HSG(子宮卵管造影検査)について|クリニックブログ
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2017.09.16
検査
HSG(子宮卵管造影検査)について
HSG(子宮卵管造影検査)とは?
HSG(子宮卵管造影)とは、卵管閉塞の確認を行うための検査です。子宮から造影剤を流し込み、卵管内の閉塞、狭窄、癒着を確認します。不妊治療の初期の段階で、治療方針の検討のために実施します。(これまで、一般産婦人科等で子宮卵管造影検査を全く受けずにタイミング法や人工授精をひたすら受けておられる患者様がおられました。もちろんそれでも妊娠して結果が出せれば結果オーライということになると思いますが、結果が出なかったとしたら非常にナンセンスです)。系統立った生殖医療を行うためには必ず治療の初期段階で必要な検査です(我々生殖医療専門医にとってはこの点は常識です)
HSGにはX線(レントゲン)を使う方法と、使わない方法(超音波検査)の大きく2つの方法があります。また、各検査方法は、使われる薬剤の性質によりさらに細分化されます。
- X線子宮卵管造影・・・健康保険適応あり
- 油性造影剤(リピオドール)
- 水性造影剤(イソビスト)
- 超音波子宮卵管造影・・・健康保険適応外
- 水性造影剤(レボビスト)
- 混合造影源(フェムビュー)
日本の保険診療においては、レントゲンによる検査のみ健康保険の適応が認められています。このため、一般に子宮卵管造影検査(HSG)というと「X腺子宮卵管造影検査」のことを指します。
検査方法(X線卵管造影 vs 超音波卵管造影)の比較
検査方法 |
X線 |
超音波 |
ヨードアレルギー |
あり |
なし |
X線被爆 |
あり |
なし |
診断力 |
高い |
高い |
健康保険 |
適応 |
適応外 |
X線造影検査における使用薬剤(水溶性造影剤 vs 油性造影剤)の比較
水溶性造影剤 | 長所
1.検査後すぐに吸収されるので、造影剤が残らない。 2.一日で検査が終了する。 3.卵管の通過性、周囲癒着などの診断精度が高い。 |
短所
1.すぐに吸収されるので、少し痛みを伴う(刺激性がある) 2. 費用が高い。 3.検査後の妊娠が油性造影剤よりやや低い。 4、ヨードアレルギー不可 |
油性造影剤 | 長所
1.吸収が遅いので検査時の痛みが軽い。(刺激性が少ない) 2.費用が安い。 3.検査後に妊娠する人がいる。 |
短所
1.造影剤がお腹の中に長期間残ってしまう。(肉芽種などの炎症を起こす原因になる) 2.翌日もレントゲン撮影が必要。(長く残る) 3.水溶性に比べ、卵管通過性の診断率がやや劣る。 4. 水溶性に比べて塞栓の恐れがある。 5.ヨードアレルギー不可 |
子宮卵管造影の流れは、以下の通りです。
- 膣を消毒し、膣から子宮頚管に柔らかいチューブを入れ造影剤を流します。この際に卵管の疎通性を確認します。
2.時間をおいてレントゲン撮影を行います。これは拡散像と言って、造影検査終了後時間をおいて腹腔内に広がった造影剤を見ることで、卵管周囲や腹腔内の癒着の有無を確認できます。超音波造影検査の場合はこの過程は省略される場合があります。
3. 検査可能な時期は月経の終了から排卵前の時期になります。
HSG検査は痛いのか?
ほとんどの方は、HSG検査で痛みを感じることはまずありません。痛みを伴う場合は幾つかの場合が考えられますが、1、卵管狭窄や閉塞があることで卵管内圧が高まり痛みを発生する場合、 2、検査の手技が雑で卵管攣縮(痙攣)を起こしている場合、 3、造影剤の影響による腹膜刺激症状の可能性 などが考えられます。特に2、についてですが、卵管造影検査用のチューブを挿入する際(検査の開始時点)から、すでに手技が雑に行われた場合、迷走神経反射によって子宮や卵管が収縮を起こし、気分不快や卵管攣縮を起こす場合があります。このような状況で造影剤の注入を強行すると痛みや吐き気を伴ったり、卵管が攣縮(痙攣のような状態)していることで造影剤がスムーズに入らず、ややもすると本来は閉塞ではないのに卵管閉塞と誤診される可能性もあります。 3、について、特に水溶性造影剤の場合は腹膜刺激症状がやや強いと言われています。
卵管造影検査の治療的効果について
子宮卵管造影は、治療的な効果もあるとされます。卵管内に造影剤を流し込むため、軽度の癒着や狭窄は、これによって解消されることがあり、結果として卵管の通りがよくなるために妊娠率が向上するというものです。ただし、その効果はおよそ3か月程度と考えられています。卵管造影検査を実施した同一周期からタイミング法や人工授精は実施可能です。実際に、HSG周期もしくはその次ぐらいの周期で妊娠された方もおられます。(もちろんこれがHSGの影響なのか、もともとHSGで異常なかったから妊娠できたのかその真偽の程は不明です) 大事なことは、治療開始の初期段階で必ずHSG検査は実施しておくべきであること、また、妊娠する方は概ね最初の3、4周期ぐらいまでにほとんどの方が妊娠しているということです。なので、一般不妊治療の検査の初期段階でこの検査を実施し、その後半年間程度トライしても結果が出なければステップアップと考えられるのも妥当といえます。というのは、この検査で卵管に異常がなく、タイミングを合わせていても結果が出ない場合には、卵管疎通性以外のどこかに問題がある可能性が高いためです。特に女性が高齢の場合や、男性不妊も合併しているカップルではいたずらに一般不妊治療に時間をかけすぎるとその後は、卵子の老化、加齢に伴う妊孕性の低下がおこる可能性も出てきます。HSGの結果が大丈夫だった=妊娠できる保証にはなりませんので、注意が必要です。
当院ではどのようにしているか?
当院では超音波による卵管造影を採用しています。理由としまして、1、特別な装置(造影室、レントゲン)を必要とせず、内診台で簡単に検査ができる。(部屋の移動なども必要なく患者様の負担が少ない)、 2、放射線の被曝がない 3、腹膜刺激症状が全くない 4、検査時間が短くてすみ患者様の負担が少ない 5、ヨードアレルギーの心配がない 6、甲状腺機能に影響を与えない などの理由です。痛みがあると思って来たけど全く痛みがなくて楽だったと患者様から好評をいただいております。
これから不妊治療を始められる計画を立てておられる方で、最初に行われる卵管造影検査に不安をお持ちの方も多いと思いますが、こちらの記事をお読みいただき、検査に対する不安が多少なりとも解消いただけましたら幸いに存じます。
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