排卵検査薬に関する話題|クリニックブログ

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2018.04.24

検査

排卵検査薬に関する話題

排卵検査薬を正しく使えていますか?

自己タイミング法をチャレンジしている方にとって頼りになる味方として排卵検査薬があります。しかし、正しく使えていないとその結果に惑わされる場合もあります。排卵検査薬に惑わされて排卵しているのかどうか分からなくなってしまった方は、ぜひ一度我々不妊専門医を受診していただけたら有難いのですが、手軽さと言う点では我々専門医は中々検査薬に勝てません。薬局で簡単に手に入るというのは排卵検査薬の最大の魅力です。また、中には不妊治療をするために病院に通いながらさらにわざわざ排卵検査薬を自己購入されている念には念を入れておられる方もいらっしゃいます。(患者様に信頼されていない我々医療者側にも問題があるのかもしれませんが)。そこで本日は排卵検査薬に関する話題です。

排卵検査薬の原理

排卵検査薬は尿中のLH(黄体化ホルモン)を検出します。製品によってその感度が異なり、20mIU/ml程度のものから40mIU/mlのものまで市販されています。数値が低いほどより低いLHも検出できると言うことになり=感度が高いと言うことです。自然排卵周期では、発育卵胞から分泌されるエストロゲン(E2)が引き金となって、LHが急激に上昇します。(LHは下垂体前葉から分泌されます)。このLHの急激な上昇をLHサージと呼び、排卵検査薬はこのLHサージを検出しています。一般的にはLHサージの開始から48時間以内ぐらいに排卵が起こるとされています。体外受精を行う際は通常、LHサージを起こすトリガーの開始から34時間〜36時間ぐらいの間に採卵を実施しますので、排卵はLHサージの開始から36時間〜48時間ぐらいの間に起こると推察されます。(通常の体外受精ではトリガーの開始から36時間を過ぎて採卵することはあまりないのですが、仮にトリガーから36時間以上待ったとすれば48時間以内の何処かのタイミングで排卵してしまうものと考えられます)。排卵検査薬の原理としては、このLHサージの始まりを検出する(20mIU/mlタイプのものであれば、尿中LHが20mIU/mlを超えたところで初めて陽性に出ます)ので、尿LHテストが陽性になったらその時点から48時間ぐらいの間に排卵が起こる可能性が高いと言うことが分かります。

そもそも排卵検査薬は正確か?

結論から言うと、使用期限が切れていない限り正確です。(少なくとも日本国内で入手する限りにおいて。海外品については保証は致しかねますが・・)。排卵検査薬自体は嘘はつきません。検査薬が陽性になれば排卵が近いと言うことが推察されます。(排卵が近いかどうかと言う点についてだけなら医者より正確だと思います。)

排卵検査薬の限界

一方、排卵検査薬はあくまでも尿中のLHを検出するものです。LHが高まっている=LHサージが始まっている=排卵が近いと言う予測は可能ですが、そもそも排卵を保証するものではありません。(これは体外受精をすれば分かりますが、卵胞は育っても空胞で卵子がなかったりする周期もあるので、本当に卵子があるのかどうか、排卵できているのかどうかまでは保証できません)。排卵検査薬の限界を考える上で興味深い論文がありましたので紹介します。↓↓(2007 Fertility &Sterility)

LHサージ

結論としては、LHサージのタイプ(立ち上がり、振れ幅、発現の期間等)には様々なバリエーションがあると言うものです。十人十色とも言えます。つまり検査薬でLHを検出する上で、個人差やバリエーションを考慮する必要があると言えます。患者様からよく頂く質問で、検査薬を毎日やっているが中々反応が出ないと言うものがあります。その際は、毎日を1日何回やっていますか?と伺いますと、大抵は1日1回と言う返答が来ます。ここで問題になるのは、仮にこの方、rapid onset(急激立ちあがり)→short dulation(短い間隔)タイプの方であれば、1日のうちにLHサージの立ち上がり→ピーク→低下が来てしまえば1日1回の検査薬では捉え切れなかった(つまり、毎朝欠かさず検査をしている方が、ある朝に検査薬をやって反応が出ず、次の朝までにLHサージが終わってしまい、翌日の朝に検査薬を使っても結局この24時間の間に起こったLHサージを捉え切れなかったということが起こりえる)と考えることが出来ます。(もしくは無排卵周期でそもそも本当にLHサージが来なかったかのいずれかです) なので、1日3回ぐらい8時間ぐらいの間隔で排卵検査薬をチャレンジするといずれかで捉えることが可能になったかもしれません。(もちろんこのような使い方は非常に面倒くさいのであまり現実的とは言えませんが・・・)

排卵検査薬による自己タイミング法が向く人向かない人

排卵検査薬による自己タイミング法が向く人はそもそも排卵周期が順調な方です。だいたいこの辺でいつも排卵しそうだな・・というのが分かればその数日前から検査薬をチャレンジしてみると、どこかで反応が出ると思われるので、タイミングを合わせれば良い訳です。(しかし、こういう人はそもそも排卵検査薬をやる意味があるのかどうかという疑問が生じますが・・・。あくまでも自分の確認のためと割り切った使用であればそれはそれでも良いと思います)。逆に検査薬を使った自己タイミング法が向かない方は排卵周期が不順な方です。自分でチャレンジしようとしてもいつから開始して、いつまでやれば良いのかなかなか見当もつかないと思います。(それでも敢えて自己検査薬にこだわるとすれば一つの提案としては1日当たりの検査回数を増やし、検査日数を例えば月経の終了ぐらいから1ヶ月間ぐらいやってみるとか)そういう方は思い切ってきちんと専門医の診察治療を受けた方が賢明です。検査薬は嘘をつきませんし、常に白黒正しい結果を出してはくれますが、それ以上のことはやはりよく分かっている専門家に聞くのが一つの解決策になるかもしれません。排卵検査薬は決して嘘はつきませんので、正しく使えば(検査薬の特性を理解し、またそもそも検査薬の使用に適している人なのかどうか?、つまり適性を判断して使えば)妊活アイテムとして強い味方にはなってくれますが、一方道具を使うのは人ですので、道具の原理や限界について正しく理解していなければかえって惑わされます。道具に惑わされないための正しい理解が必要です。

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