子宮内膜症と慢性疲労|クリニックブログ

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2018.09.02

不妊症

治療

子宮内膜症と慢性疲労

子宮内膜症とは?

子宮内膜症は生殖年齢の若年者を中心に発症し、本来子宮の内腔にしかない子宮内膜組織が、子宮以外の場所(卵巣や腹膜などの骨盤臓器、時に鼠径部、肺など骨盤外に発生することもあるとされる)で増殖と剥離を繰り返して、疼痛や様々な不快症状を引き起こす疾患です。子宮内腔の子宮内膜は、月経時に月経血として体外に排出されますが、子宮外で発生した子宮内膜は排出されることなく留まり、炎症や癒着を起こすなどして疼痛の原因になります。子宮内膜症自体は良性の病気で、直接生命にかかわることはありませんが、不妊症の直接的な原因になったり、将来的には癌のリスク因子になったりするなど様々な問題を起こします。また毎月訪れる酷い月経痛、性交痛、排便痛や慢性的な疼痛に伴う抑うつ状態、など生活の質を著しく低下させる疾患です。低用量ピルやその他の薬物治療を上手に活用するなどして閉経まで付き合って行く必要があるとされています。

子宮内膜症の女性は疲れやすい!?

今回紹介する論文は、子宮内膜症と慢性疲労の関係に着目したものです。出典は2018年のHuman Reproductionです。(Human Reproduction, Volume 33, Issue 8, 1 August 2018, Pages 1459–1465)

Fatigue – a symptom in endometriosis

この論文によると、子宮内膜症の患者では慢性疲労、慢性疼痛、不眠症、抑うつ症状、仕事上のストレスなどの症状について、これらを自覚する頻度が内膜症でない方と比べて有意に高いことが示されています。また、子宮内膜症の重症度(rASRMステージ分類)と慢性疲労の関係について、どのステージでも約半数の患者に慢性疲労が見られるとしています。また子宮内膜症の重症度(ステージ)と慢性疲労の頻度に相関はなく、子宮内膜症があるかどうかと言う点が慢性疲労の有無を規定することが示されています(重症でも軽症でも子宮内膜症があるだけで疲労の原因になる)。また子宮内膜症の局在(子宮内膜症がどこに発生しているかと言うこと。卵巣チョコレート嚢腫、ダブラス窩内膜症、骨盤壁癒着など色々なタイプがあります)と慢性疲労については、どの部位に発生した子宮内膜症でも約半数の患者で慢性疲労を自覚するとしています。

結論としては、

1、子宮内膜症はたとえステージの低い軽症のものであっても慢性疲労の原因となる(子宮内膜症があるかどうか?が重要)

2、子宮内膜症はどの部位にあっても慢性疲労の原因になる(子宮内膜症の発生場所は関係ない)

3、慢性疲労と関連する慢性疼痛、不眠症、抑うつ症状、仕事上のストレスなどについて、子宮内膜症患者ではこれらを感じることが内膜症でない方と比べて多い(つまり、子宮内膜症患者が自覚する慢性疼痛、不眠、抑うつ、仕事上のストレスなどの不快症状そのものが子宮内膜症患者が抱える慢性疲労の要因になっていると考えられる)

と言えます。

女性のQOL(生活の質)を著しく低下させ、将来的に不妊症や癌のリスクにもなる子宮内膜症は軽いうちから薬物治療(低用量ピルなど)を適切に行うことで、重症化を防ぐと同時に生活の質を高めることが期待できます。特に、妊娠を希望する方は子宮内膜症の薬物治療は出来なくなります(不妊治療と子宮内膜症治療は並行できません)ので、妊娠を希望する前の段階での早めの対応がその後の人生を左右すると言っても過言ではありません。(若年のうちに発生した子宮内膜症を放置している方は将来的に重症不妊症になるケースが多く、体外受精などの高度な生殖医療が必要になるケースも多いです。また子宮内膜症は卵巣予備能の低下、卵子の質の低下にも関連するとも言われており、重症子宮内膜症は不妊治療の予後不良因子の一つです)

特に若年女性の重症月経痛、月経困難症は子宮内膜症をすでに発症していたり、将来的な子宮内膜症のリスク因子であったりしますので、ぜひ早めの対応をご検討ください。

妊娠、出産はまだ先と考えている若い女性の皆さんへ

月経痛は我慢しないでぜひ早めに産婦人科へ相談を。その後の人生が大きく変わる可能性があります。

 

 

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