孵化補助(Assisted Hatching)について|クリニックブログ
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2017.12.09
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孵化補助(Assisted Hatching)について
アシステッドハッチングとは?
アシステッドハッチング(Assisted Hatching=AHA)とは、受精卵の周りを囲む透明帯という殻の一部または全体を切除することで胚を孵化(hatching)しやすくしてあげる処理のことをいいます(日本語では孵化補助と訳します)。現在多くの施設の生殖補助医療の現場で日常的に行われています。孵化とは、動物の卵が孵ることであり、卵から新しい個体が脱出してくることを言います。
通常、妊娠が成立するためには、受精卵が胚盤胞まで発育した後、子宮内膜上で、受精卵を包む透明帯という殻を破って卵の中身が飛び出し(この過程をハッチングといいます)、着床する必要があります。年齢による影響(一般に高齢患者の卵では透明体が硬くなり孵化が起こりにくいと言われています)や、凍結操作(凍結操作によって透明体が硬くなるという意見があります)によって、透明帯が硬くなることで、ハッチングがうまくいかなくなる=着床不全を起こす可能性が指摘されています。
2014年のASRM(米国生殖医学会)ガイドラインによりますと、AHAの適応として、以下のような項目が挙げられています。
・advanced maternal age (older than 38) → 概ね38歳以上の高齢患者
・two or more failed IVF cycles→ 体外受精の反復不成功例
・poor embryo quality→ 胚の質が不良な方
また、総括としまして、すべての患者でAHAは盲目的に勧められるものではないが、live birth rate(生産率)の向上が僅かながら見られるとしています。一方で、一卵性双胎(MZT)が増えるのではないかという意見もあります。MZTが増える理由として、人工的なhatching操作によって卵の中身の部分が途中で分かれやすくなって双子になってしまうなどの理由が考えられています。
AHAの方法はいくつかありますが、現在レーザー法(レーザーAHA)と呼ばれる方法が一般的に行われています。これは特殊なレーザーを照射して透明帯を切開する方法です。胚へのダメージが少なく安全性が高いとされています。当院でもこのレーザーAHAを採用しており、凍結胚移植の際には積極的に活用しています。当院では原則凍結ステージを胚盤胞としています。胚盤胞融解時に凍結操作による透明体の硬化の影響を考慮してレーザーAHAを実施しています。ただし、卵の状態によってはAHAができない場合もあります。具体的には、融解直後の胚の拡張が早く、透明帯と卵の中身の間に隙間がほとんどないケースや、凍結融解の時点で既に自然のハッチングが始まっているケース(Gardner分類で胚盤胞のステージ5以上のケース)では、AHAを行わない場合もあります。AHAを行う、行わないはケースバイケースですので、移植前の段階で患者様に個々にお伝えする方針としています。
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