妊娠できるかどうかは治療してみないと分からない|クリニックブログ
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2017.10.22
不妊症
体外受精
治療
妊娠できるかどうかは治療してみないと分からない
妊娠の可能性を知ることは難しい
不妊治療は全く初めてという患者様からいただく質問の中で、お答えするのが難しい質問が ”自分が妊娠できるかどうか知りたい” という類の質問です。敢えてお答えするとしたら、 ”妊娠できるかどうかは治療してみないと分からないです” となります。
日本産科婦人科学会の定義では、通常の性生活を1年間続けても妊娠しない場合は不妊症と定義します。ところが、通常の性生活という表現は実は非常に曖昧で、どこからどこまでが通常の性生活なのかという決まりはありません。(月に1回のSEXであっても、週に4回以上のSEXがあっても考えようによってはどちらも通常の性生活と言えなくもないです)
ある夫婦の物語
妻の年齢が40歳の、とあるご夫婦が来院されました。不妊治療の経験はなく、”自分が妊娠できるかどうかを知りたい” という希望で来院されました。病歴を伺うと、結婚約10年、その間、特に避妊はしていないが、妊娠を意識して特にタイミングを合わせたこともない、というものでした。この夫婦について、我々専門医は普通に不妊症と考えますが、患者様ご夫婦には特別病識がなく(不妊症という認識はなく)、とりあえず検査をして妊娠できるかどうかを知りたいというご希望でした。不妊症基本検査、卵管造影検査、精液検査を行い、AMHは年齢相応の数値、卵管造影検査では両側共に疎通性あり、精液検査は可もなく不可もなくの結果、でした。検査結果の説明を行い、これといって特に検査上は異常が見られませんが、さてどうしますか?とご希望を伺ったところ、じゃあ、しばらく市販の排卵検査薬を使って、自分たちでタイミングを合わせてみます、とのお返事でした。この時の私の対応、そしてこの時のこのご夫婦の選択が正しかったかどうかは、その後の物語を見るまではだれにも分かりません。 果たしてこの結果を持って、このご夫婦が将来子供を持つことが可能と言えるのかどうか・・・? 正解は、だれにも分からない・・ではないかと思います。(このストーリーは当院で実際にあったノンフィクションです)
子供を持つ?もたない? 将来の人生設計は早めに
一般的によく言われるのは、年齢が若いほど卵子の質は良く、卵子の質が良いほど妊娠しやすいということです。妊娠しやすさの指標としては、AMHより年齢の方が優れています。(AMHはあくまでも卵巣予備能を評価するための一つの指標であって、妊娠可能性を調べる検査ではないというところを誤解しないでいただきたいと思います)。40代の方は、残された治療にかけられる時間を無駄にしないためにこれまでに治療歴がなくてもすぐに体外受精を検討した方が子供を持てる可能性が見込める・・・という意見もあります(もちろんこの考え方には賛否あります)。もちろん、20代の若い夫婦であっても、卵管因子や男性因子など、卵子の質以外の部分で妊娠しにくい要素を持っている夫婦もいます。夫婦でよく話し合って、将来子供を持ちたいと決めたら、およそ1年間の性生活があっても妊娠しない場合は医療機関に相談した方がよいと思います。受診先は何も敷居の高い不妊専門クリニックでなくてもよくて(不妊専門クリニックの敷居をできるだけ下げて患者様が受診しやすいようにしていくのが我々の責務ではありますが)、一般の産婦人科でもよいと思います。一般の産婦人科で保険診療の範囲内で一般不妊治療をじっくり受けてみて、それでも妊娠しない場合は多少費用がかかっても体外受精などの高度生殖医療を早い段階で視野に入れていく(その段階で不妊専門クリニックに転院する)という考え方は決して間違いではないと思います。もちろん夫婦で高度生殖医療までは考えないというふうに話し合って決めているというのも考え方としては間違いではありません。将来夫婦の子供を持ちたいのか?、持つとしたらどこまでの治療を行うのか?、かける費用はどのくらいまでにするのか?、どういう人生計画にしていくのか?、結婚した段階でそんな先のことまで考えてはいないというご夫婦もおられるかもしれませんが、結婚年齢が上がった現代社会においては、これまで以上に結婚後の妊娠適齢期が非常に短い夫婦も多いですので、早めに人生設計を決めておくというのは大事な考え方ではないかと思います。
データが示すもの(日産婦ART統計)
日本産科婦人科学会のART統計です(全国の不妊治療施設から毎年上げられる体外受精の治療成績について学会が集計し公表しているものです)。40歳女性の総治療あたり妊娠率(青)はおよそ14%ぐらいになっています。40歳女性の総治療あたり生産率(黄緑)は8%程度(10%以下)であり、40歳女性の総妊娠あたりの流産率(紫)は16%程度となっています。このデータはあくまでも統計なので全ての人にこれが当てはまる訳ではありませんが、自身の年齢と今後の不妊治療のあり方を考える上での参考になるものではないかと思われます。(体外受精説明会でもよく話をしますが、40歳女性が体外受精で子供を持てる可能性が約10%ぐらいと言われています。)
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