タイムラプスによる卵の評価|クリニックブログ
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2017.01.26
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タイムラプスによる卵の評価
患者様の滞在期間(治療期間)短縮を目指して
当院では、受精卵の培養にタイムラプスを導入しています。タイムラプスは、これまでのポイント観察(受精卵の発育過程のうちのある一時点だけを観察して形態的な評価を行うこと。例えばD1、D2、D3、D5というように各ポイントでの観察を行うこと)から連続観察(受精卵の発育過程全体を時間の推移とともに連続的に観察し評価する)となる点が大きな特徴です。
以下は今年最初のタイムラプス培養を行った受精卵です。連続撮影された動画の一部分を写真として掲載しています。実際にはこれらの変化を連続的に動画として見ることができます。(一番下の動画はデモ動画ですが、タイムラプスではこのように連続的な動画として発育の様子が観察できます)
タイムラプスで観察するメリットとしては、受精卵の発育の一連の過程を連続的に観察することができ、前核出現のタイミングや胚の分割の様子、分割のスピード、時期などからより妊娠の可能性が高く、赤ちゃんになれる可能性の高い良好胚を選択できること、また、タイムラプス専用のインキュベータに胚を入れれば、観察のために外に出す必要がなく、温度変化、湿度変化、炭酸ガス濃度変化などの環境変化から受ける胚のストレスを避けることができること(胚へのストレス軽減)、などです。
当院では2016年2月よりタイムラプスを導入し、まもなく1年となります。タイムラプス導入前後で胚移植あたり妊娠率に向上を認めました(以下、過去3年間の体外受精成績比較表)。また、流産率の低下にも効果があることが分かりました。こちらは栄養療法の導入などタイムラプス以外の要因も考えられますが、タイムラプスでの観察でより良好な胚を選択できるようになった結果とも考えています。
さて、タイムラプスは複数胚からより妊娠の可能性の高い良好胚を選択するツールとしてすぐれていますので、移植の候補となる胚が複数個あり、その中からベストな胚を選択する際に力を発揮します(いくつかの胚をふるいにかけてその中から良い胚だけを選ぶと考えれば理解しやすいかと思います)。そこで当院では卵巣刺激法を従来の低刺激法(クロミフェン、フェマーラ)や自然周期法中心から、1採卵あたり獲得卵子数の多い調節卵巣刺激(ロング法、アンタゴニスト法)へ変更しました。これにより1回の採卵でなるべく多くの受精卵を獲得、複数個の受精卵の中からタイムラプスでより妊娠の可能性の高い良好胚を選択、採卵の翌周期以降の移植で妊娠、という目標を立てて治療を行っています。当院では不妊治療の最終目標は単に妊娠することではなく、生まれてくる子供と最終的に有意義な人生を送ることであると考えています。患者様が治療にかける時間はなるべく短い方がよいと考えており、不妊治療後に子供と過ごす時間を少しでも長く、有意義にしていただきたいというのが当院の基本スタンスです。今後も様々なツールを駆使して患者様の滞在期間(治療期間)短縮に努めて参ります。
タイムラプスについては、当院Blogのこちらも参照くださいませ↓↓
以下はデモ映像ですが、タイムラプスで観察すると実際にはこのように見ることができます。
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