早発閉経(早発卵巣機能不全)に関する話題|クリニックブログ

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2020.09.02

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早発閉経(早発卵巣機能不全)に関する話題

早発卵巣機能不全(早発閉経)に関する話題

早発閉経について聞いたことのある方はおられますでしょうか?医学的には早発卵巣機能不全(Premature Ovarian Insufficiency=POI)と言ったりします。通常、日本人の平均的な閉経年齢は50歳前後と言われていますが、POIは40歳より前に卵巣機能が廃絶して月経停止してしまう病態であり、通常よりも10年も早く閉経してしまう病気です。POIは生殖年齢女性のおよそ1%程に見られるという意見もあります(これから妊娠を予定している若い女性が100人いたとしたら、その中の1人ぐらいが将来POIになる可能性があるということです。意外に多いと思いませんか??)

POIの原因について

様々な説がありますが、実はPOIのおよそ80〜90%程については原因不明(特発性卵巣機能不全)と言われています。ある日突然あなたは早発閉経ですと言われて、その原因がハッキリしないことが多いだけにショックを受ける方が非常に多いというのがこの病気です。一方、POIのうち原因が特定できるものはおよそ10〜20%ほどです。
1、染色体異常(ターナー症候群など)
2、自己免疫性疾患との関連(全身性エリテマトーデス、リウマチ、橋本病などとの関連)
3、医原性(抗がん剤や骨盤内の手術などの影響)
4、ヘビースモーカーの成れの果て
以前に当院でも橋本病との合併例を経験したことがあります。以下は仮説ですが、自己免疫疾患に確認される各種自己抗体のうち、あるものについては卵巣組織中の原始卵胞に対する攻撃性を有するものがあるのではないか?とも考えています。(自己免疫疾患は自分の体を攻撃して破壊する自己抗体ができる病気ですが、POIもまた同じ様な原始卵胞に攻撃性のある自己抗体が存在するのではないか?という仮説)

早発閉経の影響

1、不妊症
2、不眠症
3、性欲減退
4、性交痛
5、膣乾燥症
6、骨粗鬆症
7、心血管系イベント(心筋梗塞、脳梗塞など)
etc
実際、早発閉経となった場合に、妊娠できるかどうかという点がかなりインパクトがあるため不妊症ばかりが注目されがちですが、その後の長い人生を長期的に見ると、エストロゲン低下に伴う様々な影響が懸念されます。(むしろ不妊症より生命的な長期予後の方が重要かも知れません)
上に挙げた様な影響が出てきますが、生活の質(QOL)を低下させる様なもの(不眠、うつ、性交障害など)から、生命予後や健康寿命に影響するもの(骨粗鬆症は高齢女性の骨折の原因の一つで、寝たきりの最大の要因とも言われています)までその影響は計り知れません。

予防と対策

POIの話をすると必ず出てくるのが、じゃあどうしたら良いの?ということですが、残念ながら90%近くがそもそも原因不明なのでこれをしたら絶対になりませんという予防法がそもそもありません。また、原因が分かった場合でも、染色体異常や自己免疫疾患など、根本的に治せるものではないことから、これも対策が難しいというのが正直なところです。唯一できることとしては、タバコを吸ってる人はいますぐやめた方がいいでしょうということぐらいです。(もちろん受動喫煙も同様です)
正直なところ、POIは一度なってしまうと現状では有効な方法がほとんどなく、明確な予防法や治療法も見つかっていない非常に厄介な病気です。

どういう検査を行うか?

