不妊症とビタミンDの関係|クリニックブログ
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2016.06.11
検査
不妊症とビタミンDの関係
ビタミンDとは?
ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つです。キノコ類などの植物由来のビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と魚介類や卵などの動物由来のビタミンD3(コレカルシフェロール)があります。主にカルシウムとリンの吸収を促進し、骨をつくり、丈夫にすることが知られていますが、近年、細胞の増殖や分化にも深く関わっていることが明らかとなり、妊娠や出産時のビタミンDの働きについて注目されるようになってきました。
ビタミンD=ホルモンとする説
本来、ビタミンとは体内で合成できない微量栄養素ですが、ビタミンDは体内で合成され、細胞の核内受容体への結合や遺伝子発現を介してその作用を発揮することから、”ホルモン様物質”とする意見もあります。
ビタミンDの供給
ビタミンDの供給源は”体内合成”と”食品摂取”の2通りあります。食品からの摂取はおよそ20%未満とされています。日光にあたると皮膚でコレステロールから紫外線の働きによってプレビタミンD3が生成されます。その後、体温によってビタミンD3に変換され、肝臓に運ばれてビタミンD濃度の指標とされている25(OH)ビタミンD3に、さらに腎臓で活性型ビタミンDの1,25(OH)2ビタミンD3となり、効果が発揮されるようになります。一方、食事から摂取したビタミンDは小腸で吸収され、肝臓に運ばれ、腎臓で活性化されます。以下ビタミンD3の生合成経路。
コレステロールからプレビタミンD3への変換(紫外線の作用下)
プレビタミンD3からビタミンD3(コレカルシフェロール)への変換
ビタミンD3から肝臓貯蔵型のビタミンD3である25(OH)ビタミンD3への変換
肝臓貯蔵型ビタミンD3である25(OH)ビタミンD3から活性型ビタミンDである1,25(OH)ビタミンD3への変換
ビタミンDと妊娠に関連する報告
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性はビタミンD濃度が低い
- PCOSによる排卵障害の女性はビタミンD補充によって排卵率が上がる
- 卵胞液中のビタミンD濃度が高い女性ほど体外受精の妊娠率が高い
- 30歳以上ではビタミンD濃度が高い女性ほどAMHが高い。
- ビタミンD濃度が高い女性は、子宮筋腫になりにくい。
- ビタミンD濃度が高い男性ほど精子の質がよい
25(OH)ビタミンD欠乏は体外受精における低着床率や低妊娠率に関連することがイタリアで実施された試験で明らかになりました↓↓
http://press.endocrine.org/doi/abs/10.1210/jc.2014-1802
ビタミンD濃度の目安と不足について
ビタミンDが足りているかどうかは、血中のビタミンD濃度の指標となる25(OH)ビタミンDを測定することで判断でき、この濃度が20ng/ml未満でビタミンD不足、そして、10ng/ml以下は潜在性ビタミンD欠乏症と言われています。最適な濃度は30~50ng/mlとされていますが、最低でも20~30ng/mlは確保した方がよいとされています。ビタミンDは、紫外線防止をしない状態で1日に30分程度、週に2,3回、日光浴を行うことでも確保されると言われています。日本人女性の半数以上はビタミンDが不足しているとされていますが、それは日焼け止めの使用や屋内での業務など、紫外線を避けるライフスタイルの影響と考えられます。
当院での取り組み
当院では、不妊治療中の患者様に対して血中ビタミンD濃度の指標となる25(OH) ビタミンDの測定を行う取り組みを始めました。低値の患者様に対しては食事によるビタミンD摂取の励行や日光浴のすすめ、またサプリメントによる補充などを案内させていただいております。
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