妊娠初期の鉄欠乏と出生体重の関係|クリニックブログ
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2016.06.25
不妊症
妊娠初期の鉄欠乏と出生体重の関係
大きく元気な子供を産むために
妊娠初期のフェリチン低値(=貯蔵鉄不足)は低出生体重の原因になる
これまでにもフェリチン低値が不妊症の原因になるということをお伝えしてきました。↓↓
今回ご紹介するのは、妊娠初期のフェリチン低値(貯蔵鉄不足)が低出生体重と関係するという内容です。2012年にスペインのグループがHuman Reproduction に発表した論文です↓↓。
http://humrep.oxfordjournals.org/content/27/5/1260.full?sid=4dbb7814-e90c-44c3-8dbe-047baaee8554
これによりますと、妊娠初期に鉄欠乏状態であった妊婦は妊娠初期に鉄欠乏のなかった妊婦に比べて全妊娠期間を通じて鉄欠乏が持続する割合が高く、出産した児の体重が小さい傾向にあったとしています。出生児の体重は妊娠期間中に鉄欠乏がない方が大きく、さらに妊娠期間中を通して十分な貯蔵鉄量を確保するためには、妊娠初期か、もしくは妊娠前からの鉄欠乏の解消、鉄の充足が大変重要ということのようです。
出生体重の小さな子供は、外的なストレスに弱く、感染症などの影響も受けやすい・・・というのは想像に難くありません。昔は”小さく産んで大きく育てる”が理想とされてきましたが、現在この考え方は否定されています。
ここから先は私見になりますが、
フェリチン低値(鉄欠乏状態)による不妊症、フェリチン低値による低出生体重児、などはすべてが自然の摂理にかなった現象であるように思われます。人間は高度の鉄欠乏状態(=かろうじて生命を維持できるギリギリの状態)では、生殖(子孫を残すこと)よりも自身の生命の維持を優先させます(生きていくことを優先して生殖機能を抑制する=不妊になる)。また、妊娠、出産は自身の生命を危険にさらすほどのリスクを伴います。仮にこのような状況下で妊娠してしまった場合には、宿した生命を無事に出産する(=子孫を残す)ことよりも自身の生命を維持することが優先されます(=子供に十分な栄養が行き届かず低出生体重児になる)。つまりフェリチン低値(鉄欠乏状態)の結果としての不妊症や低出生体重は全てが一つの線として繋がっているのではないか・・・と考えています(あくまでも私の勝手な私見かもしれませんが・・)
まとめ
妊娠前からの鉄欠乏状態の改善によって妊娠しやすい体となり、さらに、強く丈夫な子供を産むことができます。妊活は妊娠を意識してから始まるのではなく、妊娠を意識する以前から始まっているのかもしれません。現在妊活中の方はもちろんですが、妊活はまだ遠い先の話・・・という方も、将来の不妊症予防のため、そして将来元気な子供を産むために、今から鉄欠乏状態を改善するような生活習慣(鉄分の多い食品の摂取、鉄の吸収を促進するビタミンC、Eの摂取など)を取り入れてみてはいかがでしょうか?
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