早発閉経を疑う、または心配なのでとりあえず婦人科に行ってみた際に、行われる検査は主に血液検査です。
1、血中エストラジール(卵巣機能の指標)
2、AMH(自身の卵巣にどのくらいの卵子が残っているかを予測)
3、FSH(卵巣機能の評価指標)
などを採血で調べて、卵巣機能低下の有無、もしくはすでに早発閉経を発症してしまっているかどうか?などの判断を行います。

POIのマネージメントの方向性

1、不妊症としてのPOIをどうするか?
2、不妊症以外のQOL改善や生命的な長期予後の観点からの対応
に分かれると言えます。
不妊症としてのPOIに対するマネージメントですが、現状ではその有効性が確立している方法は卵子提供による体外受精のみです。ただしこれは、その方のPOI自体を治すというものではなくて、その方の妊娠したいという希望を叶える対症療法という位置付けになります。また、妊娠するしないに関係なく、その女性のQOLと長期予後の観点からの介入は必須と言えます。具体的には一般的な閉経年齢相当までのエストロゲン補充療法(HRT)が必須となります。
こうして見ますと、POI自体に対する有効な根本治療というものは存在せず、あくまでも対症療法(不妊に対しては卵子提供、不妊以外に対してはHRT)を行うという方向性にならざるを得ないと言えます。どちらにも共通しているのは失ったものを補う治療(自己卵子を失ったので卵子提供、ホルモンが作られないのでホルモン補充療法)であるという点です。

これから挙児を予定する方(妊娠を予定する方)へのアドバイス

実際、妊娠出産なんてもっと先・・・と考えている方に特に考えていただきたいのですが、実は100人に1人がこのPOIになってしまう可能性があるということです。それは実は自分かもしれません・・・実際なってしまうと治すことはできない、また、かと言って予防法すらないという、なんとも厄介な病気なのですが、それでもこの病気には”予兆”と呼ばれる状態があると言われています。それは、月経不順や3、4ヶ月ぐらい続く無月経などです。早発閉経が完成してしまう前にこの様な予兆が年余にわたって先行すると言われています。特にこれまで月経が順調だったのに突然周期が乱れた方、気づいたらそう言えば半年ぐらい生理が来てないわという方、初経以来ほとんど月経らしい月経が来ていない方、などは将来の早発閉経の予備軍とも言われています。普段の自身の健康状態の指標として、月経の状態には特に気を配っていただけたらと考えています。(しばらく生理が来なくてもほったらかしという方も多いですが・・)

なってからでは遅い!!早発閉経予備軍のうちにできること(不妊症の観点から)

実はPOIは進行性の病気であり、現在の医学では進行を遅らせたり、発症を予防したり根本的に病気を治す方法というものがありません。また、一度発症してしまうとその状態をもとに戻すことはできないと言われています。ではどうしたら良いのか・・・??それは予備軍のうちに見つけて、将来の妊娠の可能性を残す方法を考える事。もしくは今妊娠したいならとにかく早く妊娠できる方法に進むことが唯一の勧められる方法です。
将来の妊孕性温存のためには卵子や受精卵の凍結保存という方法がありますが、POIを一度発症してしまうと残念ながら自己卵子の採取はほとんど望めない可能性が高いです。また、現在妊活中の方で、POIの予備軍と思われる方については早めに体外受精へのステップアップを検討した方が良いと思われます。実際にはPOIを発症してしまうと体外受精すらできない(卵子が採れないので)ということになってしまいます。
今回の情報提供は、生殖医療の専門的な立場から言うと、POIをすでに発症してしまった方に対しては残念ながらあまり参考になる話ではないと思いますが(その方の将来的な長期の生命予後という観点からはまだ十分やるべきことはありますが、そちらは女性ヘルスケアの専門家に譲ります)、むしろこれから将来妊娠したい、子供を産みたい、と考えている方に対して参考にしていただきたいと考えています。(妊娠出産はまだまだ先だからこそ、こういう病気があるという事を知って頂き今から出来ることをやっておいた方が良いですよ・・・という内容のお話でした)
この話を読んで、結婚もまだしていないし、妊娠するのはまだ先かもしれないけど、少し真面目に自分の妊娠出産や家族計画について考えてみようと思った方、ぜひ一度当院へご相談ください。
長野県佐久市長土呂1210−1 佐久平エンゼルクリニック

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