イノシトール、ミオイノシトールに関する話題|クリニックブログ
クリニックブログ
Clinic Blog
2017.12.17
不妊症
体外受精
治療
イノシトール、ミオイノシトールに関する話題
最近ミオイノシトールに関するお問い合わせをいただくことが多いため、再度この話題について触れてみたいと思います。
イノシトール、ミオイノシトールについては、当院のこちらのブログも参照ください↓↓
イノシトールとミオイノシトールの違いについて
ミオイノシトールはイノシトールの9種類ある異性体の一つです。(わかりやすい例えとしては、トヨタ車の中に、カローラ、bB、Vitz、プリウス、ノア、VOXY・・・のような色々な車種がある、というような理解でよろしいかと思います。イノシトール=トヨタ車 ミオイノシトール=プリウス というような感じです)
不妊症患者(特にPCOS)様に対するミオイノシトールの有効性については多方面から様々な報告があります。
Fertil Steril. 2009 May;91(5):1750-4. イタリア
ICSIを行ったPCOS患者(刺激法はGnRHロング)で、4g/day(2gを1日2回)のミオイノシトール+葉酸投与を受けた群と、ミオイノシトールを添加せず、葉酸のみ投与を受けた群をRCTで前方視的に比較したところ、ミオイノシトール添加群では、卵巣刺激に要したトータルのFSH投与量が少なく、卵巣刺激に要した日数が短く、採卵決定時のピークE2が低く、そしてMⅡ卵子(成熟卵子)獲得率が、ミオイノシトール非添加群に比べて高かったという結論です。(体外受精の際のトータルFSH投与量が少なく、採卵決定までの日数が短いということは、卵巣刺激に対する反応性が上がるということです。採卵決定時のピークE2が下がるということはOHSSのリスクを下げるということにもなりますし、何よりMⅡ卵子(成熟卵子)獲得率が上がるというのは体外受精の成功率が高まるということにもなります)ミオイノシトールはインスリン抵抗性の改善効果があるとされており、PCOSの病態の本質はインスリン抵抗性にあるとされていますので、特に妊娠を目指すPCOS患者様においてはミオイノシトールはおすすめできるアイテムなのではないかと思います。(しかし、1日4gのミオイノシトールは結構な量なんですね。一般的なサプリメント(1カプセル500mgタイプ)で1日8粒ぐらい飲まないとこの量に達しないのです)
ミオイノシトール
もう1編論文を紹介します。
N Engl J Med 1999; 340:1314-1320April 29, 1999 アメリカ
Ovulatory and Metabolic Effects of d-Chiro-Inositol in the Polycystic Ovary Syndrome
こちらの論文はだいぶ古いNEJMですが、PCOS患者にd-Chiro-Inositol(=d-カイロイノシトール=イノシトールの9つある立体異性体の一つ)を投与したところ、インスリン感受性の向上、排卵率の上昇などが見られたというものです。こちらもイノシトール群がインスリン抵抗性の改善効果やPCOS患者での排卵改善効果に寄与することを示していると思われます。
D-カイロイノシトール
イノシトールには9種類の立体異性体が存在しますが、その中で最もメジャーでサプリメントとしてよく出回っているのがミオイノシトールです。通常、”イノシトール”の名称でサプリメントとして販売されているものの多くはミオイノシトールであると考えていただいてよいかと思います。上記のNEJMの論文ではカイロイノシトールを投与した話題が出ていますが、あまり聞きなれない名前だと感じた方が多いのではないかと思います。ミオイノシトールには他に8人の兄弟がいて、そのうちの一人がd-カイロイノシトールと考えてもよいかと思います。(カイロイノシトールにはL-カイロイノシトールというL体も存在します) トヨタ車の中で一番メジャーなのがプリウスというのと同じように、イノシトールの中で一番メジャーなのがミオイノシトール・・・というような理解でよいのかと思います。
おすすめの関連記事
-
不妊症
治療
卵管が片側しかない場合についての考え方
-
体外受精
治療
設備・技術
顕微授精実施時の紡錘体観察について
-
体外受精
設備・技術
最新型タイムラプスシステム導入について
-
不妊症
治療
摂取脂肪酸の種類と精子運動率の関係
-
不妊症
検査
治療
第2子不妊治療について
-
不妊症
体外受精
治療
妊娠できるかどうかは治療してみないと分からない
-
不妊症
体外受精
検査
治療
甲状腺機能低下症と不妊症、不育症の関係
-
不妊症
体外受精
治療
体外受精後の子宮外妊娠について