間違いだらけの不妊治療|クリニックブログ
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2017.01.30
不妊症
治療
間違いだらけの不妊治療
この度、院内書籍を更新しました。その中から、最近私が座右の書として信奉しております浅田義正先生の”間違いだらけの不妊治療”の中から格言ともいうべき言葉を紹介させていただきたいと思います。こちらの書籍は貸し出しも行っておりますので、この機会にぜひお手にとってお読み下さい。
まわり道や寄り道をするからお金がかかる
的確な治療で早く妊娠すれば結局のところ安くあがります(書籍の中でもそのように述べられています)。なるべく1回の採卵、1、2回目の胚移植で妊娠、余力を残して卒業した方がその後の出産、子育てもスムーズですし、第2子を考える余裕も生まれます。
間違いだらけの不妊治療その2
基礎体温はあてにならない
基礎体温は医療機関での不妊治療には必要ないと思っています。(私も同じ考えです)
基礎体温で排卵が分かるほど正確ではないですし、基礎体温の測定自体がストレスになる方も多いと思います。何より基礎体温は上がったことで排卵があったかもしれないということが事後的に分かるだけのことなので、これから先の排卵予測には全く役に立ちません。なので、当院では、精神をすり減らして基礎体温を一生懸命測ることで得られることはあまりないと考えています。
間違いだらけの不妊治療その3
不妊治療とは精子と卵子の出会いを助けること
不妊治療に対して誤解をされている方が多いのですが、不妊治療は単に排卵日を予測してSEXをさせることではありません。本来の目的は精子と卵子の出会いを助けて受精をさせることです。出会いを助けるための方法として人工授精や体外受精があります。タイミング法=不妊治療と誤解されている方も多いと思いますが、排卵が順調で卵管が詰まっておらず、精子もたくさんいれば、本来は自然に妊娠するはずです。そういう方は何も病院でタイミング法をしなくても自宅で普通にある程度回数のSEXをすれば本来は一番妊娠するはずです。それで妊娠しないということはどこかに問題があって精子と卵子が出会っていないということになるはずで、ここより先の治療で精子と卵子を出会わせることが本当の意味での不妊治療ということになります。
妊娠できない状態を変えるために薬を使う
”排卵誘発剤を使いましょう”というと、”薬は使いたくない”とか、”体に対する負担は?”とよく聞かれる方がおられます。排卵誘発剤は適切な排卵を促し排卵しにくい状態を変えるための薬です。薬を使うことによる体への負担はどんな薬でもないとは言えません。(どんな薬でもアレルギーを起こす可能性はゼロではないですし副作用の可能性が全くない薬というものは存在しません)。また、これから妊娠を希望される方では、そもそも妊娠するということ自体が体にとっては最も負担になることであります。妊娠できない状態を変えるために薬を使うのです。その目的をよく理解しましょう。
しばらく様子をみましょうは危険なささやき!?
卵子の老化のことを真剣に考えたなら、特に30代後半の不妊治療患者様に対して”しばらく様子をみましょう”はあり得ない選択です。しばらく様子をみている間にも卵子の老化はどんどん進んでいきます。あなたは危険なささやきに騙されてはいませんか??
”仕事第一”の考え、いったんストップ!
不妊治療は女性の体の状態、さらに言えば、卵胞の発育の状態によって受診日が決まってしまいます。当院では患者様によく、”治療成功の鍵は自己都合ではなく卵都合で受診を”と促しています。当院では、”○○曜日しか受診できないので○○曜日に予約して欲しい”と、お電話をいただく患者様が時々おられます。(特に土曜日が多いです)。土曜日が仕事が休みなのでという、そのお気持ちは分からなくはないですが、治療の必要上、その曜日に受診が必要な患者様以外はお断りしています。治療上の必要日と全く関係ない日に来られても特に何もすることがないからです。結局ほとんど意味のない無駄な検査に無駄なお金を払うだけになりますので、むしろ例えば土曜日なら旦那様とお出かけしたり、お食事に出かけたり何か違うことに時間とお金をかけた方がずっとよいと思われます。
40代で”自然妊娠したい”なんて不自然な話
生物としての人間の最も妊娠しやすいピークはおよそ25歳といわれています。そこから先は妊孕性は加齢とともにどんどん低下する一方とされています。正直やはり40歳以上の不妊治療は厳しいものがあります。なので40歳以上の患者様で自然妊娠を狙うというのは我々生殖医療の専門家からすると正直なかなかあり得ない話なのです。しかし、その点を初めて来られた不妊治療が全く初めてという患者様に理路整然と説明し納得していただくのは実は中々難しく骨の折れることなのです。なので、このようなブログやSNSを通じて広く世間に啓蒙していくことが重要だろうと考えています。
間違いだらけの不妊治療その8
妊娠適齢期・出産適齢期にはタイムリミットがある
生物としての人の妊娠しやすさのピークは先ほども述べたように25歳ぐらいとされています。世の中の衛生状態や医療の進歩で人間の平均寿命はどんどん伸びてきましたが、残念ながら妊娠適齢期、出産適齢期は太古の昔とほとんど変わっていないとされています。女性が社会に進出し、キャリアを積み、男性と同じように働ける時代になりましたが、子供を産めるのは唯一女性だけであり、その子供を産むということができるのは残念ながら女性の一生のうちのごく限られた時期にしかできないことなのです。そのことがあまりにも知られていないのが今の世の中です。
間違いだらけの不妊治療その9
あなたに残された時間、どう使いますか?
ここから先は皆様ご自身でよくお考えください。人生は一度きりしかありません。ご夫婦でよく考えて悔いのない治療を受けていただき、悔いのない人生を過ごしていただきたいと思います。
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