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2018.07.08

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プロバイオティクス

プロバイオティクス(probiotics)は人体に良い影響を与える微生物群やそれらを含む食品群の総称とされます。抗生物質(antibiotics)に対比される言葉で、1989年英国の微生物学者Fullerにより提唱され、”腸内細菌叢(フローラ)のバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物”などの定義が用いられています。具体的にはラクトバチルス属、ビフィズス属などが有名で、プロバイオティクスの有益な作用としては、腸内環境の改善による下痢や便秘の改善、免疫力強化による感染予防などです。また最近では”腸は第2の脳”と呼ばれるようにセロトニンなどの神経伝達物質の多くが腸内細菌の働きによって腸で合成されると言われていますが、腸内フローラはこれら神経伝達物質の生成によって人の行動や情動をコントロールするなど、かなり高度な役割を担っていることも分かってきています。ちなみに”乳酸菌”という名称がありますが、これは代謝によって乳酸を合成する細菌の総称らしく、ラクトバチルス菌、ビフィズス菌などの人体に有益な細菌群の多くがこの俗に”乳酸菌”と呼ばれる細菌に含まれるようです。乳酸菌の多くは発育に糖類、アミノ酸、ビタミン、ミネラル類が必要とされ、これらを含む多くの食品の発酵(ヨーグルト、キムチ、乳酸菌飲料)などにも関係しています。

子宮内フローラと不妊症、将来の妊娠との関係

人の体重のおよそ1〜3%は実は細菌と言われています。人は体中に多くの細菌を飼っていて、これらの細菌と共生しています。ところで、腸内細菌以外にも人と共生している細菌の中で、腟、子宮内に生息する細菌(膣内フローラ、子宮内フローラ)と不妊症の関係が近年注目されています。

Potential Influence of the Microbiome on Infertility and Assisted Reproductive Technology

膣から子宮に至る一連の生殖器官では、ラクトバチルス属と呼ばれる細菌群が繁栄した状態が正常フローラと考えられています。ラクトバチルス属は子宮内環境を胚の着床にとって理想的な環境に調整する働きがあると考えられており、胚の子宮内膜への着床を促進する方向に働くと考えられています。具体的には乳酸の合成等を通じて膣内〜子宮内環境を弱酸性に調整したり、慢性子宮内膜炎にも関連する細菌性膣症(悪玉菌の発生によって慢性的な膣炎を起こした状態)の発症予防にも関係しています。上記の論文では、ART成績に影響を与える可能性のある子宮内膜のプロゲステロン抵抗性について、異常細菌叢(異常フローラ)によって引き起こされる慢性子宮内膜炎との関係が指摘されています。プロゲストロン(黄体ホルモン)は胚と子宮内膜の着床を調整する重要なホルモンです。

子宮内フローラと不妊症の関係は最近のトピックスとして重要で、不妊症患者の子宮内フローラ検査については実臨床の場で行われるようになってきました。また、フローラ検査の結果としてラクトバチルス群が明らかに少ない不妊症の患者様に対しては子宮内のラクトバチルスを増やして着床不全の原因となりうる慢性子宮内膜炎の状態を改善させるような取り組みも行われています。(悪玉細菌叢を根絶し、善玉細菌叢であるラクトバチルスを増やす方法として抗生物質の内服やラクトフェリンの摂取などを勧める意見もあります。ただしむやみやたらの抗生剤の使用は耐性菌の問題やカンジダの発生など別の問題も起こり得ることから私自身はやや懐疑的です。ラクトフェリンの摂取については今後の課題として検討の余地があるのではないかと思います。)反復着床不全や原因不明不妊症の患者様に対する次なる一手として期待される分野ではないかと思われます。

また、産科分野では、慢性子宮内膜炎や細菌性膣症は将来の流早産との関連も指摘されています。妊娠中の異常な子宮収縮にこれらの慢性炎症やその結果として産生されるサイトカイン(炎症性物質)等が関係しているという意見があります。不妊治療の現場では将来の安全な妊娠経過、出産までを見据えた対応が必要と考えられ、その点からも如何に良好な子宮内フローラを維持するかという問題は無視できない重要な地位を占めてくる可能性が考えられます。

菌活の勧め

腸内フローラや子宮内フローラと体の健康の問題がクローズアップされ、最近では共生細菌叢を如何に良質なものに育てていくか?ということが注目されています。良質な細菌を積極的に取り入れ、健康維持に役立てようという考え方を”菌活”と言ったりします。良質の細菌叢は免疫の維持、代謝の調整などに関係しているため健康的な体を維持するために必要と言われています。また先述したように”腸は第2の脳”とも言われるようにセロトニンを始めとした情動に関係する神経伝達物質の多くが腸で合成されることから、安定した精神状態の維持にも良質のフローラが役立つと言われています。菌活の具体的な方法としては、発酵食品を積極的に摂る、乳酸菌の発育に必要な十分な栄養をしっかりとる、乳酸菌サプリなどによって腸内の乳酸菌を増やすなどの方法が考えられます。皆さんも健康維持のために菌活始めてみませんか?

 

 

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