精索静脈瘤セルフチェックのすすめ|クリニックブログ

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2018.04.18

不妊症

治療

精索静脈瘤セルフチェックのすすめ

精索静脈瘤(Varicocele)とは?

精巣(睾丸)の静脈が蛇行拡張し、瘤状になったものを精索静脈瘤と言います。ひどい場合はいわゆるミミズ腫れのようになります。解剖学的な理由から左側に多いと言われています。百聞は一見にしかずと思われますのでこちらの写真をご覧ください。(家庭の医学大全科より拝借いたしました) 自分の陰嚢を確認して、これに近い状態があればほぼ精索静脈瘤ありと考えて良いかと思います。

精索静脈瘤↓↓  家庭の医学大全科より

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精索静脈瘤は男性不妊症(精子形成障害)の原因になることが以前から知られています。静脈瘤はすなわち血流の鬱滞(血の流れが悪い状態)です。精巣内の血流障害で精巣温度が上がり、精子形成障害になるなどの説が言われていますが、精索静脈瘤でなぜ精子形成障害が起こるのか詳細な原因は不明とも言われています。(不妊でない人にも精索静脈瘤を認めることもあります。精索静脈瘤=不妊ではなく、男性不妊の一部に精索静脈瘤が原因と考えられるものがあるという認識の方が正しいかもしれません)

手術するべきか?

精索静脈瘤には教科書的には大きく3つの段階があります。

グレード3:立位で腹圧負荷なしに視診で診断可能(つまり普通に素人が見て分かる

グレード2:立位で腹圧負荷なしに触知可能だが視診ではわからない(素人でも触れば分かる

グレード1:腹圧をかけることによってはじめて触知するか、超音波ドップラー法で確認できるもの

簡単に述べると、見てすぐ分かるものがグレード3、触って初めて分かるものがグレード2、検査(超音波検査)をして初めて認識されるものがグレード1という理解で大方間違いないと思います。セルフチェックで見つけられるのはグレード2以上の精索静脈瘤です。

精索静脈瘤は手術によって精液所見が改善されるという報告が多数あります。以下は2017年のFertility &Sterilityになります。結論から言うと精索静脈瘤手術が精液所見の改善に繋がり不妊治療のステップダウンに貢献したとする内容です。

Varicocelectomy to “upgrade” semen quality to allow couples to use less invasive forms of assisted reproductive technology

グレード2以上の精索静脈瘤(触るかもしくは見て分かる静脈瘤)は男性不妊の原因として重要であるという意見がある一方、オカルト静脈瘤(オカルトとは見えないもの、つまりグレード1の静脈瘤です)の手術の意義については否定的なものもあります。(グレード2以上のものは術後精液所見の改善が期待できるが、グレード1については精液所見改善効果がほとんど期待できないとする意見が多い。つまり手術適応は精液所見が悪い(実際に不妊を訴えている)グレード2以上の精索静脈瘤ということになります)

精索静脈瘤の手術適応を判断する上でもう一つ重要な要素は女性側の不妊原因です。AMH低下、女性の年齢、は一つの参考になります。(極論するとARTが必要かどうかは重要な要素です) 精索静脈瘤の手術は精液所見の改善に繋がり結果的に不妊治療のステップダウンに貢献する可能性はありますが、実際に手術の効果が出るのは3ヶ月〜半年ぐらいかかると言われています。女性の側の不妊原因がこの期間を待てるかどうか?は大変重要な問題です。また仮に不妊の原因が男性側の精液所見だけであれば良いですが、女性側のAMH低下や年齢の問題など絡んで来れば、必ずしも精索静脈瘤の手術だけでは解決しない場合もあります。不妊治療の最終的な目標は精液所見を改善することではなく妊娠をすることなので、手術の効果に過度に期待して男性の精液所見を改善することだけに気を取られすぎると、女性の側の治療のタイミング(ARTが必要な方はそのステップアップのタイミング)を逸する可能性もあります。不妊治療は男性、女性双方に原因があれば双方からアプローチをした方がより効果的なので、たとえARTをする可能性のある方でも、静脈瘤手術を同時進行的に行うことでより高い治療効果が期待できる可能性があります。つまり男性、女性片方だけに目を向けすぎないことが重要です。とは言っても、男性が仕事を休んで平日に医療機関に受診する、さらにたとえ日帰り手術であっても会社を休んで手術を受けに行くことは中々ハードルが高いと感じる方も多いのではないか?と思います。(男性はまず余程のことがないと医療機関に掛かりたがらない方も多いと思います)なのでどちらかというと男性不妊があっても女性側のアプローチ(つまりART)が先行するケースが非常に多いですが、精索静脈瘤の手術が可能な状況があれば女性側のアプローチをしながら同時進行的に男性の対応もした方がより良い結果に繋がる可能性は高いと言えます。

結論

見て分かる、もしくは触って分かる程の精索静脈瘤(グレード2以上)があって、精液所見不良であれば女性の治療と同時進行的に精索静脈瘤手術を検討した方が不妊治療の成績が良い可能性が高い。セルフチェックで発見できるような静脈瘤があって不妊で悩んでいる方は手術を検討した方がよく、結果的にはARTが必要な程の男性因子のあるカップルでも、治療のステップダウンが視野に入る可能性が出て来る。ただし、静脈瘤の手術後効果が期待できるのは術後3ヶ月〜半年以降のため、女性の側にあまり時間的猶予がない場合は手術の効果に過度に期待することなく早めにARTへ進むべきである。

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