でclomipheneを使う場合は、この排卵抑制効果を利用して、最適な採卵時期を狙うことにも利用します)

逆に、稀発月経の方は排卵自体が遅れたり、場合によっては無排卵周期になりますので、当然妊娠には不利です。一般的には多嚢胞性卵巣(PCOS)の方にこのようなケースが多いです。(もちろん絶対というわけではありません)。対策としては適切に排卵をさせる目的でclomipheneやレトロゾール(フェマーラ)などの排卵誘発剤を使用します。軽度の排卵障害の方では内服薬で排卵する方もいますが、重度の排卵障害(重症の多嚢胞性卵巣)の方では、内服薬に対する反応が悪く、ゴナドトロピン療法(注射の排卵誘発剤)が必要になるケースもあります。(肥満に排卵障害を伴うケースでは適正体重の維持で排卵ペースが正常になる方もいます。)

このように、月経周期が短すぎる(頻発月経)、月経周期が長すぎる(稀発月経)は妊娠にとっては不利になりますが、適切な治療によって妊娠が望めるケースもよくあります。

基礎体温よりも自分の周期の把握を重視(当院の場合)

不妊治療を希望して婦人科を受診したら、まずは基礎体温の測定を指示された・・・というケースを時々耳にします。(当院にいらした患者様で別の産婦人科で3ヶ月ぐらい付けてから出直してください・・・と言われたというような方が実際におられました)

基礎体温はたしかに、排卵の目安としてある程度有用な情報は得られますが、当院ではさほど重視していません。(基礎体温をつける行為自体が非常にストレスになったり、高温低温を繰り返すのを見て一喜一憂したり、そもそも夜勤などやっていて付けること自体が不可能または現実的ではないという方が非常に多いためです。)それよりも、ここ数カ月程度の月経周期がどうだったか?ということを割と重視しています。(特にここ3ヶ月ぐらいの月経周期が頻発月経に該当するような短い方は卵巣機能低下が懸念されますので要注意です)。また、もともと月経周期が長い=2、3ヶ月平気で月経が来ないこともあり、それが普通と考えている方もいますが、これは普通ではなくて、異常です。

頻発月経の方では、ひどい方だと、1月に2回月経が来る(月始め、月末)のような方もおり、こういう方は大体において貧血、低フェリチンであったりします(出血の頻度が多くなるためだと思います)。また、稀発月経の方は、逆に多血(Hbが高い)やフェリチン高値の方が多いのですが、肥満を伴うPCOSの方などは、別の意味で不妊のリスクファクターでもあります。

結論

このように、月経周期を読み解くことで、その人の卵巣の状態(卵巣機能)、排卵の有無、など多くの情報が得られます。問診票に月経周期の記載をお願いしていますが、空欄の方がおられます。治療方針決定に際して重要な情報が得られますので、ぜひ、正確な月経周期の把握に努めていただけたらと思います。(毎日測る基礎体温と比べれば周期を把握するだけであれば、ストレスにはならないでしょうし、夜勤をしていても把握は可能だと思います)。当院では基礎体温の測定は必須としておりません。

その他診療

Other

  • 佐久平エンゼルクリニック the Beauty
    佐久平発ファスト美容クリニック|佐久平エンゼルクリニック
  • 華育生殖医学センター
    華育生殖医学センター
  • 孕醫生殖医療センター
    孕醫生殖医療センター
  • よくわかるNIPT・出生前診断
    よくわかるNIPT・出生前診断