鉄不足、冷え、不妊 全てはリンクする|クリニックブログ

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2017.02.03

不妊症

治療

鉄不足、冷え、不妊 全てはリンクする

鉄不足、冷え、不妊、全てはリンクする

冷えは不妊症の患者様に共通して多い症状です。冷え性と不妊症は鉄不足というキーワードで密接につながっています。本日はその辺りを少し考察してみます。

”冷え”とは?

冷えとは一言でいうなら、体内でのエネルギー(ATP)産生が低下した状態です。

生命活動に必要なエネルギーのほとんどは、細胞内のミトコンドリアからATP(エーティーピー)の形で供給されます。ATP産生はミトコンドリアの主たる機能であり、これに関わる多くのタンパク質がミトコンドリアの内膜やマトリックスと呼ばれる部分に存在します。細胞内の細胞質と呼ばれる部分には解糖系という経路があり、グルコース(ブドウ糖)を代謝することでピルビン酸とNADHを生じます。もし酸素が十分に存在しない場合にはグルコースは嫌気呼吸により代謝され、最終産物は乳酸になります。(激しい筋肉運動や無酸素運動の際はこの反応が起こります)。しかし十分な酸素の存在下ではミトコンドリアでの好気呼吸(有酸素運動)を行うことで、嫌気呼吸と比べてはるかに効率よくATPを得ることができます。嫌気性分解では1分子のグルコースから2分子のATPしか得られなかったのが、好気性分解では1分子のグルコースから38分子のATPが合成されます。激しい筋肉運動では嫌気性解糖が主体となるため、乳酸が蓄積しやすく、1分子のブドウ糖から2分子のATPしか作られないためエネルギー効率が悪く疲れやすく、持久力が続きません。一方、有酸素運動では1分子のグルコースから38分子のATPが作られるため、エネルギー効率がよく、疲れにくく持久力が維持できます。冷えを解消したいなら、ミトコンドリアの代謝を上げ、より多くのATPを効率よく作ることが必要です。このミトコンドリアの好気性分解は、ミトコンドリア内膜に存在する電子伝達系での反応が中心となっています。つまり、より効率よく細胞内でエネルギーを産生させるためには、この電子伝達系の働きを活発にさせることが重要になってきます。

400px-Mitochondrie.svgミトコンドリアの一般的な構造

1、内膜

2、外膜

3、クリステ

4、マトリックス 648px-Mitochondrial_electron_transport_chain—Etc4.svg

 

ミトコンドリア内膜に存在する膜貫通タンパクで行われる電子伝達系の模式図

鉄不足→エネルギー(ATP)産生低下→冷えという流れ

Cytochrome_C_Oxidase_1OCC_in_Membrane_2生体内における鉄の主要な役割はヘモグロビンとしての組織への酸素運搬ですが、鉄はミトコンドリアにおけるATP産生(エネルギー産生)においても重要な役割を担います。ミトコンドリア内膜の電子伝達系のシトクロームcオキシダーゼ(complexⅣ=左図)という酵素は鉄含有タンパクであり、鉄の存在下で働きます。complexⅣは電子伝達系の最終酵素としてATP産生に関与します。鉄不足ではこのcomplexⅣの働きが阻害され、電子伝達系が十分機能せず、十分なATP産生が出来ません。ATPはすべての生命活動に必要なエネルギーであり、車で言うところのガソリンと同じです。ガソリンのない車はエンジンがかかりませんし、エンジンは冷えた状態になりますね。(人間の冷えと同じ原理です)

鉄不足と不妊症との関係

不妊症には様々な原因がありますが、不妊症を、エネルギー産生の低下=生命活動の停止という視点で捉えることができます。すなわち、生物が生命活動を続けて生き続けるためにはエネルギー(ATP)が必要なわけですが、体内の鉄が不足した環境下では、ミトコンドリアの電子伝達系の酵素が十分に作用することができず、ATP産生が低下します。受精卵の発育停止=生命活動の停止と考えれば、生命活動の源であるATPの不足(=エネルギー不足)が不妊症の原因の一つになり得ることが想像できます。(もちろん、これだけが不妊症の全ての原因という訳ではありませんが)。例えば、これまでに何回も体外受精を繰り返しているのに、良質の受精卵ができない、胚盤胞まで育たない、受精卵を何回移植しても着床しない、などの患者様では、受精卵が発育停止している可能性が考えられる訳ですが、この原因の一つとして体内の鉄不足によるエネルギー産生の低下が関与している可能性は考えられます。(もちろん、受精卵そのものの染色体異常などの場合もありますが)。つまり、体外受精反復不成功の原因の一つとして受精卵が生き続けて赤ちゃんになるために必要なエネルギーが不足していると考えることが出来るわけです。

冷えの改善、不妊の改善のためには鉄そしてタンパク質を補え

14642316_1524788094213895_6906061834646892940_n冷え、不妊をエネルギー不足(ATP産生の低下)という視点で捉えると、その共通の治療法は鉄を補充することにつきます。つまり体内の鉄含有量を増やすことです。日本人女性の多くは月経による鉄の喪失、貧相な食生活(鉄、たんぱく質不足、糖質過多)の影響により潜在性鉄欠乏(低フェリチン)の状態です。体内の鉄を増やし、フェリチン(=貯蔵鉄)を上げることがすなわち冷え性の改善につながり、不妊の治療にもなると考えられます。(当院ではそのように考えて、不妊症患者のフェリチンをあげることに躍起になっているわけです)。鉄の吸収をあげる方法として、ビタミンCやビタミンEの摂取も有効です。また、フェリチンはそもそも鉄結合タンパク質であるため、タンパク質が不足した状態では鉄だけ摂取してもなかなか上がってきません。鉄と同時にタンパク質の摂取が必要です。以下、当院の過去記事になりますが、フェリチンと不妊症、食事と不妊症の関係についての記載です。ぜひご参照ください。

鉄不足と不妊症

肉食のすすめ その1

肉食のすすめ その2

妊娠初期の鉄欠乏と出生体重の関係

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