人為的卵子活性化(カルシウムイオノファー処理)について|クリニックブログ

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2017.12.15

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人為的卵子活性化(カルシウムイオノファー処理)について

ICSI(顕微授精)の低受精率改善のための方策

一般的に顕微授精の受精率は70〜80%程度と言われています。顕微授精を行うと必ず受精すると思っておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそのようなことはありません。20〜30%の割合で受精しない卵子が存在します。ところで、これまで顕微授精を行っても受精率が低かったり(受精率が低いというのは顕微授精の平均受精率70~80%より低いという意味です)、あるいは1個も受精が成立せず、受精卵が確保できなかったという経験をされた方もおられるのではないでしょうか?。これはある意味真の受精障害(卵子の質やICSIの手技的な理由ではないという意味で真の受精障害と敢えて表現します)と捉えることができます。受精障害とは成熟卵子(MⅡ卵子)に対して顕微授精や媒精(体外受精)を行っても受精が成立しない場合を言います。受精障害の原因は卵子側、精子側それぞれにありますが、その中で特に精子側の要因の一つに卵子活性化障害というものがあります。そして、精子による卵子活性化障害に対しては、人為的卵子活性化という方法によって顕微授精の受精率改善を期待することができます。

受精が成立するメカニズムとして、精子が卵子に到達後卵子の透明帯を破り、卵子細胞膜に到達した際に、精子側から分泌されるPLCζ(ゼータ)とよばれる物質が卵子細胞内の小胞体に働きかけ、小胞体からのカルシウムイオンの放出を促進、この際カルシウムイオンの放出は律動的に起こることが知られています(波状分泌)。小胞体から放出されるカルシウムイオンによって卵細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇、これにより受精のプロセス進行に必要なシグナルが伝達していきます(これを卵子活性化と言います)。つまり受精が成立するためには精子側の働きかけによる卵子の活性化という現象が非常に重要になります。

精子側の卵子活性化因子の欠損など何らかの理由で卵子活性化が進行しないことが受精障害の原因の一つとして考えられます。また、顕微授精の場合は、卵子に針を刺して精子を注入した時点で通常は卵子が活性化しますが、顕微授精では卵子細胞膜への精子の接着がなく、結果としてPLCζ放出がバイパスされるため(ここがconventional IVFとICSIの受精過程における大きな違いです)、卵子の活性化に必要な卵子細胞内カルシウム濃度の上昇が不十分な場合があると言われています。そのような時に有効なのが人為的卵子活性化です。この卵子活性化処理法にはいくつかの方法がありますが、当院ではカルシウムイオノファー処理法というものを行っております。これは、顕微授精を行った卵をカウシウムイオノファーという薬剤で処理し、強制的に細胞外のカルシウムイオンを細胞内へと拡散させることにより卵子の活性化を促す方法です。

顕微授精の平均受精率が70〜80%とされています。平均受精率より低い場合、様々な要因がありますが、卵子活性化障害が原因の低受精率の場合は、人為的卵子活性化法を試みる価値はありそうです。もちろんこの卵子活性化法は全ての方に有効というわけではありません。厳密に適応を選んで行われるべきです。

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