体外受精について|クリニックブログ
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2017.09.10
不妊症
体外受精
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治療
体外受精について
体外受精を行う意義
体外受精とは採卵によって体の外に取り出した卵子と予め用意した精子を体の外で受精させ、受精卵を子宮内に確実に戻すことで妊娠率を上げる治療法です。妊娠に絶対不可欠な要素として、卵子(そもそも卵子がちゃんとあるかどうか?)、受精(卵子と精子が出会って受精卵が出来ているか?)、着床(受精卵が適切な時期に子宮内膜上に存在するか?)というものがありますが、体外受精ではこの全ての過程を確実に追うことができます。(タイミング法、人工授精では、卵子と精子が出会って受精をしているかどうかや、受精卵が確実に子宮の中にあるかどうかまでを確認することはできません)
不妊の原因の中に、卵管因子(卵管がつまっているために卵子と精子が出会うことが出来ない、または受精卵が子宮まで運ばれない)、排卵因子(排卵がうまく行かない)、男性因子(精子の数や運動性に問題があって卵子にたどり着けない)、原因不明不妊(検査で調べられる範囲に異常が見つからない=ピックアップ異常など)、というのがありますが、体外受精を行うことでこれらの原因に対処することが可能になります。また、特に原因不明不妊のケースでは、体外受精を行うことで、これまでに不妊であった理由が分かるという側面もあります。(排卵も順調で、ヒューナー検査も問題なく、精子も特に悪くないのにこれまでタイミング法や人工授精でなかなか妊娠できなかった方が、例えば体外受精で妊娠出来たとしたら、ピックアップ異常などそもそも卵子と精子が出会っていなかったのではないか?ということが考えられ、これまで分からなかった不妊の原因についての追求ができる可能性が出てくる訳です) なので、体外受精は治療としての側面と検査としての側面を合わせ持つということが言えます。
体外受精の治療効率
体外受精の成功率は、年齢にもよりますが、およそ30-50%といわれています。不妊症でない方の自然妊娠の確率が10~20%であることを考えると、それよりも高い確率で妊娠することになりますので、この段階に至ってようやく「治療」呼べる水準に達したと考えることもできます。体外受精のことを高度生殖医療または生殖補助医療(ART)とよぶことがあります。自然妊娠の確率よりも高い妊娠率をたたき出す治療という意味で高度生殖医療と呼べるのかもしれません。
体外受精の大まかな流れ
体外受精は大きく、卵巣刺激、採卵、受精、胚移植と言う段階で構成されます。これにオプションとして凍結、融解というステップが入る場合があります。
卵巣刺激
排卵誘発剤を使って採卵のための卵子(卵胞)を育てる段階です。体外受精ではなるべく1回の採卵で効率良く質の良い卵子を回収するために、卵巣刺激法を工夫して行います。また、最近では自然周期と言って、排卵誘発剤を使用せず、自分自身の力で育ってきたたった1個の卵子を回収して治療するという方法も行われたりします。自然周期は日本で比較的多い方法ですが、海外では効率性を重視する観点から卵巣刺激を行う方法の方が主流です。
採卵
卵胞に針を刺して卵子を回収することです。細い針を使って卵胞を1個ずつ穿刺して卵胞液を吸引し、中に含まれる卵子を確認します。卵子が入っていない空胞という場合もあります。卵子は非常にデリケートでストレスに弱いため、採卵専用の吸引器を使って過剰な圧をかけないように丁寧に回収することが重要です。
受精
体外に取り出した卵子と精子を受精させる段階です。専門用語で媒精とも言います。精子と卵子を受精させる方法には一般の体外受精(cIVF=コンベンショナルIVF)と呼ばれる方法と、顕微授精(ICSI=イクシー)と呼ばれる方法があります。cIVFは、回収した卵子に、運動性の高い選別した精子をふり掛け、卵子と精子が自然に受精するのを待つ方法です。通常は、質のよい卵子に質のよい精子が出会うと自然に受精が成立します。(自然妊娠の仕組みとほぼ同じです)。精子の数や運動性に特に問題のない方ではcIVFを主に選択します。一方、ICSIは、1つの卵子に1匹の良好と思われる精子を直接注入して受精をさせる方法です。顕微鏡を見ながらこの作業を行うため顕微授精と言います。精子の数や運動性が不良で、自然にふり掛けただけでは受精が成立しないと思われる場合にこの方法を選択します。なので、本来、顕微授精が必要となるケースは男性因子(男性側に不妊の原因があるケース)の場合です。
胚移植
受精卵を子宮内膜に移植し着床させることを目的とします。胚移植には、採卵と同一周期で行う新鮮胚移植(取った卵子を精子と受精させ、受精卵を採卵の数日後に子宮の中に戻すこと=凍結をしない)と、受精卵をいったん凍結して保存させた後、子宮の状態を整えて、条件のよい周期で子宮に戻す凍結融解胚移植という2つの方法があります。一般的には凍結融解胚移植の方が新鮮胚移植よりも妊娠率が高いと言われており、最近は特に凍結融解胚移植が体外受精における主流となってきています。(当院でも原則的には凍結融解胚移植をスタンダードプロトコールとして採用しています)
これから体外受精を視野にいれられる患者様へ
体外受精は不妊治療の方法として安全性や治療効果が確立されたものとなっています。最新の報告では、世の中の出生児のおよそ5%(20人に1人)は体外受精による妊娠といわれており、それだけ広く一般にも普及してきているとも言えます。しかし、妊娠一般について言えますが、体外受精も高度生殖医療とは言え、年齢が上がるとその成功率も低下します。また、治療の過程は若干複雑で、安心して治療に臨むためには患者様自身の治療に対する理解も不可欠ですので、これから体外受精を視野にいれる可能性のある方は予めしっかりと情報収集をしておくことも必要ではないかと思います。
(当院では毎月1回の頻度で体外受精説明会を開催しています。当院おかかりの方以外でも参加可能です。ご希望の方は当院受付へお気軽にお申し付け下さい。予約制になります。)
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