タイミング法で妊娠しない時に考えること|クリニックブログ
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2017.09.09
不妊症
治療
タイミング法で妊娠しない時に考えること
タイミング法に関する誤解
タイミング法について、誤解されている方がおられます。タイミングを合わせれば必ず妊娠できると思っている方もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。不妊でない夫婦が、特に避妊をせずに普通にSEXをした場合の妊娠率はおおよそ10%~20%程度と言われています。生物学的に考えると1回のSEXあたりの妊娠率は低い方です。(ちなみにねずみは1回のSEXでほぼ100%妊娠するという説があります。ねずみ算というものがあります。ねずみが爆発的に増えることの例えでも使われます。ねずみは短命な分、1回の繁殖で多数の子孫を効率的に残す必要があるのでこのような生物学的な仕組みが出来上がっていると推測されます)。
ある月経周期の中で、妊娠しやすい日があって、同じ回数性交渉を持つのであれば、よりその日に合わせた方が効率的かつ効果的であるというのがタイミング法の基本的考え方です。タイミング法=治療と考えておられる方も多いかもしれませんが、実際のところは治療というよりは、この辺で排卵する可能性が高いので、効率的に妊娠をねらうならこの辺でSEXをすれば妊娠の可能性が少しは高まりますよ・・・というのがタイミング法ということになります。(どちらかというと治療というよりはアドバイス的なものと思って下さい) タイミング法をするにあたって、もともと排卵障害(排卵がうまく行かない)があって、薬を使って排卵をしやすい状態にするのは、排卵障害に対する治療と言えるかもしれません。また、タイミング法ではなくて、卵子と精子が出会う可能性を高めるために、人工授精や体外受精などを行ったとしたら、それは治療になると思います。(人工授精や体外受精はそもそも受精の可能性を高めるために行いますので、具体的な治療ということになります)
タイミング法を始めたカップルの中には、セックスが楽しくなくなってセックスの回数自体が減ってしまったり、強制的にSEXをさせられることによって、男性のEDを引き起こしてしまうなどのトラブルもあります。タイミング法で大切なのは、排卵日を正確にねらうということよりは、排卵日周辺での性交頻度を上げることだと言われています。あまりにも排卵日を意識しすぎてSEXの回数が減ってしまってはかえって妊娠の可能性を遠ざけることになり本末転倒なのです。
患者様にはいつも、
「できるだけ多くの回数、SEXしてください」
ということを日々伝えています。治療のためのSEXと考えれば、半ば強制的で、嫌でもしなければならないというプレッシャーになりますが、何となく気持ちが高まってやりたいからやるという、自然なSEXならプレッシャーにはなりませんし、何よりもそれが自然なことだと思います。なので、タイミング法=治療という考え方はこの際捨てていただいてもよいかと思っています。
タイミング法で妊娠しない時に考えること・・・何かを見落としてはいないか?
タイミング法は治療というよりもアドバイスということをお伝えしました。治療ではないということは、タイミング法で妊娠するためには、妊娠に必要な基本的な要素(卵子、排卵、卵管、精子、受精、着床)が全て正常であることが前提となります。(妊娠に必要な基本的要素のどこかに異常があれば、そこを治療ないしは解決しないと妊娠できないということになりますので、そういうところに何かの異常があって、そこに対処していく過程、つまりここから先がいわゆる不妊治療ということになります。)
妊娠を妨げる具体的な要因には、機能的な問題(精子が正常か?、卵管は正常か?、子宮は正常か?、卵子と精子が出会って受精しているか?)や年齢的な問題(卵子、精子の質の問題)が挙げられます。よくある盲点の一つとしては、男性不妊の検査や、卵管の検査をこれまで全く受けずにひたすらタイミング法にトライしているという方がおられます。不妊の原因は男女ともおよそ半々と言われており、さらに概ね35歳ぐらいを過ぎてくると男女ともに年齢の影響が加わって来ます(卵子の老化はこれまで盛んに言われてきましたが、最近は精子も加齢とともに老化することが分かっています)
タイミング法でなかなか妊娠しないと悩んでいらっしゃる方、今あなたが妊娠するために必要な最適な治療法がタイミング法なのかどうかは、一度冷静に考えてみる必要はありそうです。もちろんそのためには基礎的な検査を受け、不妊症の原因をしっかり理解しておくことは必要です。
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