Kissで不妊がうつる!?・・かもしれないという衝撃|クリニックブログ
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2016.07.20
不妊症
Kissで不妊がうつる!?・・かもしれないという衝撃
恋愛の国イタリア発 熱〜いKissにご注意を
Julie Andrews & Rock Hudson Darling Liliより
先日、イタリアの研究グループが、PLOS oneにHHV-6A(Human Herpes Virus-6A=ヒトヘルペスウイルス6A型)の感染とUnexplained Infertility(原因不明不妊症)との関連について以下のような発表を行いました。↓↓
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0158304
これによりますと、原因不明不妊症とされた患者の約43%で、子宮内膜細胞へのHHV-6Aの感染が確認されたとしています。一方不妊でない女性の子宮内膜にはHHV-6Aが確認されなかったそうです。HHV-6は乳幼児の突発性発疹の原因ウイルスとしても知られています。HHV-6にはHHV-6AとHHV-6Bの2つのタイプがあることが知られていますが、今回原因不明不妊症との関係が注目されたのはHHV-6Aの方になります。HHV-6A陽性不妊症の患者では、同じく不妊症でもHHV-6A陰性の患者や不妊症でない方と比べてNK細胞(Natural Killer Cell)活性が異なっており、またHHV-6A陽性患者ではIL-10(インターロイキン10)やIFN-γ(インターフェロンγ)などのサイトカインと呼ばれる物質を介して、免疫系がTh1>Th2に傾くことなどが知られているようです。(不妊症患者では一般的にTh1>Th2にシフトしていることが多いとされています)
HHV-6Aはどこからやってくるのか?
HHV-6Aは健康な方の唾液中や精液中にも含まれていることが知られており、キスや性交渉で伝播する可能性が考えられます(性感染症の一種という捉え方もできるかもしれません)。また母子のスキンシップによって母親から子供へ伝播する(垂直感染)可能性も考えられています。このウイルス自体は健康な方でも保有していることがあり、普段は体内で潜伏して人体へ殆ど影響を及ぼさず、いわば共存していると考えられています。免疫不全状態や免疫抑制剤の使用下など、免疫状態が極端に低下した際に体内に保有しているウイルスが再活性化して人体へ影響を及ぼす機序が考えられています。
実はまだ分かっていないことが多いウイルス
HHV-6は、1986年に発見されました。現在8種類(HHV-1〜HHV-8)確認されているヒトに感染するヘルペスウイルス族のうちの一種ですが、実はまだよく分かっていないこともたくさんあるウイルスのようです。健康な人の体内にも確認されているウイルスであることから、おそらく元々病原性が低く、免疫不全状態など特殊な状況下で活性化されて人体に悪影響を及ぼす可能性はありますが、普段は人間の免疫系によって活動が抑えられており、長い期間、人類と共存してきたウイルスであろうと推測されます。今回原因不明不妊症との関連が指摘されましたが、このウイルスに対する知見が今後さらに増えることで、これまで原因不明とされた不妊症の一部の方では詳細な原因が解明される可能性が期待されます。
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