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体外受精で卵が1個も回収できなかったら考えること・・EFSについて

Empty Follicle Syndrome(EFS)とその対策
Empty Follicle Syndrome(EFS)について聞かれたことのある方はおられますでしょうか?適当な和訳がなかなかないのですが、体外受精の採卵時に卵子が1個も回収できない状態を言います。自然周期などで単一卵胞しか育たない場合は、卵子回収できない事も割とよくありますが、高刺激法を行い、一見たくさんの卵胞が育ったにも関わらず、採卵してみると1個も回収できないような状態を特にEFSと言ったりします。この状態は、採卵を行なった患者様に相当の失望感をもたらす事もありこれまでもいくつかの文献で原因や対策が論じられて来ました。
まず、EFSが起こり得る状況として、
1、トリガー不全
これは、採卵決定時にGnRHaまたはhCGを採卵の34〜36時間前に投与して成熟卵子への発育を促しますが、これらの薬剤の作用が何らかの理由(先天性に感受性が低かったり、単なるヒューマンエラーであったり)でうまく作用しないと起こり得ます。
2、low AMH(卵巣機能不全)で卵子が取れない
この場合はそもそも発育する卵胞数も少なくなる傾向にありますが、仮にいくつかの卵胞が育った場合に、採卵しても1個も卵子が回収できない場合にEFSを疑います。これが原因の場合はなかなか有効な対策がありませんが、刺激の方法を変えるなどしてみると次回以降の採卵で卵子回収ができたりする場合もあります。
トリガー不全について
トリガーとは引き金という意味で、卵胞成熟を促し、成熟卵子を取るために体外受精では肝になる部分です。GnRHa点鼻薬か、hCG注射を使います。GnRHaは自身の下垂体に作用して下垂体からのLH分泌を促し、自分の体から出るLHサージで卵胞成熟を促すことから、内因性トリガーと言ったりします。一方hCGは外からLH類似作用のあるHCGを注射することから外因性トリガーと言ったりします。どちらの方法が使えるかについては、卵巣刺激の方法によっても異なりますが、GnRHaトリガーは、short法、long法などのGnRHaで下垂体抑制をかける方法の場合は使えません。一方、自然周期、クロミフェン刺激、アンタゴニスト法などの場合はGnRHa、hCG共にトリガーとして有効です。
EFSへの対策
EFSのおこるメカニズム自体がまだ全て解明された訳ではありませんが、トリガー不全によるEFSの場合に次回以降の採卵で取り得る対策として、ダブルトリガーにする(GnRHaとhCGを両方使ってトリガーする)、hCGの投与量を増やす(例5000単位→10000単位)などが考えられます。ただし、hCGは多数の卵胞が育った周期ではOHSS(卵巣過剰刺激症候群)の原因になる場合もあるので、なかなか使いづらい点もあります。前周期にショート法やロング法でEFSで卵子が取れなかった方については、アンタゴニスト法やクロミフェン刺激などに変えてみて、ダブルトリガーとしてみるなどは有効な方法である可能性があります。このメカニズムとしては、何らかの理由で体質的にhCGに対する感受性が低い(受容体等の問題)方の場合に内因性のLHサージを誘発するGnRHaが有効であったり、また逆に、GnRHaスプレーだけで卵子が全く取れなかった方に、次回以降の採卵周期でhCGを併用することで、内因性LHサージが不十分なためにトリガー不全を起こした方では有効に作用したりなどが考えられます。
EFSの発生頻度は全ART周期の0.6〜7%程度と言われており、100周期あたり数件程度は発生するようです。実際にこれに見舞われると治療を受ける患者様としては非常にストレスフルなため、特にpoor responderと呼ばれるlow AMHの方などに対しては当初よりダブルトリガーで臨むなどの対策を行っても良いかもしれません。
EFSについては以下のような文献がありました。↓↓
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4678451/
https://academic.oup.com/humrep/article/15/5/999/606857
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