摂取脂肪酸の種類と精子運動率の関係|クリニックブログ
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2018.02.03
不妊症
治療
摂取脂肪酸の種類と精子運動率の関係
男性にも出来ることがあります
不妊症の半分は男性因子(男性側に原因がある)と言われています。最近当院でもご夫婦で一緒に来院される患者様も増え、不妊治療への男性の参加が徐々に浸透しているのではないかと感じるところです。そのような患者様からいただく質問の中で最近多いのが、”夫である私に何か出来ることはないですか?”というような類のものです。生活習慣が妊孕性に影響するということは常日頃お伝えしているところではありますが、そのような中から、摂取する脂肪酸の種類が精子運動率に影響するという論文を紹介します。
Dietary fatty acid intakes and asthenozoospermia: a case-control study
出典は2015年のFertility&Sterility(アメリカ)です。テヘラン(イラン)のグループが発表しています。学問の世界では政治的な対立(アメリカ vs イラン)は関係ないという意味でも興味を持ちましたので紹介します。
これによると、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の摂取が多い男性は精子無力症の発症が多く、逆にオメガ3系多価不飽和脂肪酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)などの摂取量の多い男性は精子無力症のリスクを減らすということが述べられています。(精子無力症とは精子の運動率が非常に低い状態です。定義上は精子運動率が40%以下、前進運動率が32%以下のことをいいます。)
不健康な食品の代表としてよく取り上げられるのはトランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング)やこれらを多く使った菓子類(菓子パン、ケーキ、スナック菓子、フライ製品など)、ファストフードなどです。一方、健康によい油(脂肪酸)とされるオメガ3の代表としては、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、αリノレン酸(えごま油、亜麻仁油)が有名で、EPA、DHAは魚油として特に青魚(アジ、サバ、イワシ、さんま等)に多く含まれるとされています。EPAやDHAの摂取が動脈硬化や心血管疾患の予防に関与したり、最近ではうつ病の予防にも関与しているなどの報告もあります。
DHAを効果的にとる方法として、サバ缶がオススメです。煮汁の中にDHAが溶け出しているので、汁も捨てずに余すことなく調理に使いたいところです。ただし、味付けのされているものは砂糖を大量に使っていたり、また濃い味付けでかえってご飯(糖質)の摂取が進み肥満に繋がる可能性もあるので、水煮で購入して薄味の調理を行うのが良いのではないかと思います。(サバ缶とDHAの関係)↓↓
油を選ぶ(つまり、普段口にする食事をしっかり吟味する)ことが自身の健康のみならず、精子の健康(精子の運動率を上げる)にも繋がっています。摂取する脂肪酸の種類によって精子運動率を改善し、妊孕性を高めることになると言えます。普段の食生活、生活習慣に気を配ることは、男性にもできる妊活の方法の一つではないでしょうか?
摂取脂肪酸と精液所見の関係については、以下の当院関連ブログもぜひご参照下さい。↓↓
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