サプリメントに関する話題(ビタミンDとの関係からの考察)|クリニックブログ
クリニックブログ
Clinic Blog
2017.11.28
不妊症
検査
治療
サプリメントに関する話題(ビタミンDとの関係からの考察)
男性もサプリメントを飲むべきか?→不足している栄養素は補うに越したことはない。
不妊治療を始めた夫婦で、女性側が熱心にサプリメントを服用しているケースは比較的見られますが、男性が熱心に服用しているケースはそう多くはない印象です。(当院では体外受精を始める夫婦では、必ず夫の方にも治療準備期間に必要なサプリメントの服用を行っていただいています。もちろん、そんなものは絶対に飲まない・・・と頑なに拒否される方に対しては無理強いしません)
男性側にもサプリメント摂取が勧められる理由について、ビタミンDとの関連で述べたいと思います。(食品の中でビタミンDが十分量確保できるものは限られています。ビタミンDの殆どは実は体内合成で皮膚から合成されますが、そのためには十分な紫外線暴露が必要であり、現代人の生活スタイルではその達成がなかなか難しい方が実は多い)
まず、ビタミンD欠乏状態では造精機能障害が起こるとされています。ビタミンDは骨形成にも重要なホルモンですが、カルシウムとリンの代謝に重要な働きをもつとされます。マウスを使った実験では、ビタミンD欠乏マウスは造精機能低下を引き起こすが、カルシウム、リンの多い餌を与えると精子が回復することが分かっています。ビタミンDの関係するカルシウム、リンの代謝系が造精機能になんらかの役割を担う可能性が考えられています。ヒトでは、ビタミンDの受容体が精巣、前立腺、精子などに存在することが分かっており、特に男性不妊患者の精子ではビタミンDの代謝酵素が有意に少ないなどの指摘があります。造精機能に関わる臓器にビタミンDの受容体が存在することは、なんらかの直接的な作用が関係している可能性を示唆しています。ビタミンD投与により、精子運動率が改善したとする報告も存在します。
不妊症の女性にとって、ビタミンDが妊娠率を高めるということは比較的認知されるようになってきました。男性不妊患者にとってのビタミンDの有効性についてはこれまであまり論じられてきませんでしたが、この機会に男性不妊患者様へのビタミンD投与が精液所見の改善に有効であることを述べておきたいと思います。
ビタミンDの季節性変動について(季節に応じた摂取量の調整が推奨される)
一般的に体内のビタミンDは食物由来が約20%、体内合成が約80%程と言われています。ビタミンDは紫外線を浴びることで皮膚でコレステロールから合成されます。ビタミンDはコレステロールが原料となっています。食品中のコレステロールを安易に減らすことやコレステロール=悪玉という発想自体はこの際捨てていただいてもよいと思います。そもそもコレステロールに善玉、悪玉という概念自体が間違っています。コレステロールは性ステロイドホルモンの原料としても重要です。世の多くの女性と同じように、近年男性もインドア派が増えてきており、紫外線を浴びる機会が減っています。ビタミンD欠乏の男性が多くなっている理由です。(世の男性の多くがビタミンD欠乏という認識が必要です) 不足するビタミンDを上手に増やすためにもサプリメントの有効利用が勧められます。昨今の男性不妊患者の増加はビタミンD欠乏男性の増加とも無縁ではないかもしれません。また、海外からの報告では、体外受精の治療成績には季節性の変動があり、冬場より夏場の方が妊娠率が高いと言われています。夏の紫外線が血中ビタミンDの増加を促すためではないかとも言われています。女性でもそうですが、男性の場合も血中ビタミンD濃度は冬場の方が夏場より低くなると言われています。なので、冬場こそビタミンDサプリメントの有効活用が必要ではないかと思います。
わたくし自身の経験から(被験者=実はわたし)
血中ビタミンDの指標として25OHビタミンDを測定します。一般的には血中25OHビタミンD濃度が、<20ng/ml=不足、20〜30ng/ml=不十分、30<ng/ml以上=充足と判断されます。ちなみにとある39歳男性の例ですが、ビタミンD3サプリメント5000IU〜10000IU/day(国内販売の市販サプリメントの推奨摂取量よりは遥かに多いと思われる量です)をほぼ毎日摂取している状態で血中ビタミンD濃度30〜40ng/ml(過不足なく十分と判断される至適な血中濃度)を維持できています。(至適血中濃度を維持するため、紫外線暴露の低下する冬場は夏場よりも意識的に摂取量を増やしています。)(DHCやnaturemadeなどの国内販売の市販サプリはだいたいビタミンD3として1000IU程度のものが多いとされていますが、これらを毎日服用している方でも血中25OHビタミンDを測定すると不足または不十分と判定される数値の方がおられます。服用したものが全て吸収されるわけではないこと、代謝の違い、紫外線暴露など純粋なサプリメント摂取以外の要素も考慮する必要があります。サプリメント摂取量と実際の検査値には乖離があるという認識が必要です。推奨摂取量=その人にとっての十分量とは限らないということにもなります。とある39歳男性とは、まさにわたくし自身のことです)
いつも外来で話すことですが、不足する栄養素があるならそれらを上手に補った方が人間に本来備わった妊娠力をフルに発揮できると思います。逆に栄養素に不足があると本来妊娠力の備わった方でもその力を十分に発揮することはできないと思います。巷にはサプリメントが溢れ、手軽に不足する栄養を補うことが出来ます。今は大変便利な世の中です。もちろんサプリメントの質はピンからキリですので、厳選された原料から作られた良質のサプリメントに出会う必要はあると思います。
おすすめの関連記事
-
不妊症
治療
摂取脂肪酸の種類と精子運動率の関係
-
不妊症
体外受精
治療
妊娠できるかどうかは治療してみないと分からない
-
不妊症
right or left ?
-
不妊症
検査
治療
精子にとって良い油と悪い油
-
不妊症
体外受精
治療
一見地味なことの積み重ねが大きな結果を生むという話
-
クリニック・スタッフ
不妊症
料金・補助金
治療
治療に対する明確なビジョンを持ちましょう。
-
体外受精
治療
設備・技術
顕微授精実施時の紡錘体観察について
-
不妊症
体外受精
当院の治療実績
治療
設備・技術
タイムラプスによる卵の評価