はじめに

近年、日本では、晩婚化・少子化にともない、将来における人口減少が社会的な問題となっています。
女性の20歳代~30歳代は、医学的に妊娠・出産に最も適した時期(妊娠適齢期)ではありますが、一方で女性の社会進出に伴い、医学的妊娠適齢期と実際に女性が結婚し、家庭を持ち、子供を持つ選択をされる時期が必ずしも一致しない状況が起こっており社会問題となっています。女性が医学的妊娠適齢期を過ぎ、いざ子供を持つことを考えた時、加齢に伴う妊孕性の低下(妊娠率低下、流産率上昇)が起こり、必ずしも女性が希望する妊娠、出産が実現できないという事態が近年益々増えてきています。
一般的には、女性の年齢が35歳を過ぎると急激に妊孕性が低下すると言われており、これはいわゆる“卵子の老化”と言われて社会的にも認知されるようになってきました。晩婚化や妊娠・出産より職業上のキャリアを大事にしたいとする女性が増えたこと、一方で加齢による妊娠への影響が広く知られることになったことが、子供ができない状態になる前に卵子の凍結を行う「社会的適応による卵子凍結」が広がった背景にあると思われます。
以上のような社会的な状況を踏まえて、日本生殖医学会は2013年に「未受精卵および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」を報告し、医学的適応による卵子凍結に加えて、社会的適応による卵子凍結について、その要件と施設要件を定めています。基本的に、日本生殖医学会のガイドラインでは、社会的適応による卵子凍結を推奨はしていません。これは学会としては生物学的、医学的状況を優先すべきという立場であり、すなわち、40歳以上では十分な卵子の獲得が難しいこと、45歳以上では妊娠自体のリスクが高いという医学的な事実を考慮してそのような立場をとっています。
当院では、このような社会的ニーズを踏まえ、しかし一方では学会の示すガイドラインを遵守しながら、社会的適応による卵子凍結を必要とされる患者様へ一定の条件の下、卵子の凍結保存を実施することといたしました。

対象

卵子凍結(社会的適応)は、加齢により卵巣機能の低下が予想され、本件を施行することが妊孕性の温存になると判断された、下記のような方が対象となります。

  • 理想とする結婚相手に、なかなか巡り会えていない方
  • しばらくの間、仕事を優先したい、もしくは優先せざるを得ない状況にある方
  • 親族の介護など家庭的な状況で、今すぐの妊娠・出産が難しい状況にある方
  • 夫の海外赴任などの理由で、今すぐに妊娠を目的とした治療が困難な方
  • その他、実施を希望される方で、学会の示すガイドラインを逸脱しない方

方法

卵巣剌激・採卵

自然に育つ卵子を採取する方法もありますが、より確実にかつ複数個の卵子を採取するため、排卵誘発剤を使って卵巣刺激を行い、複数個の卵胞を育てて採卵を行い、なるべく1回の採卵で効果的な治療を目指します。卵子は、超音波画像で卵巣を確認しながら、腟の壁越しに卵巣内の卵胞を針で穿刺し、卵胞液ごと吸引・回収します。

卵子の凍結保存

妊娠を希望する時期まで、卵子(未受精卵子)を凍結保存しておくことにより、将来の妊孕性を温存することができます。現在では、未受精卵の凍結保存技術が進歩し半永久的に卵子の保存が可能となりました。採卵により回収された卵子は、Vitrification法(ガラス化凍結法)を用いて凍結し、液体窒素中に保管されます。この方法で凍結した卵子の融解後の生存率は、80~90%といわれています。

融解後の顕微授精と胚移植

将来結婚するなどされ、パートナーの精子を用意できるようになった段階で、妊娠を希望された場合は凍結しておいた卵子を融解して顕微授精を行い、得られた受精卵を培養して胚移植することになります。
※凍結卵子は通常の体外受精(ふりかけ法)では受精ができないため、顕微授精が必要となります。

凍結卵子を使用する際には以下の要件を確認いたします。

  • 婚姻など凍結卵子を使用するための要件が整っていること。
    (事実婚の場合は事実婚を証明する書類の提出が必要です)
  • 患者さんが、凍結卵子を使用して児を得ることを希望していること。
  • 凍結卵子の使用にあたっては、日本産科婦人科学会「体外受精・胚移植」の会告に従って実施いたします。

基本的に、日本生殖医学会では、社会的適応による卵子凍結自体を推奨はしておりません。そのため、この方法の実施にあたっては、予想されるメリット・デメリットをよく考慮いただいた上で、患者様に最善の選択をしていただくことが必要です。

社会的適応による卵子凍結で予想されるメリット

卵子を採取、凍結保存することにより、加齢による妊孕性の低下を回避し、将来、お子さんを得られる可能性があります。

社会的適応による卵子凍結で予想されるリスク

  • 卵巣刺激により、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症することがあります。
  • 採卵の際に、出血が起こる場合があります。
  • 卵巣を穿刺しても、正常な卵子が採れない場合があります。
  • 凍結された卵子が、融解後に死滅、変性している場合があります。
  • 凍結された卵子が、融解後に生存していても、その後の顕微授精、体外培養の過程で死滅、変性し、移植できない場合があります。
  • 凍結した卵子から発育した胚を移植しても、妊娠できない場合があります。
  • 卵子凍結における採卵あたりの妊娠率は一般的に10%~20%程度とされています。そのため将来の妊娠の可能性を少しでも高くするためには、なるべく多くの卵子を保存する方が有利となります。

費用について

費用については別途定めます。希望される患者様については、スタッフより詳細を説明いたします。
(卵巣刺激の方法、採卵時の麻酔の有無、獲得できた卵子数、凍結する卵子数により値段が変動します)

男女の産み分けについて

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