卵巣刺激法各論(当院の場合) その2|クリニックブログ
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2016.11.06
体外受精
治療
卵巣刺激法各論(当院の場合) その2
アンタゴニスト法
当院では、現在数ある刺激法の中から、卵巣機能の比較的良好な方(AMHの数値が保たれている方。当院では概ね3.0ng/ml以上の方)ではアンタゴニスト法を第1選択としています。この方法は、排卵誘発剤(FSH製剤、HMG製剤)とGnRHアンタゴニスト(当院ではガニレストを使用)という注射剤を組み合わせて行います。GnRHアンタゴニストは脳下垂体のGnRHレセプターに作用し、ゴナドトロピン分泌を抑制する働きがあります。結果として、早期排卵の原因となるLHサージ(premature LHサージ)を抑制します。早期排卵とは排卵誘発剤を使用して卵巣刺激を行った際に、卵胞が十分発育して卵子が成熟する前に排卵してしまう現象で、この早期排卵を如何に押さえて成熟卵子を獲得できるかどうかが体外受精の結果を左右するとされています。
アンタゴニスト法のメリット
1、複数個の卵子獲得が期待できる(結果的に妊娠の可能性の高い良好胚が確保出来る)
2、トリガーにGnRHアゴニストを用いることで重症OHSSのリスクを回避できる。
3、GnRHアンタゴニストによる早期排卵の抑制→排卵によるキャンセルがほとんどない。
4、クロミフェン、自然周期等と比べてスケジュールの調節性に優れる。
アンタゴニスト法のデメリット
1、採卵あたりのコストがかかる(アンタゴニスト製剤が高額)
2、採卵に麻酔が必須(採卵日に仕事を休む必要がある)
これまで当院では、主に自然周期、クロミフェン周期、フェマーラ周期採卵を中心としていましたが、卵巣機能の比較的良好な方ではここ最近アンタゴニスト法をメインプロトコールとしています。理由はいくつかありますが、1、なるべく1回の採卵で複数の良好胚を獲得できる(少ない採卵回数で妊娠を目指す)、 2、トリガーにHCGを使わないことが可能なため重症OHSSの発症リスクが押さえられる、 3、仕事をしている患者様でもある程度スケジュールの調節性に富んでいる です。 特に3について、一般不妊治療から体外受精へのステップアップを希望される患者様は結構多いのですが、特に夜勤などをされている方から仕事と治療の両立の点で相談をいただくことが多くなりました。採卵あたり複数の良好胚を獲得する点とスケジュールの調節性という点ではロング法でもよいのですが、OHSSの発症リスクが高いという点がネックとなっておりました(当院でもこれまでに重症OHSSを経験)。よって、これら全ての条件をクリアできるという観点から、当院では卵巣機能の比較的保たれている患者様(AMHが概ね3.0ng/ml以上)についてはアンタゴニスト法を第1選択としてオススメしています。
アンタゴニスト法のデメリットはアンタゴニスト製剤のコストの面です(アンタゴニストが高額)が、なるべく初回の採卵で良好胚をしっかり獲得し、1、2回目の移植周期で妊娠できれば、結果を早く出すことが出来、何回も採卵を重ねて金銭的にも身体的にも負担をかけるよりもかえってコストが押さえられるのではないかと考えています。(当院が自然周期をやめた大きな理由の一つです)。もちろん全ての患者様にアンタゴニスト法が適している訳ではなく、卵巣機能に応じて刺激法の使い分けが必要なことには変わりありません。
当院の卵巣刺激法について、こちらも参照ください。↓↓↓
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