ビタミンDとAMHの関係|クリニックブログ
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2018.01.17
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ビタミンDとAMHの関係
AMHとビタミンD
体外受精の治療成績とビタミンDの相関が指摘されるなど、近年生殖医療の分野で、ビタミンDの重要性が注目されています。ビタミンD低値の人ではAMHが低いと言うことがわかっており、ビタミンDが低値の人ほどAMHが低いということが知られています。AMHはビタミンDの影響を受けていると考えられています。
AMHに関する誤解(実は卵子数を反映している訳ではなかった)
AMHは多くの方がご存じの通り、一般にはいわゆる”卵巣年齡検査”として知られています。AMHの説明を受ける際に、”卵巣年齢が若い=卵子がたくさんあります”とか、”卵巣年齢が高い=卵子が少ないです” などの説明を受けている方も多いのではないかと思いますがこの説明は実は正確ではありません。(と、言いつつも、私自身も患者様が理解しやすい様に外来では上記のような説明をしてはいるのですが・・)。AMHは、正確には前胞状卵胞から分泌されるホルモンであり、その周期に発育する可能性のある卵胞数を予測する因子と言われています。(卵子の形成過程は、出生時点で既に卵巣内に休眠状態で存在する原始卵胞が思春期を経て月経が開始し、原始卵胞→前胞状卵胞→胞状卵胞→グラーフ卵胞→排卵となる過程を経て進みます)。卵巣内に休眠状態で多数ある原始卵胞のうち、卵子形成の過程を経て成熟卵胞として排卵できる卵胞は選ばれた卵胞のみです。この卵胞のリクルート過程の途中に当たる前胞状卵胞からAMHが分泌されるというのが正確な理解になります。なので、リクルートされる卵胞が多い方は自ずとAMHは高くなり、リクルートされる卵胞が少ない方はAMHが低くなります。元々卵巣に残された原子卵胞が少ない方(子宮内膜症や卵巣手術の既往のある方)ではそもそもリクルートされる卵子が少ない(その周期で育つ卵胞が少ない)のでAMHは当然低くなります(いわゆる、一般に卵巣年齢が高い=AMHが低い=卵子が少ない、と言われている方はこのケースです)。また、ときどき遭遇しますが、AMHが低値にも関わらず卵巣刺激に反応が比較的よく多数の卵子が取れる方や逆にPCOSで元々のAMHは高いが、卵巣刺激を行なっても思ったほど卵子が回収できなかったなどの方がいます。このような方は、AMHの検査を行った時点ではAMHが低かった(その周期はリクルートされる卵子が少ない)としても、別のある時点でリクルートされる卵子がたくさんある周期に当たれば卵巣刺激に反応して卵子がたくさん採れるという可能性があります。これまでAMHは周期による変動がほとんどないと考えられてきましたが、実は周期変動をしており、AMHの高い周期に卵巣刺激をかけると卵子がたくさん取れることがあるなど、卵巣刺激の個別化(オーダーメイド化)の点で周期始めにAMHを測定する施設もあります。
ビタミンD補充でAMHが増える
話を戻しますが、ビタミンDはこの原始卵胞のリクルートに関係しているのではないか?と言われています。ビタミンD低値の方は原始卵胞から胞状卵胞へのリクルートがうまく進まない、つまりその後の卵胞形成過程が滞るため、AMHが低くなるということが考えられています。このような方にビタミンDを補充すると、原始卵胞から胞状卵胞へのリクルートがうまく進むようになり、AMHが増える(これまでAMHは卵巣内に残っている卵子数を反映すると考えられており、それ以上数が増えない、数値は増えないと考えられてきましたがどうもそうではないらしいです)ということが考えられます。AMHが増えるということはリクルートされた卵胞が増えた(その周期で育つ可能性のある卵胞が増えた)ということなのでそこをチャンスと捉えて適切な卵巣刺激を加えれば回収卵子数増が見こめる訳です。AMHが低くて卵子回収率が低い方に、ビタミンD補充療法を行うことで体外受精の治療成績を向上させる可能性があります。
ビタミンD摂取の勧め
外来の限られた時間の中で、卵子形成過程(原始卵胞→胞状卵胞へのリクルート過程)にまでなかなか話を振るのが難しいため、AMH=卵巣年齢という限定的な話(簡潔的説明)しかできておりませんことお詫び申し上げます。AMHが低値で卵巣年齢が高いと言われた方、PCOSの方(PCOSの排卵障害の本質的な部分は正常の卵子成熟過程(原始卵胞→胞状卵胞へのリクルート)が進まないことにあります)、AMHが割と保たれているにも関わらずこれまでの卵巣刺激で満足のいく卵子数が確保できなかった方、にはビタミンDの摂取をお勧めします。(ビタミンDが充足されていると判断される数値は、血中の25OHビタミンDの数値が30ng/ml以上と言われていますが、当院患者様のデータを見るとほとんどの方が30未満であることが多いです)
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