一見地味なことの積み重ねが大きな結果を生むという話|クリニックブログ

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2018.05.08

不妊症

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一見地味なことの積み重ねが大きな結果を生むという話

プレマタニティー期の食べ物が妊娠までの時間に関係する

まず、プレマタニティー期(いわゆる妊娠する前)に食べたものが妊娠するまでの時間に与える影響についての論文を紹介します(つまり食事と妊孕性についての関係) 2018年5月号のHuman Reproductionに掲載された論文になります。

Pre-pregnancy fast food and fruit intake is associated with time to pregnancy

この中では妊娠前の普段の食事がどの程度妊娠までの期間に影響するか?つまり、食べ物の内容が妊孕性に及ぼす影響についての考察を行なっています。

5598人の特別のリスクのない単胎妊娠(双子、三つ子ではない方)について、不妊治療による妊娠と自然妊娠に分けて妊娠前およそ1ヶ月間のフルーツの摂取頻度、葉物野菜の摂取頻度、魚の摂取頻度、ファストフードの摂取頻度と妊娠までの期間について調べています。データは母体BMI、母体年齢、社会経済的な要因、人種、多嚢胞性卵巣の有無、過去の流産歴、喫煙歴、マルチビタミンサプリメントの有無、性交頻度、パートナーのBMI、パートナーの年齢等で補正を行なっています。これらの補正によりおよそ純粋なフルーツ、葉物野菜、魚、ファストフードの摂取頻度と妊娠までの期間についての関係が示されることになります。

パートナーの食事内容についての調査がないなど、この研究自体の限界はありますが、おおよその結論としては、フルーツの摂取頻度が低い(1ヶ月に1回〜3回程度)、ファストフードの摂取頻度が多い(1週間に4回以上)群では明らかに妊娠までの期間が長くなる(つまり妊娠しにくい)という結論になっています。一方、今回の調査では葉物野菜の摂取頻度と魚の摂取頻度については妊娠までの期間に影響を与えなかったとしています。(もちろん今後さらに追加の調査は必要となっています)

これまで、肥満と妊孕性の関係(肥満者は明らかに妊娠しづらくなると言われている)、喫煙と妊孕性の関係(同様に喫煙自体も妊孕性を低下させます。話がそれますが不妊治療を希望してクリニックを訪れる方の中にスモーカーである方が意外にいますが、タバコを止めることがまず第一の治療になります。強制はしませんが一応そのような話はしています)については様々な報告がありますが、妊娠前に食べた物がどの程度妊孕性に影響するかについて大規模に調べられた調査はそう多くなかったようです。その点で今回の報告は貴重な報告と言えます。

当院で特に採卵前の準備期間を設けている理由について

当院では体外受精を希望される方に十分な準備期間を設けています。(希望してもいきなり採卵には行きません。年齢的に余裕のある方に関しては平均でおよそ2、3ヶ月の準備期間を設けています。もちろん年齢的に待てない方は話は別ですが。これまでに他院で体外受精を繰り返してもなかなかうまくいかない、胚盤胞にならない、着床しないなどの患者様ではこの過程を特に重視しています。)。これには実はそれなりの根拠があります。まず、一般的には卵子形成の過程(卵子が出来るまで)はトータル約半年と言われています(原始卵胞→前胞状卵胞までが約4ヶ月、前胞状卵胞→胞状卵胞までが約2ヶ月程度、胞状卵胞→成熟卵胞までが2週間、そして排卵)。このうち後半の2、3ヶ月(胞状卵胞から排卵までの時期)は外因性の影響(環境、栄養、ホルモン等による支配)を受けると言われています(つまりこの期間に十分な栄養を摂取したり、ストレスの少ない生活を送るなどが良質の卵子を育てるために重要になってきます)。採卵前の2、3ヶ月間にしっかり調整を行う(具体的にはサプリメント等によって不足するビタミンD、鉄、DHEAなどの補充を行う、またストレスを避け卵子形成に悪影響を与えるような受動喫煙などを避ける)ことが結果として体外受精の成績を左右すると考えています。サプリメント等による調整は体外受精の付属的な位置付けというよりは、採卵に向けての既に治療が始まっている(治療の一環)という考え方をしています。(採卵前の調整が十分でない方は大体において胚盤胞到達率が低いなど採卵結果が良くない場合が多い) ただし、サプリメントによる栄養補充が治療の一環という点をよくご理解いただいてはいても、”サプリだけ飲んでいれば十分”という誤解をされている方も実は多いように思います。先述のように、妊娠前の食事が妊孕性に大きく影響を与えますので、サプリメントと共にもちろんのことですが普段の食事も大変重要です。(どちらかというとサプリより普段の食事の方が重要だと思います。普段の食事が破綻しているのでサプリの出番が必要になるわけです)。ステップアップを希望して体外受精を始める前の調整期間中に自然妊娠される方もチラホラいます。特にビタミンDや鉄などがしっかり確保されている方にそのような方が多い印象を持っています。(25OHビタミンDやフェリチンの数値が良い方はだいたいにおいて普段からの食事がしっかり出来ている方が多いと思います)。もちろん卵子形成の後半に影響を与えるような喫煙(受動喫煙含めて)、ストレスなどを避けることも質の良い卵子を育てる上で重要です。

妊活については急がば回れということが言えます。つまり普段の食事に気をつけることなどは一見地味で遠回りに見えますが、長い目で見ると実は妊娠までの最も近道であったりします。(体外受精であっても自然妊娠であっても結局は妊娠しやすい体づくりをすること=普段の食事が妊娠するための基本です)

一見地味に見えることの積み重ね(生活習慣、普段の食事等)が大きな結果を生むと言えます。大事なことなので、実は以前にも同様のつぶやきをしていました。以下の関連ブログも参照下さい。↓↓

只能く相続するを主中の主と名づく

 

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