名医? 迷医? 黄体機能不全の診断|クリニックブログ

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2018.03.10

不妊症

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名医? 迷医? 黄体機能不全の診断

黄体機能不全 これが診断できたら名医か迷医です。

黄体機能不全・・・不妊治療をされている方なら一度は聞いたことがある”病名”ではないかと思います。日本における教科書的な診断基準として、

①基礎体温の高温相が12日未満

②黄体期中期の血中プロゲステロン値が 10 ng/ml 未満

③子宮内膜日付診の異常――

のうちいずれか1つでも該当する場合を黄体機能不全と診断する。と言う古〜い言い伝えがあります。

 

一方、いわゆる”黄体機能不全”に関して、米国生殖医学会(ASRM)は以下の見解を発表しています。↓↓

Current clinical irrelevance of luteal phase deficiency: a committee opinion

要約しますと、

1、いわゆる”黄体機能不全”は様々な医学的状況で発生しうる(甲状腺機能異常、高プロラクチンなど)

2、黄体機能不全を診断しうる信頼できる検査は存在しない(基礎体温、尿LHテスト、黄体中期プロゲステロン検査、子宮内膜組織診、これら全ては黄体機能不全を診断しうる検査とはなり得ない)。よってこれらの検査のいずれも推奨されるものではない。

3、一般不妊治療において妊娠率をあげるための黄体機能不全の治療法というものはない

4、ART周期における黄体ホルモン補充やhCG投与は妊娠率の改善に寄与する。

5、一般不妊治療において2週間を超えての黄体ホルモン補充やhCG投与は意味がない。

極論しますと、

米国ASRMは、そもそも”黄体機能不全という病気は存在しない”というスタンスです。(病気自体が存在しないのでそもそも治療法も存在しないという考え方です)

黄体ホルモンは排卵後の黄体(卵の殻)から分泌されますが、毎月毎月排卵される卵は異なる訳で、当然卵の殻(黄体)も変わりますので、周期ごとに黄体ホルモン値は違って当たり前なのです。(黄体ホルモン自体、月によって多少の高低や変動はあるということです。毎月の黄体の状況を明確に証明できない現状においては黄体機能不全という病気自体を証明できないのです)。黄体ホルモンをしっかり分泌する良質の黄体は、良質の排卵に付随します。(つまり、卵が良ければその卵に付いている殻も良いという考え方です。)排卵の質が良ければその後の黄体ホルモンもしっかり出ると理解いただければ分かりやすいかと思います。

時々患者様で、”私は黄体機能不全です”とおっしゃる方がおられます。多分以前にその方を診察したドクターに”あなたは黄体機能不全です”と刷り込まれたのだろうと推察します。もし本当に、”黄体機能不全”を診断できる医者がいたとしたら相当の名医だと思います。(何故ならASRMの最新の見解に従うなら黄体機能不全という病気は存在しないからです。そのドクターは全く新しい新種の病気を発見したことになるからです)いわゆる”黄体機能不全”という診断の下に、排卵後のhCG注射やデュファストン、ルトラールなどの黄体ホルモン製剤を処方されている方もおられるのではないでしょうか?。また基礎体温の黄体期陥落や高温12日未満を根拠に”あなたは黄体機能不全です”と”診断”して、黄体ホルモンを処方された方もおられるかと思います。また、実際に基礎体温の上下や黄体中期陥落に一喜一憂される患者様も多いです。エビデンスに基づいた不妊治療という観点で考えるとナンセンスだと思います(が、敢えて否定はしません。日本の古〜い言い伝えに従えば決して間違いではないからです)。不妊治療は結局のところ最後に妊娠出来てしまえば良い訳なので、hCGや黄体ホルモンの投与を受けた方がそれでも最後に妊娠してしまえば途中の過程はどうであれ、良しと出来る・・という考え方もあります。しかし冷静に考えれば、そういう人はhCGや黄体ホルモンが無くても結果は同じだったのではないでしょうか?(hCGや黄体ホルモンが無くても多分妊娠はできたと思います)

黄体機能不全の診断自体が難しく(ほぼ不可能)であり、実臨床にほとんど役に立たないということは以下のサイトをご覧いただくとさらに分かりやすいかと思います。↓↓

黄体機能不全は診断できるのか?

黄体ホルモンは排卵後の殻(黄体)から分泌されるので、良い卵には自ずと良い殻がもれなく付いてくる・・・と、考えるなら、そもそも排卵の質を上げれば黄体機能不全は解消される訳です。私、個人的には排卵後の黄体補充を一生懸命やるよりも排卵誘発に力を入れた方が良いのではないかと考えています。そもそも卵の質が悪ければ卵の殻にどんなに心血を注いでもあんまし意味がないのでは?・・・と日頃から考えています。排卵後の黄体補充は結局のところ一般不妊治療における妊娠率改善には寄与しないと考えていただいて良いかと思います。(高温期を2週間以上長引かせることには有効かもしれませんが、しかし患者様が求めるのは妊娠することであって、高温を2週間続かせることではないハズです。当院では黄体ホルモンは出さないのか?と聞かれますが、上記のような理由で出していません。それでも希望される方には自費で出すことは可能です。黄体機能不全という病気は存在しない(と、わたくしは信じている)ので保険診療の対象にはならないのでは?と個人的には考えています)

唯一、黄体ホルモン補充によって妊娠率改善が期待できるのはART周期だけです。(つまり、体外受精時の黄体補充はしっかりやった方が良いということになります)。これはASRMも見解で述べているところです。体外受精後の黄体補充は一生懸命取り組んだ方が懸命かと存じます。

医学の世界では昨日の常識は明日の非常識ということが良くあります。医学知識は常にブラッシュアップして最新の知見に基づいた治療を受けていただきたいと思います。

黄体機能不全については以下の関連ブログも参照下さい。↓↓
不妊治療におけるこれまでの”常識”を覆す
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