PGT-A(着床前検査)|検査内容 - 費用について

PGT-A(着床前検査)

PGT-A

当院でPGT-A検査を希望される患者様へ

PGT-Aとは

PGT-A(Preimplantation genetic testing for aneuploidy=着床前染色体異数性検査 以下本法)とは、体外受精または顕微授精によって得られた胚の染色体数の過不足を、移植する前に調べることで、事前に流産する可能性の高い胚を移植胚から除外し、出産に至る可能性の高い胚を選択することのできる技術です。欧米では流産を防ぐ目的で既に実施されていますが、本邦では日本産科婦人科学会が「反復体外受精・胚移植(ART)不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究」として臨床研究という形で本法をスタートさせました。全国の各医療機関は日本産科婦人科学会の認定のもと、共同研究への参加という形でPGT-Aの対象となる患者様へ本法を提供する形をとっており、この度当院も日本産科婦人科学会よりPGT-A実施施設としての施設認定を受け、対象となる患者様へ本法の提供を開始いたしました。

PGT-Aの背景について

このような見た目がきれいな胚盤胞であっても実際に赤ちゃんになれるかどうかは分かりません

体外受精・胚移植を含む高度生殖医療(ART)は不妊治療の方法として広く行われており、わが国では現在およそ14人に1人の赤ちゃんが高度生殖医療より生まれています。一方、治療を受ける女性の高齢化により、なかなか妊娠しない方(反復ART不成功)や、流産を繰り返す方(反復流産)が近年増加しています。その理由に受精卵の染色体数の異常が挙げられています。染色体数に異常があると、その受精卵は着床しなかったり、仮に着床できたとしても妊娠初期に流産となり、赤ちゃんになるまで育つことができません。高齢女性の卵子は染色体数の異常が増えるとされています。このような染色体数の異常は受精卵の見た目だけからは判断できず、良好胚(いわゆるグレードが良い胚)と呼ばれる形が整った胚であっても染色体数に異常があれば子宮に移植しても着床しなかったり、流産をしてしまうこともあります。また、このような一見、きれいな胚を何回か子宮に移植してもなかなか妊娠しなかったり流産を繰り返すことは、治療を受ける方にとって精神的、身体的な苦痛となります。そこで、最新技術を用いて事前に移植する受精卵の染色体数を調べ、数の異常がないものだけを選んで子宮に移植することで、流産を減らし、妊娠率や出産率を高める試み(PGT-A)が開発されました。

検査の対象

着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の対象は,以下の夫婦とします。

  • 反復する体外受精胚移植の不成功の既往を有する不妊症の夫婦
  • 反復する流死産の既往を有する不育症の夫婦

ただし、夫婦のいずれかに染色体構造異常(均衡型染色体転座など)が確認されている場合を除きます。

検査の具体的方法

胚盤胞の生検はこのように胚盤胞の外側の細胞をちぎり取るようにして行います

PGT-A検査は、当院で行う一般的な体外受精・胚移植に用いられる卵巣刺激法によって採卵した卵子を一般体外受精または顕微授精によって媒精し、得られた受精卵を胚盤胞まで培養した後、胚盤胞の一部(栄養外胚葉細胞)を生検(組織の一部をちぎり取ること)して細胞を回収し、細胞中に含まれるDNAを増幅した後、遺伝学的検査方法によりその中に含まれる染色体の数を解析します。

結果が出るまでには数週間を要することから、生検した胚盤胞は一度凍結保存し結果が出るのを待ちます。凍結保存の方法は当院で一般的に行っているガラス化凍結法を行います。得られた解析結果をもとに移植の可否を判断して融解胚移植を行います。融解胚移植は当院で一般的に行っているホルモン補充周期下または自然排卵周期下での融解胚移植を行います。

検査に伴うリスクおよびデメリットについて

受精卵は非常にデリケートなため、生検によって受精卵が大きなダメージを受けることで、本来妊娠できるはずだった受精卵が、妊娠できなくなってしまう可能性があります。また、生検で得られる細胞は受精卵全体の一部に過ぎないため、仮に異常なしと判断されたものであっても、結果が受精卵の全てを反映している訳ではない場合があります。また、現在の解析技術は100%完璧なものではないため、本来であれば妊娠するかもしれない受精卵を異常胚と判断し廃棄してしまう可能性もあります。また、PGT-A 検査で、移植には適さないと判断された胚の中に必ずしも妊娠しない、または流産するとは限らない胚が含まれることもあります。また、そのような胚しか得られない場合も想定されます。

検査の技術的限界および不確実性について

本法では流産原因のおよそ15%を占める3倍体、4倍体(染色体の一部ではなく全体が1.5倍、2倍に増えている状態)などの判定はできません。また、反復流産の約25%は胎児染色体正常流産といわれています。したがって、解析結果が正しい場合でも流産となることはあり得ます。また、父あるいは母の年齢が高いと自然妊娠に比して、生まれてくる児に先天異常が見つかる可能性が若干高くなると言われており、それは年齢による影響と考えられています。PGT-A検査によって全ての流産を防げるというわけではなく、またPGT-A検査によって検出し得ない児の先天異常等があります。つまり、PGT-A検査には技術的な検出限界があり、検査によって得られた胚の染色体情報には不確実な部分があると言われています。検査精度が100%ではないため、異常ではないのに異常と判定されたり、異常があるのに正常と判定される場合もあります。これらを偽陰性、偽陽性と呼び、その可能性は0.5〜1%程度と⾔われております。諸家の報告では、正常胚を移植した場合の妊娠率が約70%、流産率が約10%程度と⾔われております。(染色体の数的異常以外の流産原因もあることから、仮に正常胚と判断されたものであっても妊娠率100%とはなりません)

性染色体に関する情報の取り扱いについて

PGT-A の解析結果には出生児の性別にかかわる染色体情報が含まれています。つまり、得られた胚の染色体がXXであれば将来女児になる胚であり、XYであれば将来男児となる胚であることが分かります。この技術が性別選択に濫用されることを避けるために、染色体数に異常がない場合は、性染色体に関する情報はご夫婦には開示致しません。一方で、性染色体の解析結果に注意を要する場合には、当院と連携している施設の臨床遺伝専門医より、性染色体に関する情報も含めた解析結果を開示しながら慎重に遺伝カウンセリングの機会を提供します。

検査に関する費用について

PGT-A検査は健康保険適応がありませんので、これにかかる費用は全額検査を受けられるご夫婦の自費負担となります。受精卵1個あたりの解析にかかる費用はおよそ¥55,000(税込)です。
この費用は、正常と判断された受精卵でも、異常と判断された受精卵でも、結果の如何によらず同額の費用が発生します。また、当該検査費用とは別に、通常の体外受精または顕微授精を行うための費用(卵巣刺激にかかる投薬、検査代、採卵代、胚移植代等)が発生いたします。

同意書のダウンロード

下記よりPDFのダウンロードが可能です。

Infertility treatment

患者様一人一人のための
効果的な治療をご提供

当院では約10%の方が体外受精以外の一般不妊治療(タイミング法、人工授精)で妊娠していますので、体外受精以外の方法で妊娠する可能性が高いと判断できる方には一般不妊治療をしっかり行っていきます。当院では完全オーダーメイド(自由診療の場合)による不妊治療で、患者様一人一人に合った無駄のない、効果的な治療を提供していきます。

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