保険診療開始4か月 現在の立ち位置について(2022年8月現在)|クリニックブログ

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2022.08.28

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保険診療開始4か月 現在の立ち位置について(2022年8月現在)

保険診療開始4か月 現在の立ち位置について(2022年8月現在)

不妊治療の保険適応拡大(生殖補助医療の保険適応開始)後、およそ4か月が経過したところで、現在の保険診療の状況(体外受精成績等)、従来法(オーダーメイド治療)との比較について記載いたします。

 

当院でも、2022年4月以降、保険による体外受精を提供しています。比較的年齢層の若い患者様(20代後半〜30代前半)を中心に、特に初回体外受精で保険診療を選択いただく傾向にあるように思われます。一方、高年齢の方やこれまで多施設ですでに治療を行っておられるが、うまく行っていない患者様では従来通りのオーダーメイド治療を選択される傾向にあるように思われます。

 

保険体外受精の卵巣刺激法

当院の保険体外受精では、中刺激法(クロミフェン+FSH注射)による卵巣刺激法を採用しています。保険診療では治療計画の作成が必須とされており、この治療計画においては採卵と胚移植を一体とした治療計画を作成する必要があるとされています。(保険診療では将来使う卵を保険で確保するいわゆる貯卵行為が禁止されています。つまり胚移植を前提とした治療計画である必要があります)。そのため、胚移植が延期となる可能性の高い高刺激法(特に貯卵を目指すような従来のスーパーストロング法)は選択せず、おおむね平均2個~10個程度の卵子数確保を目指せるような中刺激法(獲得できる卵子数は患者様の状態やAMHにより前後します)を中心とした卵巣刺激法を選択しています。(ここに到達するまでには多少の紆余曲折もありました)

また、通院負担を軽減するため、卵巣刺激法に使うFSH注射剤は、ペン型自己注射を採用しています。(ゴナールFペン)

 

媒精方法の選択

保険診療では、上記方法で獲得された卵子に対して、一般体外受精または顕微授精を実施します。媒精方法の選択については、純粋な医学的適応をもとにして決めますが、この際参考とするのがWHOの精液所見基準になります。WHO基準をクリアする方については一般体外受精を採用しています。

 

胚培養

胚培養の過程で、希望者にはタイムラプスインキュベーターによるタイムラプス培養を実施しています。タイムラプスは先進医療Aに位置づけられており、保険診療と併用して行うことが認められた自由診療による医療行為です。タイムラプスの特徴としては、観察のたびに胚の出し入れを行う必要がなくより安定的で胚への負担の少ない培養環境が維持できるという点が最大の特徴になります。特に、複数個の卵子が確保できた患者様については全ての胚を観察するまでには時間がかかることもあり、より胚へのダメージを抑えるという観点からはタイムラプスの選択をご検討いただくことをオススメしております。

 

胚移植および余剰胚凍結

胚移植は受精後2日目、または3日目に新鮮胚移植を行います。学会見解を遵守するため、1個の胚を子宮内へ移植する単一胚移植を選択しています。また、余剰胚については凍結保存を実施します。

 

治療成績成績(従来法との比較)

保険診療における治療成績はおおむね以下の通りです。

妊娠率 約30%(新鮮胚移植 2022年8月現在 平均年齢32歳)

 

従来法(オーダーメイド治療)における妊娠率はおおむね以下の通りです。

妊娠率 48%(凍結胚盤胞移植 平均年齢39歳)

妊娠率 18%(新鮮胚移植 平均年齢42歳)

 

*上記は2022年8月時点の結果です。

 

考察及び今後の治療提供体制について

採卵と胚移植を一体とする保険診療においては、これまでの4か月間に新鮮胚移植を主体とした胚移植を実施しており、患者平均年齢が下がっていることも考慮すると、おおむね全国施設の新鮮胚移植の治療成績またはこれに準じた治療成績となっていることが推察されます。保険診療の目的の一つが、治療の均一化、均質化、であることを考慮すると理にかなった結果であったと言えます。今後の方向性としては、全国平均の標準医療を求める方は保険診療による治療、逆に全国平均以上の結果を求める方に対しては、当院が従来より提供しているオーダーメイド治療により、治療の2極化が進むと考えられ、当院はこれまで同様患者様のニーズを考慮した柔軟な治療提供体制を整えていくことを目指して参りたいと考えています。当院は、あくまでも治療の選択権は患者様にあるというスタンスを重視し、これまで以上に患者様の希望を考慮した治療提供体制を維持していく所存です。

 

佐久平エンゼルクリニック