卵子のピックアップ異常に伴う不妊症について|クリニックブログ
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2016.11.13
不妊症
治療
卵子のピックアップ異常に伴う不妊症について
妊娠に必要な最低条件=受精(=卵子と精子の出会い)
どうしたら妊娠するのか?(できるのか?)ということを考えたことがありますか?
妊娠が成立するためには排卵した”良質の卵子”と射精された”良質の精子”が出会い(これを受精と言います)、その結果良質の受精卵となり、その受精卵が子宮内膜に到達(着床)する必要があります。排卵、射精、受精、受精卵の発育、着床、とこれら何れかの段階に異常がある場合は妊娠しない原因となり、不妊症ということになります。
自然妊娠のしくみ
排卵された卵子は卵管の先端にある卵管采(卵管先端の触手のような部分)にキャッチされ(これを卵子のピックアップといいます)、卵管采の先端に開いた小さな穴から卵管の中に入ります。一方射精された精子は排卵日付近で子宮頸管から分泌される頸管粘液中を泳いで子宮内に進入し、さらに卵管を泳いで進み、卵管先端の卵管膨大部まで到達します。排卵後に卵管に取り込まれた卵子と子宮を泳いで進んできた精子はこの卵管膨大部の中で初めて出会い、受精の瞬間を迎えます。受精しなければもちろん妊娠しません。そして受精するためには卵子と精子が出会う必要があります。
ピックアップ異常とは?
ピックアップ異常とは、何らかの原因で卵管采での卵子の卵管内への取り込みが上手くいかない現象です。卵子と精子が出会うことが出来ず、受精しないので不妊症の原因になります。ピックアップ異常の原因は様々ですが、クラミジアによる卵管の炎症(卵管采が癒着したり正常に機能しなくなる)、子宮内膜症による癒着(これもクラミジア感染と同様卵管采の癒着の原因になる)、第1子帝王切開時の卵管癒着、虫垂炎などの腹部手術による癒着等が考えられます。(第1子帝王切開後の第2子不妊が特に多い原因の一つと考えられる)
原因不明不妊症の一つである
ピックアップ異常については直接的に検査で調べることが出来ません。卵子は非常に小さく、超音波では映らないため、実際に卵子が卵管采に取り込まれたかどうかを調べる術がないのです。これまで色々な検査を行い、タイミング法や人工授精を何回繰り返しても妊娠しない方では、このピックアップ異常が原因である可能性も考えられます。(しかし直接検査で確認する方法がないので、状況証拠(クラミジアにかかったことがあるかどうか?、子宮内膜症の有無、第1子が帝王切開分娩だったかどうか?、虫垂炎などの腹部手術を受けたことがあるかどうか?等)から原因不明不妊症です・・として片付けられるケースがほとんどです。)
ピックアップ異常による不妊症のわかりやすいたとえ
最近あまり見ることは少なくなりましたが、このようなパチンコ台を見たことはありますか?卵管采の仕組みはこのパチンコ台のチューリップに例えるとわかりやすいです。チューリップが開いている時は、別に何も特別なことをしなくても玉を打ち出せばある程度勝手にチューリップの中に吸い込まれるように入っていきます。逆にチューリップが閉じている時は、どんなに玉を打ち出してもチューリップには入らず、パチンコ台の下の奈落の穴に入ります。卵管采もこれに似ていて、先端が開いている状態では、排卵さえしていれば容易に入っていきますが、卵管采が癒着等で塞がっていたり(閉じている)、卵管采の触手が機能しない状態ではどんなに排卵させても卵管に入ることはなく、排卵された卵子は腹腔内にこぼれて行きます。
効果が確実な治療法は唯一体外受精のみ
ピックアップ異常に対する根本的な治療(ピックアップを良くする治療)は特にありませんが、対症療法として唯一効果が確実に期待できる方法は体外受精となります。ピックアップ異常は卵管の機能的な問題であるため、仮に癒着などを手術によって解消したとしても卵管采の働きが正常に戻るという保証がないのと、癒着剥離術を行うことによって新たな癒着を生じる可能性も考えられます。体外受精はあくまでも対症療法であるため、ピックアップを正常に戻す根本的な治療ではありませんが、ピックアップ出来ずに卵子と精子が出会えない(=受精できない)部分を解決してくれる方法ということになります。
卵子が老化する前に早めのステップアップを
ピックアップ異常だけが原因の不妊症の場合は、理論的には体外受精を行うことで100%の妊娠が可能ということになります。(しかし、現実にはピックアップ異常だけでなく卵子の老化の問題や精子の状態等も関わってくるのでそう単純な話ではない)。先ほども述べたように、第1子を帝王切開で分娩した方では特にピックアップ異常が多いように思われます。体外受精はピックアップ異常で卵子と精子が出会えないのを解決できる唯一の方法ですが、残念ながら老化した卵子を若返らせる治療法ではないため、年齢が高くなる(=卵子の質が悪くなる)と、なかなか治療がうまくいかない原因となってしまいます。(これに男性の加齢に伴う精子の質の悪化も加わって来ます)。第2子不妊は意外に軽く考えられがちですが、実はそう簡単ではありません。その代わり、一人子供を産んでいる(=本来は妊娠できない体ではない)という点から考えると、腰を据えてしっかり治療を行えば、第1子不妊よりも治療効果が高いという考え方もできます。
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