Blogクリニックブログ

顕微授精までやったけど受精しなかったら・・・AOAについて

受精障害に対する人為的卵子活性化(Artificial Oocyte Activation)の可能性について

状況にもよりますが通常、一般体外受精の受精率は70%〜80%程度、顕微授精では80%以上の確率で受精します。明確な受精障害の定義というものはありませんが、一般体外受精、顕微授精の平均的な受精率を明らかに下回るような状況で受精障害を疑います。また、一般体外受精のおよそ13%、顕微授精のおよそ6%程に受精障害が発生するという報告があります。受精障害という病態は必ずしもその原因が全てはっきりしている訳ではありませんが、IVF(体外受精)を行うことで初めて判明しますので、長期不妊の患者様については、その可能性も念頭に早めにIVFへステップアップを考えるというのも一つの選択となり得ます。
男性因子が明らかに否定的(精子は見かけ上全く問題ない)な場合には、通常は一般体外受精(cIVF)による受精を試みますが、その結果受精障害が疑われた場合には、次の選択肢としてICSI(顕微授精)を選択します。通常、顕微授精は明確な男性因子(精子の数が少ない、運動率が極端に低い、奇形精子が多いなど)の夫婦に選択しますが、cIVFで受精障害が疑われた場合にも行います。ICSIを行うと通常受精卵を獲得できるケースが多いですが、それでもおよそ6%程度に通常のICSIでも受精しないケースがあると言われます。このようなケースで、人為的卵子活性化(Artificial Oocyte Activation=AOA)を行います。
AOAにはいくつかの方法がありますが、カルシウムイオノファーという特殊な試薬を使用する方法がよく使われています。精子と卵子の受精が起こる際に、卵細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇することが、受精反応の段階的進行(これをカスケードと言います)に必要と言われていますが、受精障害の患者様では細胞内カルシウム濃度の上昇が何らかの理由でうまく行かないため、受精のカスケード進行が停止、その結果受精しないという結果に繋がるのではないか?と解釈されています。カルシウムイオノファーは卵細胞内のカルシウム濃度の上昇を助ける試薬として使われます。
今回の論文は、2017年のFertility and Sterilityに発表された、受精障害に対してCaイオノファーを使った14件の研究をまとめたメタアナリシスです。メタアナリシスとは、過去に独立して行われた複数の研究のデータを統合し、統計的方法を用いて解析したもので比較的質の高い根拠が得られるとされています。
結果的には、受精障害に対してCaイオノファーを使用した群では、臨床妊娠率(胎嚢確認まで)、生児獲得率、いずれにおいても従来の方法の群と比べて改善が見られたとしています。また、受精率、分割率、胚盤胞率、着床率のいずれのパラメータでも改善が見られたとしており、これらの各段階での結果の向上が最終的には臨床妊娠率と生児獲得率の向上に寄与したと結論づけています。
カルシウムイオノファーの有効性についてのメタ解析
ただし、Caイオノファーについては、出生児の長期予後の検討など残された課題もあるとされており、今後の研究が待たれる分野です。闇雲に用いるのではなく、適応を厳密に判断することで、これまで原因不明の受精障害としてなかなか結果を出せなかった患者様に対して有効な手段となる可能性が考えられます。
PageTop