子宮内フローラとプロバイオティクス|流産・反復着床不全への効果は?|佐久平エンゼルクリニック|クリニックブログ
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2026.09.28
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子宮内フローラとプロバイオティクス|流産・反復着床不全への効果は?|佐久平エンゼルクリニック
子宮内フローラとプロバイオティクスの有効性|原因不明の流産・反復着床不全との関係
佐久平エンゼルクリニック 生殖医療科
「良好胚を移植しても妊娠に至らない」「流産を繰り返している」――こうしたお悩みから、子宮内フローラや乳酸菌製剤について調べている方もいらっしゃると思います。
子宮内フローラと妊娠成績との関連は研究されています。ただし、ラクトバチルス製剤を使用すれば着床率・出産率が上がる、流産を防げると確立されたわけではありません。 研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを区別して考えることが大切です。
子宮内フローラとは?
子宮内フローラとは、子宮内膜などの検体から調べられる細菌の集まりを指す言葉です。「子宮内細菌叢」「子宮内膜マイクロバイオーム」とも呼ばれます。
以前は子宮内は無菌と考えられていましたが、遺伝子解析技術の進歩により、子宮内の検体から細菌由来のDNAが検出されるようになりました。
ただし、子宮内は細菌量が非常に少なく、採取時に腟や子宮頸管の細菌が混入する影響も考慮する必要があります。腟内フローラと子宮内フローラは同じものではなく、「妊娠に最適な子宮内フローラ」の基準も十分には確立していません。
ラクトバチルスとは?「90%」が注目される理由
ラクトバチルスは乳酸菌の一群です。腟内では乳酸の産生などを通じて環境の維持に関わりますが、腟内での働きがそのまま子宮内にも当てはまるとは限りません。
2016年に発表されたMorenoらの研究では、体外受精を受けた35人を対象に、子宮内の細菌構成と妊娠成績の関係が検討されました。ラクトバチルスの割合が90%を超える群では、そうでない群より着床率・継続妊娠率・出生率が高かったと報告されています。
ただし、この研究は少人数の観察研究です。細菌構成と妊娠成績の「関連」を示したものであり、ラクトバチルスを補充する治療の効果を証明したものではありません。
「90%以下なら妊娠できない」「90%を超えれば流産しない」という意味ではなく、数値だけで子宮内環境の良し悪しを断定することはできません。
プロバイオティクスは着床率を上げる?流産を予防できる?
ラクトフローラⓇなどのラクトバチルス製剤(プロバイオティクス)について、妊娠への効果を期待される方もいらっしゃいます。しかし、乳酸菌製剤の研究結果は一様ではありません。
例えば、2023年の凍結胚移植前の腟内乳酸菌補充に関するランダム化比較試験では、全体の出生率に統計学的に有意な差は認められませんでした。一部の解析では有望な結果が示されましたが、すべての患者さんへの有効性を示すものではありません。
また、2025年の多施設ランダム化比較試験では、腟内細菌叢の異常がある体外受精患者さんに抗菌薬と特定の乳酸菌製剤を使用しても、妊娠成績の改善は認められませんでした。
これらは、特定の菌株・使用方法を検討した研究です。現時点では、プロバイオティクスが原因不明の反復流産や反復着床不全に対する、効果が確立した標準治療として説明することは
適切ではありませんが、使用を検討する場合は、期待できることと効果の不確実性を確認する必要があります。
子宮内フローラを調べるEMMA検査とは?
EMMA検査は、子宮内膜の検体から細菌由来の遺伝情報を解析し、ラクトバチルスを含む細菌の構成を調べる検査です。ラクトバチルスの割合だけを測る検査ではありません。
一方、検査で細菌の構成が分かることと、その結果に基づく治療によって出産の可能性が高まることは別の問題です。
欧州生殖医学会(ESHRE)の2023年の提言では、有用性について未解決の点があるため、反復着床不全に対する子宮内・腟内マイクロバイオーム検査は推奨されていません。すべての方に一律に必要な検査とはいえず、検討する際には限界も含めた説明が必要です。
流産や胚移植の不成功が続くときに大切なこと
妊娠に至らない原因を、胚だけ、あるいは子宮内フローラだけに決めつけることはできません。
これまでの妊娠・流産歴、年齢、胚移植の経過、子宮の状態などを整理し、それぞれの状況に合った評価を行うことが大切です。反復着床不全では、子宮内の病変や慢性子宮内膜炎などについて、必要に応じて検討されます。
「良好胚を何度も移植したのに妊娠しない」「流産後、次の治療が不安」という方は、追加検査や製剤の使用を急ぐ前に、治療歴をもとに今後の方針を相談しましょう。
よくある質問
Q.ラクトバチルスが90%未満だと妊娠できませんか?
いいえ。90%は一部の研究で用いられた区分であり、妊娠できるかどうかを決める絶対的な基準ではありません。割合だけで妊娠の可能性を判断することはできません。
Q.プロバイオティクス(ラクトバチルス製剤)で流産を防げますか?
流産予防の効果が確立しているとはいえません。細菌叢と妊娠成績の関連が報告されていても、乳酸菌製剤を使うことで流産を防げると証明されたことにはなりません。
Q.胚移植の前に、全員がEMMA検査を受けるべきですか?
全員に必要な検査ではありません。ESHREの2023年の提言でも、反復着床不全に対する子宮内・腟内マイクロバイオーム検査は推奨されていません。検査で分かること、治療への影響、費用や負担を確認して判断します。
Q.市販の乳酸菌製品でも同じ効果がありますか?
同じとはいえません。製品によって菌株、含有量、使用方法が異なり、ある製剤の研究結果を別の製品に当てはめることはできません。購入・使用を考えている場合は、製品名と成分表示を診察時にお知らせください。
佐久平エンゼルクリニック 生殖医療科へご相談ください
胚移植の不成功や流産が続くと、「何かできることはないか」と悩まれることもあると思います。
佐久平エンゼルクリニック 生殖医療科へ、これまでの治療経過や気になっている検査・製剤について、お気軽にご相談ください。子宮内フローラに関する情報も含め、ご自身の状況に合った治療方針を一緒に考えていきましょう。
参考文献
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Moreno I, et al. Evidence that the endometrial microbiota has an effect on implantation success or failure. American Journal of Obstetrics and Gynecology. 2016.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27717732/ -
ESHRE Working Group on Recurrent Implantation Failure. ESHRE good practice recommendations on recurrent implantation failure. Human Reproduction Open. 2023.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37332387/ -
Pregnancy outcomes after vaginal probiotic supplementation before frozen embryo transfer: a randomized controlled study. Scientific Reports. 2023.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37482568/ -
Haahr T, et al. Efficacy of clindamycin and LACTIN-V for in vitro fertilization patients with vaginal dysbiosis: a randomised double-blind, placebo-controlled multicentre trial. Nature Communications. 2025.
https://www.nature.com/articles/s41467-025-60205-6
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